埼玉県は朝霞市にある「陸上自衛隊広報センター」に行ってきた。川越街道沿いにあり、大きな電光掲示でその存在を通行者に知らしめているので以前から知っていた。しかし結局行きそびれたまま数年が過ぎ、ようやく今回訪問する機会を得た。
陸上自衛隊朝霞駐屯地の一角に広報センターはある。そのため、入口を間違えてしまうとそのまま駐屯地のゲートに向かってしまうので注意が必要だ。
僕の場合、ゲートで検問していた自衛官さんを一瞬身構えさせるまで接近してしまった。そこでようやく道が違う事を悟り、慌ててハンドルを切る。あぶねえ、後もう少しで自爆テロリスト扱いされるところだった。車のトランクにはキャンプ用のガスカートリッジやサバゲー用のライフルが積まれている。不審者扱いされると言い訳がきかない。
施設はそれほど広いものではないが、90式戦車や戦闘ヘリのコブラなどをはじめいろいろな展示と説明がある。
ただ、見れば見るほど日本国における自衛隊の微妙な位置づけが伺えて、トホホな気分になるのであった。
たとえばこの「日本の地理的環境」というボード。海国である日本国は近隣諸国とこんな位置関係にあるんですよ、という紹介だ。
例えば韓国との国境。対馬が釜山と52kmしか離れていません、という事を示している。なるほど、相当近いな。
しかし、あれれ・・・。広い日本海の中に、ぽつんと「竹島」の文字が。こここそ、まさに国境問題になっている土地なのに、韓国との距離などの記載が一切ない。うかつにこの竹島のところに国境線を書き込むと、韓国から抗議されるから恐れているのだろう。でも、政治的・官僚的文脈でこれを解釈すると、「竹島」と地図上に記載しているのだから暗にこれは日本の領土だと宣言している、ということなんだろう。そんなこと、普通の人には理解できんぞ。
中国・台湾と領有権問題となっている魚釣島(尖閣諸島)も同様。地図上に「尖閣諸島」という記述はあるけど、クローズアップされているのは台湾と与那国島の距離(108km)だけ。いやまあ、確かに与那国島は台湾に近いけど、外交問題にはなってないでしょ。
「専守防衛」なんて言ってるけど、守るものそのものの定義が曖昧、というか「外交上波風が立たないように」ぼかしている。チキンぶりを発揮しまくり。
「言うまでもなくここは日本の領土だから。」と地図に一切記載しないならまだ潔いが、「それじゃやっぱり誤解招くよね、権利放棄されてると見なされるとまずいよね。じゃあ、一応地図には地名を載せるだけ載せておこう」という日本人にしかわからない「行間を読んで察してくれ」文学炸裂で、なんとも自虐的だ。
そんなふわふわした立場にさらされている自衛隊だが、活躍っぷりも「一応」紹介されている。ただ、紛争調停経験が一度もない組織なので、力作業ならなんでもやります的な謎の集団と化している。
「オリンピックへの協力」なんて紹介パネルは最も自虐的で、自衛官がスクラムを横一列に組んで新雪を坪足で踏み固め、スキー競技のコースを造っている写真が掲載されている。人海戦術だ。他にも、「フリースタイル競技・キッカー作成」と紹介されている写真では、降雪機によって雪まみれになっている自衛官たちが。
陸上自衛隊的解釈としては、「われわれは組織力、自己完結能力を活かして各種競技会の大会運営を支えています」となっている。何を言っているのか全くよく分からん。が、まあそういうことらしい。
なお、札幌雪祭りの巨大雪像作りは陸上自衛隊の十八番行事となっているが、あの解釈は「雪上陣地設営のための演習」だそうで。
他にも、東京オリンピックのファンファーレ用ラッパとか、聖火リレー用トーチとか、自衛隊所属のスポーツ選手のオリンピックメダルとかが陳列されていた。
このままだと存在意義が「お祭りの裏方さん」で終わってしまうが、現代の自衛隊における真骨頂は国際貢献、災害救助活動だ。ぜひここはPRしておきたいところだろう。しかし・・・なぜか、写真がない。阪神大震災での救難活動、カンボジアPKOなどが紹介されているが、「絵」だけだ。額縁入りの大きな絵ではあるのだが、活動そのものについて具体的な説明がほとんどない。せいぜい、海外派遣隊の隊旗などが飾られている程度。何なんだ、これは。
人道支援で活躍する自衛隊活動を意図的に隠しているように感じられる。誰に対する配慮だ?なぜ遠慮する?国の税金を使って活躍しているのだから、もっと詳細に紹介するべきだし、最前線で頑張った自衛官を称えるべきだ。この扱いはちょっと酷い。憲法第九条と自衛隊との関係を指摘する人たちへの配慮か?
