秋葉で中華

過橋米線

秋葉原に中国雲南料理を出す店がある。「過橋米線」という。場所が場所だけに電源ケーブルでも売っているっぽい名前だが、「米の線」、すなわち米麺を売りにしたお店だ。

雲南省といえば、四川省のさらに南、ベトナムやラオス、ミャンマーと隣接する「中国最南端の省」。四川同様に麻辣を好むのか、それともベトナム料理のようにあっさりしたものを好むのか、まったく不明。

諸葛亮孔明が出師の表を出して南征したように、おかでんも雲南料理を試してみることにした。

ちなみにお店の名前は「かきょうべいせん」。日本語読みだ。「ぐぅぉしゃおみぃみぇん(guò qiáo mǐ miàn) 」とはさすがに読まないようだ。アクセントが日本人には難しすぎる。

ランチメニュー1

ランチメニュー2

昼間に訪れたのでランチメニューしか卓上にはおいていない。

麻婆豆腐定食があるあたり、やはり雲南料理は四川のお隣・・・と思ったら、ほかにも回鍋肉とかエビチリとかチンジャオロースーなどが並ぶ。あくまでもジャパニーズを意識したメニュー構成らしい。

ただ、裏面には米線料理がずらり。さすが雲南料理の面目。

伝統雲南過橋米線

伝統雲南過橋米線 デザート付(980円)。

「過橋米線」には、昔、科挙(中国の国家公務員試験)の勉強のため頑張っている旦那に料理を運んだ奥さんのエピソードがある。離れた橋の向こう側で勉強している旦那に、少しでも冷めない暖かい料理をふるまいたい。というわけで、米麺料理のスープにたっぷりの鶏油を張ったのだった。その鶏油が保温の役割を果たし、無事旦那のところには暖かい料理が届けられるようになったそうな、めでたしめでたし。

・・・だって。そういう美談が今に残って、「過橋米麺」という料理名が今にも息づいている。実際のところ、旦那が科挙に受かったのか、それとも大量の油を毎日摂取させられて成人病まっしぐらの早死にだったかは現代に伝わっていない。

米線とはこのこと

米の麺といえば、ベトナムのフォーや台湾のビーフンを思い浮かべる。日本では米粉パンが最近注目を浴びているが、案外米の麺というのはない。

この「米線」は外観はうどん。しかし少々だらしない様相で、着古して襟首がヨレヨレになった肌着といった風情。小麦粉の麺と違ってグルテン結合がないので、コシという概念がそもそもないようだ。

野菜もあります

肝心のスープには何も入っていない。ただ、事前知識通り鶏油が表面をぷかぷかしている。

過橋米線はここからセルフで作り上げていく、カップ麺でいうところの「後乗せサクサク」流料理。いや、別にサクサクはしていないけど。

過橋米線は、スープ、米麺、肉の薄切りのお皿、野菜類(青菜、もやし、湯葉)が入ったお皿で構成される。

全部一気に投入して過橋米線は完成するのだ

ええと、どの順番でスープに投入すればよいのか、とまごついていたら、店員さんが駆けつけて「早く入れないと冷めちゃうから」という。「一気に入れないと、料理ができ上がらない」のだそうだ。

まさに店の看板料理であるこの料理をへたくそな調理に晒されるのはかなわん、と思ったのか、店員さんが全部入れてくれた。

スープに入れる順は、肉→野菜→麺。全部無造作にぶち込んで、しばらくかき混ぜたら完成。

焦らないといけないほど冷めやすいのか、と思ったら確かにスープはアツアツではなかった。若干ぬるいくらいだ。最初から全部具を入れて煮た方が熱さを維持できるんじゃないか、と思うが、それだとつまらんので却下。おそらく、「面白さ」優先で具は後に投入というわけではないだろう。米線を入れて煮込むとあっけなく煮崩れてしまうのだろう。

大量の油といっても、鶏のものなのであっさり。湯葉の食感が良いアクセントになっておいしい。

「単なるうどんの亜流」と思えば980円という価格は高すぎるが、新しい麺料理、しかもちょっと面白い演出付き、おまけに漢方食材入りとなれば一応納得はできる。

自家製ラー油

適量振りかけますと大層美味しいです

自家製ラー油付き。辛さよりも香りが強く、とてもおいしい。これだけでもお持ち帰りで売ってほしいくらいだ。あっさりした味わいに華やかさを加えるためには、これはラー油好き嫌い問わずぜひひと垂らし、ふた垂らししてもらいたい。

これが気鍋鶏

本日のメインイベント、「気鍋鶏(ちーぐおじー)」。

真ん中に穴のあいた独特な土鍋スープ。一日八食限定、要予約の逸品。ランチメニューには当然載っておらず、事前に電話予約して確保したもの。

これは面白い調理法。もともと鍋には漢方食材と鶏肉のぶつ切り、あと調味料少々だけしか入っていない。この鍋を飲茶店のせいろのように積み上げ、下から蒸す。すると、鍋の穴から蒸気が吹き込み、冷えて水として鍋にたまっていき、じきにスープの海となる。

