末げん食わぬは男の恥

末げん外観

新橋の雑踏の中に、鳥割烹「末げん」というお店がある。ニュー新橋ビルの隣だから、文句なしの新橋ワールド(行ったことがある人ならわかると思う、あの独特の胡散臭さ)全開地区だ。

「割烹」という名前がつくだけあって、お値段は相当によろしい。ぐるなびで調べてみたところ、平均予算は1万円。そんなお店だ。新橋ワールドは、安くて雑然としたお店ばかりではない。こういう高いお店も混じっているから面白い。何しろ、この店の向かいは立ち食いそば屋だ。このギャップがいい味をだしている。

そんなお店で、自分には縁が無いと思っていたのだが、お昼時には「これなら払ってもいい」と思える値段でランチメニューを提供しているという。しかも、ここの親子丼は絶品らしい。同僚から誘われたので、一緒に訪問することにした。

さすがに割烹屋さんだけあって、店内は細かく個室に仕切られていた。居酒屋のランチメニューとは訳が違う。おっと、まずは玄関で靴を脱がないといけないのか。んで、仲居さんに案内されてお座敷内の机へ。

末げんメニュー1
末げんメニュー2

メニューは、至ってシンプル。さすがだ、鳥料理しかないぞ。「かま定食(親子丼のこと)1,050円」「から揚げ定食1,470円」「たつた揚げ定食1,575円」「鳥かつ定食1,470円」の4種類。「せっかくだから、焼き魚定食なんか取り入れてみようか」なんてお客に媚びを売ることをしていない。「鳥だけ食ってればいいんだお客さんは!」という強い自信がうかがえる。

新橋ランチ物価を考えると、相当に高い部類に入るだろう。余裕で「2新橋ランチ」(新単位。今作った)分くらいのお値段だ。しかし、店構えを見ているとまあこんなものかな、という妥当感を覚える。

鳥かつにも惹かれたが、やはりここは、訪問理由となっていた「絶品の親子丼」を食べないと。というわけで、かま定食をオーダー。おっと、100円増しで大盛りができるのか。では、大盛りでお願いします。

名物、かま定食

ほい、かま定食大盛り到着。

うは、さすがは大盛りだ。派手さはないものの、丼の縁ぎりぎりまで盛られている。こういうお店で「大盛り」なんていったら、「え?これで量を増やしたの?たったこれだけで?」という程度のものを想像していたが、とんでもない。大盛りという言葉に非常に忠実に、盛ってくれたのでした。うん、うれしい。

「どんぶりモノに定食とはこれいかに?」

と思っていたのだが、お吸い物、香の物、小鉢がついてでてきた。うーむ、丼ものにお吸い物、香の物がつくのは珍しいことではない。で、それは「定食」とは呼ばない。ということは、このお店では「小鉢」がつくことによって単なる「丼料理とその仲間達」から定食に格上げにされるらしい。

さっそく食べてみる。とろとろ、ぷるぷるの黄身がうれしいが、デンジェラスでもある。これは、お行儀を気にせずにがっとかきこまねば。お箸で丁寧にすくいあげて、なんてやってたら、黄身がズボンの上にぽとりと落ちるに決まっている。

がつがつ。

あらっ、驚いた。この親子丼、鶏肉が無いぞ。

いや、表現を間違えた。鶏肉が、もも肉のぶつ切りではないぞ。・・・挽き肉を使ってるのか!

初めて見た。えー、でも挽き肉使ったらさぁ、食感がつまらなくなるじゃん。なんか流動食みたいになるじゃん。

と、思ったが、いやいやとんでもない。たしかに、肉を噛み噛みする楽しさはないものの、たっぷりの挽き肉がご飯によくからんで、これが美味いんだなーもう。濃厚な味なのは、出汁のせいもあるだろうが、挽き肉からにじみ出た肉エキスの影響もかなりあると見た。後で調べてみたら、合鴨、軍鶏、地養どりの3種連合軍な挽き肉だったらしい。なるほど、そうきたか。鳥割烹の面目躍如。

玉子はあくまでもふんわり、ほんわり。生クリームを食べているようだ、というのは大げさか。でも、あえて他人様にわかるように形容するなら、「生クリーム」じゃなかろうか。半熟玉子、というのはもっとどろり、べっとりという印象があったのだが、これは違った。挽き肉と絡み合うと、食感が変わるのだろうか?

かつて芸能人のウガンダが「カレーは飲み物である。」と表現し(後にテレビ東京系TV番組「でぶや」で石塚英彦が世に広めた)、世の中の人々を驚かした。なるほど、デブはカレーを飲むようにして食うのか、と。今回、この末げんにて新たな言葉が生まれた。「かま定食も飲み物である。」と。

通常だったら500円そこらで食べられる親子丼だが、さすがに1000円払うだけある。ちまたの親子丼と比べて値段見合いの2倍、おいしいか?と言われたら「うん、2倍美味いよ」と断言できちゃうと思う。それくらい、感心させられた一品でした。どうもごちそうさまでした。

ps.
ちなみに、タイトルの「末げん食わぬは男の恥」は、「据え膳食わぬは男の恥」をパロっただけのものです。末げんでかま定食を食べないと男の恥である、というわけではありませぬ。 ・・・あっ、「カマ」定食を食べないと「男」の恥?うわ、偶然だけど非常に良くできてるなあ。

(2005.08.21)

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