でもその割には、屋外に多数の戦車などが誇らしげに陳列されていたぞ。一体誰に、何を、広報したいんだ、陸上自衛隊。
「わたしのしごと館」並に意味のない施設確定。税金の無駄遣いなので、内容を一新するか閉館した方がよろしい。ここに来たって、「へぇー」と感心しておしまいだ。観光スポットにさえなりゃしねぇ。自衛隊が悪いんじゃない、政治家の責任だ。
広島県呉市にある潜水艦博物館「てつのくじら館」(海上自衛隊が運営母体)はその点しっかりしているんだけどねえ・・・。自らの使命、その対策方法などを詳しく説明してあった。この広報センターがヘロヘロな内容なのは、広告代理店の選び方にも問題があったのかもしれない。
いろいろ複雑な心境になりながら施設を見て回っていると、陸上自衛隊員の装備品が陳列されているコーナーにたどり着いた。
おかでんの趣味であるサバイバルゲームをする際(「へべれけ紀行」参照)、おかでんの装備は陸上自衛隊二式迷彩と89式小銃だ。だから、この装備品の展示は大変に参考になる。リアリティを追求しようと思ったら、まだこのパーツが不足だな・・・買い足さなくては・・・と。そういう特殊な観点で大変に興味深く拝見させて貰った。
それは兎も角、このコーナーには「服装体験」という一角があり、そこで上着だけだが、この迷彩服を貸してくれるというサービスをやっていた。1回1時間までの試着で、施設内ならこの服を着たままうろうろすることが可能。手持ちのカメラで記念撮影をするも良し、施設内のプリクラ(有料)で撮影するもよし。
実際このサービスは好評なようで、小さな子供から大学生の女の子までいろいろな人が借りて、うれしそうに着用していた。
何を思ったか、女子大生4人組がこの日見学に訪れていたのだが、そのうち3名が迷彩服のレンタルを受け、すごくうれしそうにしていたのが印象的だった。仲間同士で記念撮影しまくっていて、端から見ていて可愛かった。
そのとき、軍服とはいえ、女性が着ると「萌え」の対象になりえるのかもしれない、とふと思った。
サバイバルゲームのフィールドにも女性は少数ながらいる。しかし、彼女らに萌えを感じた事はない。なぜだ。敵か、味方かという判断しかしていないからだろうか。迷彩服女子で萌えられるのは、この場が平和であるが故のことか。
いろいろ考えながら、展示会場を後にする。
会場を出たところには、売店がある。ARMY SHOP SAKURAという名前。
自衛隊の施設にある売店なんかで何を買うのよ、と思うかも知れない。しかし、一度訪れた事がある人ならわかるが、なかなかに突っ込みどころ満載なものが売られていて、楽しい。軍事好きでなくても、欲しくなるモノは必ず一つくらいあるだろう。
とはいえ、お土産として職場の同僚や知人に配るにはアクが強すぎるものばかりではあるが。
店員さんは自衛官ではなさそうだ。外部企業にお店の運営を委託している模様。
この「陸上自衛隊広報センター」、受付嬢もれっきとしたWAC(女性自衛官)。受付にもかかわらず、上下迷彩服の出で立ち。しかも、有事に備えて傍らには鉄かぶとまで置いている念の入れようだ。さすが自衛官。気構えが違う。
話を元に戻す。
何かサバイバルゲームの装備品として使えるものがないか、物色してみる。
「迷彩柄」もしくは「オリーブドラブ(OD)色」だけで商売ができるのだから、楽といえば楽だ。Tシャツ、小物入れ、靴下、チョークバッグ(なぜこんなものを?)、ジャケット・・・様々なものが売られている。
ただ、実戦向けではないだろ、これ。迷彩Tシャツって全く意味をなしていない。そんな格好で草むらの中に潜むなんて状況はあり得ないし。かといって、日常生活でこんな服着ていたら怖すぎる。まあ、有名アパレルブランド「A BATHING APE」が迷彩柄の服を出しているけど。
結論としては買うもの、何もなし。どれも本物の自衛官が実際に使うような代物ではないからだ。そういったものは基地内のPX(売店)でしか売らないのだろう。ニセ自衛官が出回ると困る。ちなみに、おかでんが持っている自衛隊装備はPX品だ。赤外線対応も施されている「熱光学迷彩」。
自衛官には、「官品」として無償で服が支給されるのだが、日常の過酷な訓練をこなす上では破損やら洗濯のローテーションの都合上、官品だけでは足りない。結局、自腹でPXにて「官品とほぼ同等」の服を買うことになる。これを「PX品」という。PX品で訓練に参加しても問題はないのだけど、官品と比べると機能面ではやや劣るようだ。