要するに蒸留水スープなわけで、「スープ」を名乗れるくらいの量まで水かさを増そうとすると4時間かかってしまうらしい。シンプルだけど、やたら面倒な料理だ。

具は鶏肉だけ

電話予約を入れた際、同行した人の分も含めて2人前注文したのだが、店員さんから「鍋ひとつで十分だと思いますよ」とストップをかけられた。「一日八食限定だから、できる限り注文を絞り込んでいるのかな」と思ったが、実物を見て納得。しっかりした「食事」ではない、これはただの「スープ」だ。二人でこの気鍋鶏をひと鍋ずつ、だと確実に残念なシチュエーションだったと思う。

スープはしみじみとうまい。体に染み渡る感じがする。きっと水蒸気を水に還元させたことで、水のクラスターが小さくなって、体に浸透しやすく・・・待て、疑似科学のような言葉を使うのはよせ。

正直、スチームからスープを作るのと、水を煮出して作るのではどう違うのかというのは不明。しかし、イロモノではなく雲南地方ではれっきとした料理として供されるそうだから、きっと合理性があるのだろう。

伝統的雲南料理で、漢方入り(天麻、三七、クコの実、百合根、甘草、冬虫夏草、当帰、銀耳etc)の料理を食べて体がほっくりした感じ。しかし、過橋米麺のスープ含めて全部飲んだため、のどが渇いてお冷やをぐいぐい。結果的に体が温まったのか、むしろ冷えたのかわからん。

同行者は「せっかくの鍋なんだから、暖かいお茶でも出してくれたらありがたいのだけどね」とのコメンツ。
この店はおすすめだ。298円の一品料理をずらずら並べて紹興酒を飲むのもよし、ボリュームがあるという口コミのコース料理で気鍋鶏をはじめとした雲南料理をあれこれ頼むのも、じゅるり。魅力的。今度は夜に訪問したい。

秋葉鶏排外観

同日数時間後、秋葉原駅昭和通り口近く。公園に面したところにある小さなお店。

「秋葉鶏排(あきばちーぱい)」という。

鶏排、とはへべれけ紀行の「台湾編(2)」で登場した、台湾の夜市で愛されている小吃の一つ。鶏の胸肉に香辛料をふりかけ、フライにしたもの。単なるフライドチキンのようだが、その独特の味わいとサクサク感が人気。そんな料理を扱ったお店が秋葉原にあるとは。

あまり台湾料理らしくない台湾料理なので、「しょせんフライドチキンでしょ?」と店の前を素通りされそうだ。しかし、台湾事情を知っている人からすれば「おお!アレをココでヤルのか?」とハッピーニュースウェルカム。

秋葉鶏排のカウンター

ただ、この手の食べ物は日本マーケットを視野に入れて換骨奪胎されてしまうのが世の常。

「本格中華料理」と看板には書いてあるのに、出てくる料理はごく普通のジャパニーズ中華じゃねーか、という店を誰でも一軒や二軒、知っているだろう。まさにそれ。何度も繰り返すが、「単なるフライドチキン」では意味がない。外れくじを引いたらいやだな・・・と思って恐る恐る店に入ってみる。

店に入ると真っ先に目についたのが、「大同電鍋」。おお、これが置いてあるなら本物だ。思わず笑みがこぼれる。写真だとカウンター奥に見える、赤い炊飯器のようなものがそれ。これは台湾において一家に一台必ずあるといわれる調理器具だ。炊飯どころか、煮物・蒸し物も作れてしまう万能調理器。とはいえ、ジャパニーズ家電メーカーが考えるような超ハイテク機能は全くない。加熱と保温しかスイッチだけのシンプルさ。

使い方は簡単で、大同電鍋に水を張り、そして内鍋をセットしてふたしてスイッチGO。以上おしまい。適当なタイミングで鍋をサルベージすればよろしい。そりゃあいろいろな調理できるわけだ、シンプルだもの。でも、こういう発想は日本にはない。シンプルであるがゆえに万能。ただし、複雑なプログラムが埋め込まれた日本の炊飯器と同等の炊飯機能は全く期待できない。

おかでんの台湾人友人、Fishもこの大同電鍋を愛用している。以前「米をおいしく炊くためにも炊飯器買ったら?」と聞いてみたけど、「いやいや、これは便利だから」と聞く耳を持たなかった。台湾人メンタリティとしては、白米一点集中型の炊飯器よりもマルチプレイヤーの大同電鍋のほうがイカしているらしい。

