史跡級レトロ中華

赤羽にやってきました

東京都北区赤羽。

埼玉方面へ向かうJRのハブ駅だ。

埼京線、京浜東北線、高崎線、宇都宮線が停車し、その横を東北・秋田・山形・上越・長野新幹線が通過していく。

そんなハブ駅故に駅前はさぞかしスマートかと思いきや、一本道を入るとなかなかにディープな味わいがあって楽しい町だ。古くさい、とか汚い、というのを半ば揶揄するための隠れ蓑として使う「ディープ」ではない。本当に、ディープなのだ。だから、真剣に楽しい。

おかでんは外食をするとき、ここまで訪れる事が時々ある。一人の時も、連れが居るときも、一緒だ。散策しながら、新しい店を発掘するのが楽しいからだ。

昭和時代を感じさせるグランドキャバレーなんかもある。これは数十年前の赤羽を象徴する姿だ。しかし、今ではそのようなお店は陰を潜め、新しい店が多い。とはいえ、飲食店街の路地は狭く、店も狭く、マニアックな雰囲気が漂っていてわくわくさせられる。

赤羽の名店、まるます家

赤羽B級グルメを代表する店といえば、多分この店が一位になるであろう。「一番街」を少々入ったところにある「まるます家」。居酒屋なのだが、一階は牛丼の吉野家みたいなカウンター席オンリー、二階はお座敷だ。朝10時前には開店していて、夜が早い。だから、夜勤明けの人などには人気がある。このお店は、鯉料理が名物だが、それ以外にもすっぽんやうなぎなどの和食系全般が安くてうまい。お酒も安いので、一杯ひっかけるにはちょうど良いお店だ。

なお、既に酒を飲んだ人が「二軒目」として訪れるのは禁止となっているので、行くならば一軒目にどうぞ。また、店としては「3杯を越えるお酒は提供しない」というスタンスを取っているのでこれも注意。酔っぱらいはお断りだよ、ということだ。ただ、おかでんの知る限り3杯で追い返された人は見たことがないので、この「3杯ルール」は現行法なのかどうかは知らない。

あと、赤羽を代表するお店と言えば、なんといっても「いこい」を外せない。酒類卸店が営む、立ち飲み屋だ。日本を代表する立ち飲み屋といっても過言ではないと思う。ここも、カウンターのみのお店で、小鉢料理はほぼすべて110円。サワー類はジョッキで二百数十円だったと記憶している。激安だ。キャッシュオンデリバリーの店なので、店内で自分の居場所を確保すると(いつも混んでいるので、カウンターに陣取るだけでも少々やっかい)、まずは千円札やら小銭をカウンターに並べるところから始める。で、おばちゃんの手が空いた瞬間に「すんません、ホッピーセットを」なんてすかさず頼む。すると、注文した品と引き替えに、おばちゃんが目の前からお金を持っていくという仕組みだ。飲み食いが終わったら、「ごっそさん!」と言ってそのまま店を後にすればよろしい。

この「いこい」、朝7時からやっているというのも素晴らしい。確か夜は10時までの営業だったと思う。働き過ぎだ。なお、お総菜は随時追加されるので、時間帯によって品そろえは変わっていく。刺身もあるし、豆腐やおからや和え物もあるし、煮込みもあるし、注文すれば焼き鳥だってその場で焼いてくれる。おかでんは、「単なる飲み屋」としてではなく、「バランス良く野菜や肉を食べたい」時に利用している。小鉢の皿数で栄養補給だ。

ぜひwebで紹介したいお店だが、お店の性格上店内の写真撮影はさすがに無理。なので、上記文章程度でご勘弁願いたい。「麦酒飲み人種」オフをここでやろう、という話を先日からわたし。さんとしているのだけど、まだ詳細は決まっていない。ひょっとすると近日中、「立ち飲みで1時間程度でさっと引き上げるオフ」をやるかもしれない。

本当は、「いこいで立ち飲み→ハシゴしてまるます家」がベスト。でも、酔っぱらい入店禁止なのでそれは無理だ。その逆もまたしかりで、いこいも酔っぱらい立ち入り禁止。

まあ、そもそも「立ち飲み」という業態は、へろへろになるまで酔っ払う事はないので大層スマートではある。酔っ払ってくると足腰が立たなくなるので、適当なところで切り上げるきっかけができる。

赤羽餃子センター

そんな素晴らしいお店がありながら、なぜか最近のおかでんは赤羽でインド料理店のビュッフェでカレー食べまくっていたり、「アジア屋台料理」と銘打ってて何でもありないい加減な店でトムヤムクンをすすっていたりした。