つまり、「俺、陸上自衛隊の迷彩服持ってるんだぜー」といっても、実はランクがあって、
官品>PX品>>レプリカ(偽物)>>>隊員すら着ないような、一般客用売店の迷彩グッズ
という階層が成り立っている。細かく区分するともっといろいろあるのだが、ざっくり言うとこんな感じ。
おっと、いかん、また話が逸れた。
玩具コーナーでは、タミヤの90式戦車模型など硬派なものが売られている傍らで、「自衛隊限定キューピー」なんてものも売られていた。
見ると、キューピーが迷彩服+ヘルメット姿で四つんばいになっている。「ほふく前進バージョン」なのだそうだ。「世界の平和を守るのだ!!」というキャッチコピーがつけられているが、確かにこりゃ脱力もので、闘う気力がうせる。
こんなところまでキャラクター商品が出ているとは思わなかった。こういう変なものが売られているのが、自衛隊関連施設の隠れたおもしろさだ。
なお、「ほふく前進」キューピーの隣には「同期の桜」キューピーも。何でもありだな。とはいえ、「ご当地キャラ」の定番であるキティちゃんが登場しないのは、サンリオが「キティちゃんと自衛隊とはイメージが合致しない」と拒絶でもしたのだろうか。
お菓子・食料品コーナーには、戦闘糧食I型・II型が売られていた。
最近、「ミリメシ」という名前で脚光を浴びつつある戦闘糧食。有事の際に、隊員が手軽かつ確実に栄養補給できるように作られたレーションだ。I型は缶詰、II型はレトルトになっており、隊員が食べ続けても飽きないよう種類は豊富だ。そのうちの一部が、お土産バージョンのパッケージとなって売られている。しかし、中身は本物と全く一緒。
中華風カルビ丼、ウィンナーカレー、すきやきハンバーグなどが売られていた。あと、パンの缶詰など。
地震などの災害に備えておく保存食にもなるので、買って損はない一品だ。保存期間3年。
わざわざ値札のところには、「戦闘糧食」という言葉の横に「(ミリメシ)」と注記されているあたり、流行語にあわせている。
これは多分定番商品じゃないかな、自衛隊サブレ。
チップスターよりも大きな筒にサブレが入っている。陸上自衛隊版なので、「JGSDF」の表記と、AH-1対戦車ヘリ、90式戦車が描かれている。もちろんサブレの表面にもこの両機の刻印。
こんなものを職場に「お土産でーす」と持ち込んだら、確実に「軍事マニア?」と女性陣から引かれるだろう。でもこういう兵器で国を守っているという事実から目を背けてはいかん。
自衛隊の食べ物系お土産は奇抜なアイディアが多くて面白い。奇襲戦法は古くから日本が得意とするところだ。
しかし、まさかこんな奇襲が来るとは思っていなかった。。。
「それゆけ!女性自衛官クッキー」。
これを見たとき、のけぞってしまった。いやホントに。
なんじゃ、こりゃあ。
ついに自衛隊の世界にまで「萌え」が侵入していたのか。
ここで思い出されるのは、昨年秋に話題となった「萌え米」。
あきたこまちを生産しているJAうご。「品質の良い米を作っているにもかかわらず、知名度がないので売上が伸びない・・・」と悩んだ末、一つの名案をひらめいた。それは、有名美少女イラストレーターの西又葵さんに米袋のイラストを描いて貰う、ということだった。
それが大反響、大人気。アホみたいに売れまくり、全国各地から通信販売の依頼が殺到したという。中には、「今回これを機に初めて炊飯器を買いました」という人まで出てくるありさま。たかが米袋、されど米袋。イラスト一つで世界は変わる。2カ月で30トンも売れたのだから大したものだ。
もちろん、中身の米の品質が高いからこそ支持された部分もあるだろう。これは農家の方々の名誉のためにも、買った人のためにも言っておく。
JAうご自体は「萌え米」という表現を一切使っていない。たまたま、「あきたこまち」というブランドだからこそ美少女を描いてもらったに過ぎず、「萌え米」と呼称したのは一般消費者とサブカルウォッチャーの人たちだ。「うちは萌えで商売やってるんでござい」と開き直っていないところは好感が持てる。
とはいえ、すっかりこれに味を占めてしまったらしい。2009年1月末時点でJAうごのサイトを見ると、新たな西又葵さんのイラストが。なんでも、「うご牛カレー」というレトルトカレーを今度売り出すようだ。しかも、カレーとは無意味なコースター(西又さんデザイン)1枚つき。全3種類のコースターがあるそうで、3種類をコンプリートするためには何個もカレーを買わなければいけなくなる。典型的なオタク商法だ。
