六本木に「元祖豆腐ステーキ」を食べさせてくれるお店があるという話を聞いた。
元祖豆腐ステーキ?いや、確かに豆腐ステーキそのものは知ってる。でも、あれって豆腐をステーキ風に鉄板で焼いただけのものだよね。元祖もへったくれもないような気がする。というか、あんな自然発生的な雰囲気のある料理に、ちゃんと「元祖」が存在するということに驚きだ。
ただ、ふと我が身を振り返ってみると、豆腐ステーキの存在はよく知っていても、案外食べた経験がないことに気がついた。近くて遠き存在。簡単な料理だけど、家で作ったという記憶もない。
ならば、せっかくだからその「元祖」とやらを食べてみよう。そう思って、六本木に向かった。

お店は、東京ミッドタウンに隣接したブロックにある。でも、裏道に面しているのでややわかりにくい場所だ。元祖、というものはなんにせよ地味なのかもしれない。まさか、「豆腐ステーキ」でパテントとって大もうけ、という訳でもあるまいし。
店名は「トーフステーキ一億」という。なんだか不思議な名前だ。一応、お店のジャンルとしては居酒屋になるらしいのだが、それにしても思い切ったネーミング。あと、外観もちょっと怪しく、一見さんがふらりと立ち寄るには少々抵抗がある。

店の中をのぞき込むと、狭い店内には酔った団体客が賑やかに宴会をやっていた。正直、入りにくい雰囲気はある。でも、店頭に飾られている「元祖トーフステーキ」の文字が背中を押してくれた。
元祖たるものは、全部カタカナで「トーフステーキ」と言うんだな。「豆腐ステーキ」ではないんだ?
解説文を転載してみよう。
今でこそ「トーフステーキ」は馴染みの料理ですが、実はここ一億にて今から40年前に誕生したメニューなのです。なんと世界のサンタナも・・・
ふんわりあつあつのトーフを特製のタレでお召し上がりください。
「世界のサンタナ」がどうしたんだよ。なんでそこで口ごもるんだよ。なんかやばいことでもやったのかよ。
それにしても豆腐ステーキって、40年しか歴史がないんだな。案外最近のメニューだ。江戸時代には既に食べられていそうな雰囲気があるけどな。多分、「豆腐ステーキ」としてれっきといたメニューにしたのが、このお店が初だったのだろう。

メニューはテーブルに貼り付けてある。お店全体の雰囲気と相まって、なんだか不思議な空気感。
癖の強い名物主人なんかがいて、その人の趣味だったりするのかな・・・なんて勝手に妄想する。
さて、注文なのだが、当然元祖トーフステーキは食べるとして、それだけというわけにはいくまい。お酒を飲まないのだから、何かご飯ものが欲しい。えーと、「めしセット」というのがあるぞ。480円。これを頼もう。450円のトーフステーキよりも高いのは腑に落ちないが、まあいいか。
あとは飲み物だ。居酒屋に来て水ください、というのは変だろう。えーと、えーと。ジンジャーエール、ください。辛口と甘口が選べる?じゃあ、辛口で。

ジンジャーエール(辛口)。ウィルキンソンのものが来た。辛口のジンジャーエールといえば、この銘柄が定番だな。
お値段、700円。
うひゃー。
これぞ六本木価格。でも、これより安いソフトドリンクがないんだもの、仕方が無いじゃない。

元祖トーフステーキwithめしセット+ジンジャーエール。
熱せられた鉄板の上でじゅうじゅういってる豆腐が豪快だ。やっぱり、鉄板でサーブされるってのがすてきだよな。これはご家庭ではまねできない芸当だ。
豆腐の上に載せられたかつおぶしが苦しそうに舞い踊る。
たれが添えられてきたので、「これはトーフにかけて使うのですか?」と店員さんに聞いてみたら、豆腐をつけて食べて欲しい、と言われた。ほう、そういう食べ方なのか。

豆腐の表面はかりっとしている。片栗粉でもまぶしてあるのだろうか。
で、中はとろっとしていて、こりゃおいしいや。見た目のインパクトもさることながら、食べた時の満足感もそれなりにある。
「さすが元祖!」と適当な愛想を述べる。
たれが面白い味だ。なんかよくわからんけど、旨かった。元祖だからといって、シンプルにポン酢とか醤油、というわけではないのだな。進化を遂げた結果のたれのような気もしたくらいだ。
これで450円は安いと思う。いや、もちろん豆腐の原価とか考えたら妥当なのかもしれないが、トータルな満足感を踏まえるとお得感強し。
ただし。ただし、だ。めしセットをつけて、ドリンク1品つけてみたら、お会計が1,630円にもなってしまったのは痛すぎた。これはちょっとイカンですよ。リピートしづらいですよ。
若い女性店員さんには退店時に「おいしかったです、また来ます」と言ったけど、さてどうしようかなあ。
(2013.10.10)
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