話がずれた。その大同電鍋があるということは台湾とこの店には何らかの関係があるのは間違いない。そういえば、店員さんも見るからに台湾人だ(台湾人は目鼻だちが日本人と異なることが多いので、よく見ればわかる)。よし、全力でいくか。

チーパイ、350円のほかにルーローハン400円、汁ビーフン400円など。ちなみに大同電鍋にて煮られているのは茶葉卵100円。この茶葉卵は台湾人の好物らしく、台湾のセブンイレブンでもカウンターにて売られていた。もちろん大同電鍋で煮て。

料金がどれも非常に廉価。秋葉原駅前とは思えない。たぶん、台湾人スタッフが「屋台で気軽に食べているあの料理を、日本でも気軽に」と強く思ったからこその値付けだと思う。ありがたいことです。

チーパイドリンクセット

チーパイは注文が入ってから揚げ始める良心設計。コンビニのホットスナックのように揚げおきはしないらしい。

チーパイセット500円。ドリンク、フライドポテト付でこの値段はお得としかいいようがない。ドリンクはマンゴータピオカ。

マンゴータピオカ製造中

マンゴータピオカ!

台湾のタピオカは、やたらでかい。日本で大々的に売ったら第二のマンナンライフ事件が起きてしまうくらい、でかい。その「喉に詰まるか・詰まらないか」のぎりぎりのサイズが、喉ごしにつながってナイス食感になる。Fishいわく、「横浜中華街のタピオカジュースは全部台湾風じゃない。ここのは本物」と断言。台湾人からお墨付きもらいましたー。

先ほどの大同電鍋の茶葉卵が「本場台湾」を想起させるのに続いて、タピオカジュースにおいても目印となるものがある。それは、ジュースを入れるカップのフタをするマシンの存在。結構大がかりなラッピングマシンなので、店頭の目立つところに置いてある。台湾のタピオカジュースは大抵プラカップにラッピングでフタがされてある。日本における豆腐の器のラッピングみたいなものだ。で、そこにぶすっと中指ほどあるストローを指して、いただきます、と。

これが鶏排

チーパイは揚げたてでアツアツ。アツアツ、どころか「あっちい!」と叫んでしまうくらいだ。しかし、大きな塊をかみ切ろうとしている最中にその熱さに見舞われるので、手を放すわけにもいかず、かといってチーパイを握りしめるわけにもいかず、えらい目に遭う。とはいえ、揚げたては良いものです。ビバ。

しかも味は明らかに異国情緒漂うもの。台湾の鶏排は一回しか食べたことがないので総評は言えないが、なんだか台湾風な味つけであるよ。日本のフライドチキンとは全然違う。

ちなみに台湾で食べた大鶏排は非常に大きなものだったが、こちらはやや小ぶり。でも、それくらいで日本人にとっては十分だろう。

チーパイボーイ

台湾の人たちは夜市で鶏排食べるのは何軒か屋台をハシゴする中の一軒、という。そんな馬鹿な、あんなデカい鶏排を食べたら一発でおなかがいっぱいになるだろ。しかし、複数名の、しかも女性の台湾人が証言しているからそうなのだろう。いったいどういう胃袋をしているんだ?

・・・と思ったら、実際食べてみて納得。確かにカロリーは高いだろうが、胸肉を叩いて薄く伸ばしたものなのであっさりサクサク食べられてしまう。

現に、「これだけじゃ物足りない!」と叫んだ同行者は、小さく切った胸肉を揚げてカップに詰めた「チーパイボーイ」を追加注文していた。むう、さすが本場風だ。

漢字いっぱいの掲示板

本場であることを示す、掲示板。好きに張り紙をしてよいようだが、中国語で大絶賛されまくりだ。どうも、台湾人留学生がここを訪れ、味に感激して称賛の声を書き込んでいるらしい。中には台湾独自のひらがなのような発音記号、「注音記号」で書かれているものもあり、明らかに台湾人による記述であることがわかる。

本国人がほめているのなら、間違いなさそうだ。意外だなー、秋葉原の外国料理って、ケバブ屋台のイメージがあったけど、こういう店もあったとは。

ミニルーローハン

ミニルーローハン250円。

豚の角煮を甘辛く煮たものと、野沢菜のような菜と、煮玉子が乗っている。おかでんが知っているルーロー飯はひき肉を煮込んだ、もっとどろどろしたもの。それとは外見が違うので、さてどうかな・・・と思ったらこれまた当たり。いや、何が当たりで何が外れかの基準はないんだけど、多くの日本人が嫌がる八角の風味がしっかりしたので。正確に言うと香りはややおとなしいけど味はしっかり八角していた。このあたりは若干日本人向けにしたのかもしれない。

【今日のまとめ】
安価だけど庶民のごちそう(´ρ`)タマラン

(2010.12.02)




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