おいJAうご、貴方は今猛烈な勢いで間違った方向に走り出しているぞ。そろそろブレーキをかけはじめたほうが良いと思う。
なお、2009年1月時点で「萌え米」をネット検索すると、JAうごとは無関係なサイトが真っ先に出てくる。「萌え米.com」というドメインを取っており、時流に乗ろうとしているようだ。今年1年は「萌え+今までキャラクタービジネスとは無縁だった食料品」の商売が全般的に隆盛するだろうな。すぐに淘汰されるだろうが。
ちなみに「萌え米.com」のキャラクターは全然萌えないという点についてはどうしたものか。こちらの方は「米の精」をイメージして作ったキャラ。お互い同じ「あきたこまち」を商品にしているところので、どっちが生き残るかアイディアと品質勝負のお手並み拝見、といったところだ。
萌え米は兎も角、驚いたのが「萌え自衛官」という概念。
そりゃあさっき、実際に迷彩服を着た女子大生に「萌え」の姿をかいま見たのは事実。しかしそれが2次元になって本当に登場するとは。タイミング良すぎだ。
ご丁寧にも、陸上・航空・海上自衛隊それぞれのバージョンが存在し、それぞれキャラクターと服装が違っている。自衛官は制服があるし、職種によって着る服が異なる。だからこういう派生ハージョンを大変に作りやすいシチュエーションと言えよう。
写真上は「Ver.陸上自衛隊」。チーズ味。
写真下は「Ver.航空自衛隊」。ハニー味。
「わたしたちがニッポンの平和を守ります!」という言葉が記されていて勇ましいというかいじらしいというか。つーか、なんじゃこりゃあ。
2005年、全日空(ANA)が初代から現行(9代目)までのCAの制服を身にまとったフィギアを発売したことがある。フィギアの雄、海洋堂が造型を手がけた事でも話題になったが、西E田さんが描く萌える原画にそそられた人が多かった。おかでんもまんまとそれにはまった口だ(アワレみ隊活動記録・八丈島編参照)。
制服という「制約」を身にまとった女性に男性はエロスと萌えと憧れを感じる。その習性を見事についた作品だった。しかし、その派生形が自衛隊にまで及ぶとまでは考えていなかった。自らの認識不足を大いに悔やまねばなるまい。いや、悔やんだからといって何か良いことがあるわけでもないし、今後の糧にもならんが。
こちらは「Ver.海上自衛隊」。ミルク味だそうで。
いろいろキャラクターいるなあ。
髪の毛の色もバラバラだ。日本人か、これ?自衛官になるためには日本国籍を有していることが必須条件だが、大丈夫か?・・・ああ、そうか、帰化すれば何ら問題ないんだったな。
というのは無粋な話で、二次元キャラのお約束として髪の色が青かったり赤かったりするのは当然。この様子からすると、全キャラに名前どころか、体型や趣味特技の類まで設定されているっぽい。
それよりも、どうもこのパッケージを見ると、「それゆけ!女性自衛官」という枠組みのなかで、多方面に商売を展開している気配がする。あくまでも目の前にあるのは、そのうちの一つの派生形である「プリントクッキー」だ、と。
気になったので家に帰って検索してみた。
もちろん現地でクッキーの購入はしなかった。さすがにもうこの手の二次元には興味が無くなったなあ。年取ったからなのか、分別がついたからなのか。
パッケージをみると、「PIT-ROAD」と「タカラトミー」いう会社名が記されてあったので、両サイトに行ってみる。すると、呆れた!本当に「それゆけ!女性自衛官」がシリーズ化されているではないか。
もっぱら、ANAと同様、フィギアを中心とした商品展開をしているようだ、驚くことに既にVer.5まで出ている。タカラトミーの当該サイトを見ると、2006年9月に発表、2007年春にVer.1「海上自衛隊編」がリリースされた模様。その後順調にリリースを続け、今年2009年1月にはVer.5となる「陸上自衛隊編」全10体がリリースされているようで。いやぁ、参った。
ワンフェスなどに出入りしているような人からすれば「知ってて当然。何を今更」な話なのだろう。しかし、そっち方面には全然疎い僕からすれば「今更」ながら相当な衝撃だった。
