最近は朝食で食べるパンをホームベーカリーで焼いている。朝食べるものなので、奇をてらったものを作ることはあまりしないのだけど、時々気まぐれでちょっと違うものを焼くこともある。
ホームベーカリーのマニュアルはレシピ本も兼ねていて、辻調理師専門学校監修のさまざまなパンがたくさん紹介されている。コイツらを端から端までトライしていたら、かなり楽しめるはずだ。しかし実際にはそうしないのは、マニアックなパンのためにマニアックな食材を調達するのが面倒だし、一回作ったあとにもてあましそうだからだ。
くるみとかドライフルーツとか抹茶とか、いろいろ面白そうなパンがキラキラと紙面を飾るが、オリンピックの競技施設同様、一回晴れ舞台に立った後の利活用に苦労しそうな気がする。あと、あれこれパンの具に入れると、パンのコストが跳ね上がる。割高すぎてちょっと気が引けてしまう。
そんな中、「あんパンを作るなら良かろう?」という気になった。ホームベーカリーで焼くパンと、よく見る「あんパン」がいまいち頭の中で結びつかないけど、それがむしろ楽しそうだ。で、「具にあんこを入れればあんパンなんだろ?」という安直な気持ちがある。
いや待て、いわゆる食パンにあんこを入れてあんパンって、安直すぎないか?一般的なあんパンというのは、丸くて、肉まんみたいな形をしていて、茶色くてかっていて、上にゴマとか乗ってるやつだ。アンパンマンのようなやつだ。というか、アンパンマンがそもそもあんパンを模しているんだ。
ホームベーカリーであんパン。やっぱり釈然としない。だから、作ってみた。
材料は強力粉、薄力粉、バター、砂糖、塩、玉子、牛乳、水、ドライイースト。そして具となるあんこ。
さすがにいきなり全部の食材をホームベーカリーに投入してグイグイ攪拌してはいけない。それはそれであんパンで間違いないけど、赤黒くてグロテスクなパンに仕上がりそうだ。やってみないとわからないけど、多分うまそうには見えない。
なので、まずパン生地をこしらえ、それをいったんホームベーカリーから取り出し、生地をまな板の上で細長く整形。その後まるで小倉トーストでもこしらえるかのように生地の表面にあんこを塗る。で、その生地をロールケーキの要領でくるくると巻き、丸まったものをホームベーカリーに戻して蒸し焼きにするのだった。
なのでこのあんパンの場合、できあがりのパンの断面には渦巻き状にあんこが見えることになる。なんだこのあんパン。そんなの、見たことがない。
非常に疑い深く、レシピ通りに作ってみる。しかし、いざパン生地を作ってみると、微妙に分量が間違っていたらしく生地が緩い。デロデロしている。その結果、「あんこを乗せて、くるくるロールして整形」がまったくうまくいかなかった。かろうじて、あんこを生地の中に閉じ込めた程度だ。
できあがりはきっと、あんこが熱で爆発してパンが噴火しているんだろうなぁ、と思っていた。しかしできあがったのを見ると、結構な上品な面構え。いや、「面構え」というのは言葉が汚いな。「面持ち」とでも言い直そうか。
懸念されていたあんこ爆発はないし、あんこが表面に露出していることもなかった。ありゃ、ひょっとしてこれは成功したかもしれない。
・・・まあ、成功したとしても、この食パンの中にあんこが入っているのを「あんパン」と読んでよいのかちょっと思案してしまうけど。
早速包丁で縦に割ってみた。
「ありゃ!?」
なかなか切れ目からあんこの姿が見えない、と思っていたら、あんこはパンの一番底に沈む形で固まっていた。なんだこれ。渦巻きになっていないし、これじゃ「8割方普通のパンで、2割があんパン」という有様だ。
食べてみたが、
パンを食べ、パンを食べ、パンを食べ、お口直しにあんこ。
いかん、これはどう考えても「あんパン」とは呼べない代物だった。
重力がいかんのです。きっと無重力空間でこのパンを焼いていたら、もっと良い仕上がりだったんです。宇宙に旅したら、また作ってみようと思う。今日はこの辺で許してやらぁ。
(2016.09.24)
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