それではいかんのではないか。やはり赤羽まで遠征してくるからには、もっとディープな店に行くべきではないのか。

そう思って、今回選んだお店は「赤羽餃子センター」。

相当ディープだとは聞いて、馳せ参じた次第だ。そんな店があるとは知らなかった。

いや、情報を収集する限り、特にこれといった特徴があるお店ではない。「餃子センター」というからには、巨大店舗をイメージしてしまうがそうでもないらしい。ごく普通の中華料理屋だという。

逆にそこにそそられた。

おかでんの自宅の近所には「熱烈中華食堂日高屋」だとか「餃子の王将」などがあり、それぞれ素晴らしいお店だとは思うがいい加減食傷気味だ。ディープとまで言われる、懐古調の中華料理店にて料理を食べてみようではないか。そう思った。

事前に仕入れておいた情報に基づき、現地に向かう。一番街を抜け、小学校の北側の路地を進んでしばらく行くと・・・あった。「中華そば」の暖簾が下がっている。これこそが、赤羽餃子センターだ。

もっとディープで、分かりにくくて、入口すらわからんようなお店かと思っていた。だから、この真っ赤な暖簾はちょっと拍子抜けすると同時に、安心させてくれた。この外観で、暖簾まですすけていたらさすがのおかでんでも入店する気にはなれない。

赤いひさしには電球が灯って明るくなってはいるが、店名の表記は無し。ただ、軒先の立て看板に「赤羽餃子センター」という文字が見えるだけだ。

店の間口は狭い。その全てが木の引き戸になっていて、どこから入って良いのか一瞬戸惑う。そもそも、営業しているのかどうかも不安になる。もちろん、暖簾が下がっているので営業しているのは間違いないのだが、心配だ。

ただし、扉の左隅に「営業中」の札がかけられてあったので、ちょっと安心。

こんな心配をしなくちゃいけないあたりが、ディープたるゆえんだ。

普通、一見さんなら絶対にこのお店に入らないぞ。

カウンターから厨房を覗く

店内に足を踏み込みつつ、注意深く左右を見渡す。

客席の数、お客さんの配置、厨房の位置、メニューの位置。
ええと、このお店はL字型にカウンターがあって、総客席数はだいたい8-10くらいか。現在お客さんは1名。清酒を飲みながら餃子ができるのを待っている模様。

とりあえず厨房の調理が見える場所を、とL字型の片隅に陣取る事にした。

厨房にいる店員さんは相当お歳を召されたおじいちゃんとおばあちゃん。70は優に越えていて、80近いのではないか。大丈夫か?もう隠遁生活しても良いんじゃないか?と心配になるような歳だ。その割にはちゃんと動いているし、腰も曲がっていないんだから素晴らしいことだ。

テーブル上の調味料

参った。

肝心のメニューが見あたらない。ひょっとしたらこのお店、メニューが存在しないのだろうか?そんな中華料理屋、見たことも聞いたことも無いが、ここまでディープだったらあり得るかもしれない。お客は地元の常連客だけなので、メニューを用意するまでもなく注文するものは決まってる、というわけか。さて、どうしたものか。

ここで一見客だとばれるのは悔しいので、左右をきょろきょろしつつ、でも動作はゆっくりと、ジャンパーを脱ぎつつ着席。そして、「餃子と、ビールをください。」ととりあえずオーダー。これは絶対外れの無い注文だ。

事前に集めた情報によると、ここはチャーハンがうまいし、ラーメンも安くてなかなかなものだという。野菜ラーメンがあるとどこかの文献で見かけた気がするが、メニューにてその存在を確認できないと困る。最悪、「ラーメン」を注文することにしよう。

一般的にはメニューが置かれているであろう、カウンターの調味料置き場。ありきたりなものが並んでいるだけだ。これぞ中華料理店、というものしか置かれていない。あまりにシンプルすぎて逆に感動した。

ようやくメニュー発見

厨房ではおかでんが注文した餃子の調理が始まっていた。手作りだという餃子を、フライパンの上に並べる。中華料理屋だし、「餃子センター」を名乗る以上は餃子専用の厚底鉄板を用意しているのかと思っていただけに意外。ごくありふれたご家庭用フライパンではないか。そこにたっぷりのお湯(スープ?)を入れ、蒸し焼きにしていく。油で軽く表面を炒めてから水を加えるといった手間や、羽根つき餃子にするために水溶き小麦粉を入れるといった小細工は一切無しだ。潔い。

そんな作業を眺めているうちに、ようやく壁にメニューを発見した。ああ、あれか!