それにしてもさすが軍隊を模した組織・自衛隊だけあって(敢えて軍隊とは呼ばないでおく)、フィギアのバリエーションが豊か。作業服、礼服、訓練服だけでも各種類ある上に、鼓笛隊なんてのもある。フルート持っていたり、マーチする際の旗を持っていたり。「単に服装が違うだけです」ではおさまらない、躍動感あるフィギアだ。これに階級や夏服Ver.と冬服Ver.を加えると、いくら種類を出しても足りない。しまいには統合幕僚長の萌えキャラなんてのがでてくるんじゃあるまいか。
サイトを見ていると、やはりそれぞれのキャラには設定があるようだ。一例を挙げると、「白川八重(しろかわやえ):91式第3種夏服、制帽(陸曹士用)。所属:那覇駐屯地第1混成団第101後方支援隊。階級:陸士長」なんてなっている。あ、いかん、ミイラ取りがミイラになりかかっている。ちょっと欲しくなってきた。フィギアそのものは邪魔になるのでいらん。だが、設定原画集があれば欲しい。可愛い女の子の絵と、機械的で無機質な制服名・所属名とのギャップがそそる。
結局、自衛隊の存在意義や過去の実績、そして将来像がぼんやりしたまんま、最後は萌えで締めくくられた広報センター見学だった。いかにも今の日本を象徴している気がする。萌えで世界平和が実現できればどんなに良いことか、と思うがそれはどう考えても無理だ。逆に、萌えの世界にどっぷりつかってガラパゴスとなった日本はますます弱体化していくのだろう。
このまま暗い話で終わるのも残念なので、萌え米に関して別の話題をひとつ。
先日、新潟県の岩船で農業をやっている板垣嘉将さんと話をする機会があった。米ソムリエの資格を持っていて、なおかつ代々農家をやっている新進気鋭の方だ。おかでんよりも若い好青年。田んぼの土の話からはじまって、国の減反政策や農薬、農業法人といった話まで、いろいろ聞くことができて有意義だった。
板垣さんは言う。「農家は高齢化が進んでいて、本当は僕ら若い人がやらなくちゃいけないんですよ。お年寄りは心おきなく隠居してもらって、で、たまに小遣い稼ぎ程度になるくらい農業の手伝いができる、そんな生活と収入が確保できるようにしていかないと」
現代においては小売業が強大なバイイングパワーを発揮しすぎて、第一次産業に従事する人たちに価格決定権があまりない。そのため、働いても収益に直結しないことが多い事が問題になっている。しかし、それと同時に「外国と比べて農地が狭く生産性が低い」という構造的な問題もあり、高い関税や国による米の買い上げで保護されているのも事実だ。この現状をどう変えていくのか、板垣さんのような若い、やる気に満ちた方の活躍を応援していきたい。
そこで、板垣さんに「萌え米」について聞いてみた。あれをどう思うか、と。
すると、逆に板垣さんから質問が帰ってきた。「新潟の特産品って何だと思います?」
「えっと・・・やっぱり米、ですね。コシヒカリ。あとは・・・お酒とか、柿の種とか」
「お酒も煎餅も全部米でできているんですよ。新潟には他にもいろいろ名産物はありますが、やはりまず一般的に認知度が高いのは米、なんです。日本一の米なんです。そのブランドイメージを壊すことはできないんですよ」
確かにそうだ。JAうごの場合は、キャラクターの力を借りることで、米自体の魅力を発信しようとしている。しかし、新潟の場合は既に「こしひかりは美味い」と広く知れ渡っている。その点、全く立ち位置が異なっているのだった。
「確かにキャラクタービジネスをやれば売れるかも知れません。しかしそれは大きな賭けなんです。失敗すると、新潟県全体の米のイメージが落ちてしまう。だから、そういった賭けには踏み出せないです。良くも悪くも、今既にブランドイメージが確立していますから」
でもこのまま守りの姿勢だと、緩やかな衰退なのではないか、と思う。しかし、板垣さんはブログや自作新聞で積極的に情報公開したり、自分の米を直接お客さんに売りながら消費者の声を聞いたりしているようだ。地味だが、そういうやり方も正解だと思う。頑張って欲しい。
萌え米はどうでもいいので、とりあえず板垣さんところから米を買うことにしよう。自分にできることは、頑張っている若い農家の人を「購買」で支えることだけだ。
しっかし、大きな問題が一つ。おかでんはビールばっかり飲んでいるんだよなあ。よって、米の消費量が非常に少ない。ここは一発奮起、わざと大量に米を買い付け、ビール抑制の足がかりにするか。
(2009.02.12)
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