なにやら、壁に焼けこげた紙が貼り付けてあるなあ、と思っていたら、うっすらとお品書きを読み取ることができた。おい、これがメニューかよ。どうやったらこんなに変色するんだろう。

店の換気が劣悪な訳でもないし、厨房の熱気が直接伝わる場所に張り出してあるわけでもない。にもかかわらず、このボロボロっぷり。何だ。この辺り一帯、紙を腐食させる変な菌が浮遊しているとでも言うのか?

もう、あまりに変色してしまって、まともに文字を読むのさえ困難。メニューにはそれぞれ普通盛りと大盛りの値段が表記されているのだが、大半のメニューにおいては下段の大盛り価格が不鮮明だった。

メニューは大体こんな感じ。一部抜けてるのがあるかもしれない。

餃子270円、チャーハン400円、ラーメン270円をはじめとし、ライス、天津丼、野菜炒め、カタヤキ、やきそば、みそラーメン、天津めん、廣東麺、五目麺、もやしうまにそば、ダール麺、チャーシュー麺、タンメン、ヤサイラーメン、ワンタン。

一番高いメニューでチャーシュー麺とダール麺(ダーロー麺=五目旨煮そば、のことか?)の500円というのが素晴らしい価格設定だ。

このすすけっぷりを見る限り、昨今の小麦高騰など何のそので価格改定をしていない様子だ。素晴らしい。

ただ、素晴らしすぎてお客からメニューが発見できないというトリッキーなプレイを炸裂してくれたわけだが。商売っ気ないなあ。

名物の餃子

餃子の断面図

このお店にはガスコンロが3つある。おかでんが坐っている側にある2つは、専ら餃子焼き用に使われている様子。なにしろ家庭用フライパンでの調理なので、一度に焼ける数には限りがある。頑張って二人前はいるかどうか。バラバラにオーダーが入ったら、2つのコンロはフル稼働でも追いつかない。何しろ店名は「赤羽餃子センター」「だ。餃子を出してナンボの店。餃子用にはコンロをちゃんと確保しておかないと。

そんなわけで、先客の清酒飲んでいたオッチャンの餃子が先に焼き上がり、お皿に盛られて提供されていた。カラになったフライパンには、餃子からにじみ出た脂分が。それを、おかでん餃子のフライパンに移し替えていた。脂の使い回しか。これ、後になればなるほどどんどん脂分多くなるんじゃないのか。

そのうち、おかでんの餃子も焼きあがった。出てきた餃子は、大ぶりでぷっくりとした何とも愛おしい奴。こりゃ美味そうだ。

何しろうれしいのが、餃子の焼き色だ。最近の大手中華レストランチェーンの餃子は、効率重視のためか焼き色が大変に甘い。皮がふにゃふにゃした状態で出てくる事が多く、がっかりだ。その点ここは、浅黒く、ぱりっと引き締まった皮でのご提供。文句なしです。久々に良い餃子に出会えた気がする。

食べてみる。うん、おいしい。餡がどうの、といった小細工は一切無し。逆に餡はもう少しニラなどの野菜類を入れてくれよ、という物足りなささえある。しかし、そんなものをはねのける、ボリューム感と焼き加減。特に焼き加減が素晴らしい。ああ、これぞ焼き餃子の醍醐味(だいごみ)だな、と思う。相当油を使っているようで、揚げ物に近い食感でもある。カロリーは相当高そうだ。

台湾や中国の人と話をしていると、焼き餃子を見下している感を受ける事がある。「あれは食べ残した水餃子を翌日以降に食べる残り物調理法でしょ?」みたいな。でもこの餃子を食べて、今なら断言できる。餃子は焼き餃子に限る、と。

水餃子?あんなぷよぷよしたものでビールが飲めるかよ、ケッ。

・・・いや、水餃子も好きですけどね。言葉が行き過ぎました。謹んで訂正し謝罪します。

でもまあ、それくらい鼻息が荒くなるほどこの餃子は美味かったということだ。シンプルだけどね。

勘違いしないで欲しいのは、ここでいう「美味い」というのは、グルメ的観点で美味いと言っているわけではないということ。なんかもう、店の雰囲気、内装、おっちゃん、そういうのを全てひっくるめて美味いと言っている。B級グルメ的総合得点が高い、とでも言おうか。

うまい餃子を求めてわざわざこのお店に遠征する必然性は全くない。ただ、家の近所にこういう店があったら幸せだよね、というところでは拍手ものだ。

チャーハン

チャーハンもうまいと聞いていたので、注文してみる。この後ラーメンも頼もうと思っているので、少々胃袋のキャパシティ上オーバースペックだが、この際頼んじゃおう。

気がついたらチャーハンができ上がっていたので、調理している姿を目にすることは無かった。ただ、目の前で調理をしていたはずなので、「目を引くような豪快な鍋振り」をしていなかったのは確かだ。

食べてみたらこれがまた美味いんだわ。なんだかなあ、味は普通ですよ?今時、これを越える冷凍チャーハンだってあるかもしれない。しかし、ツボを押さえているというか、なんか日本人の琴線に触れるところをちょうどドンピシャで突いてくるのよね、このお店。普通なんだけど、美味い。具は至って普通で、玉子に豚肉、あと椎茸くらいか。彩りのグリーンピースや蒲鉾が入っていなくてかえって良かったと思うくらいだ。シンプルイズベスト。

お米はパラパラになっているか?なんて野暮なことアンタ聞いちゃいけません。そんなもの、関係ありません。パラパラではないし、かといってかき混ぜすぎてベタベタしているわけでもない。ピラフ的なふんわか感で仕上がっており、これぞ日本式焼き飯だ。

野菜ラーメン

ヤサイラーメンも頼んでいた。

確か340円だったかな。普通のラーメンが270円で、70円増しで野菜が乗るのだからうれしい。

出てきた野菜ラーメンはこちら。ラーメンの上に、炒めた豚肉、キャベツ、モヤシが乗っている一品。

炒めた野菜というだけでうれしくなってしまう。

おかでんはラーメン二郎系の店が好きな事もあり、「ゆでただけで味が何もついていないキャベツとモヤシのドカ盛りラーメン」に馴染んでいる。キャベツとモヤシを食べすすめ、麺に到達する前にうんざりする事があるくらいだ。味がないので、飽きるのが早い。

そんな過去を背負う者として、こうやって「炒められている」キャベツとモヤシがあるだけでちょっと感動する。いや、これはごくごく当たり前のラーメンなんだけどね。個人的には感慨深い。

その個人的感慨はとりあえず置いておいて、早速スープを飲んでみる。

うは。

これ・・・チャーハンに添えられてきたスープと、全く同じ味だ。

いやまあ、チャーハンのスープの性質上、ラーメンスープと味が重複して何らおかしくはない。とはいえ、こうも全く一緒になってしまうか。すげえな、この開き直り方。

でも、こうやって「どうだ!」と出されると、「化学調味料を使用せず、天然の素材を何時間もかけて・・・」と日夜頑張っているお店と世界が全然違ってくる。もはやラーメン対決ではない。もう、別次元だ。化学調味料万歳。

もちもちした麺が美味い

しっかし、絶妙なところでストライクを取ってくるなあ、とこのお店には感心しっぱなしだ。どの料理も、古くさく、時代遅れで、大して美味いもんじゃない。でも、結果的にとてもおいしく食べる事ができるのだった。自分自身「何で?」と自分の五感と頭脳を疑ってしまうが、美味いんだからそれでいいじゃん。美味いと思った事を詮索して、否定するのはやめようや。

そんな勝手な納得をして、食べすすめた。

化学調味料全開のラーメンスープではあるが、やっぱりキャベツを炒めるとうまみが出るねえ。特に芯の部分がたくさん使われているので、スープに甘みが良く出る。そして、食べたら歯ごたえがあって大層よろしい。

それだけじゃない、ここの麺は太麺だ。若干幅広の太麺を使っていて、もちもちした感じが個人的に大好評。これはオールドファッションな中華料理屋らしからぬ雰囲気を感じた。ややゆですぎの感もあるが、許容範囲。

町の個人経営中華料理屋=まずい、という印象があったが、大いに覆された。また、どんどん先鋭化していくラーメン業界の中でも、このような古くさいラーメンもまだまだ美味い事が分かって、なんだかうれしかった。それと同時に、「どうしてこうもありきたりな料理なのに、自分のツボにはまるのか?」というのが悔しかったひとときだった。

機会があったらまた訪れてみたい。ただ、カウンター席しかないし、時間帯によっては混むらしいのであまりゆっくりできないというのは残念だが仕方がない。

なお、webサイトなどでは営業時間が20時まで、と記されているが、実際は19時前には店を畳む事が多いようだ。おかでんが訪問した日も、早々に店じまいを開始していたのだが、「品切れにより中止」というわけではなく「もう今日はこんなもんだろ」といった雰囲気だった。まあ、ご夫婦ともにご高齢なので、その程度のテンションで良いと思う。無理のない範囲で頑張って欲しい。

(2009.03.06)




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