奇をてらった料理は果たして旨いのか

白いオムライス

洋食屋の店頭に、「白いオムライスあります」という張り紙が張ってあった。

敢えてそれはスルーしてきた。そうはいくか、と。

オムライスは玉子を使うから、黄色い。これは自然の摂理だ。それを敢えて白くないオムライスにする、ということは摂理に反した何らかの忖度(そんたく)がどこかで行われていることに他ならない。怪しい。

美味い料理を追い求めた結果、オムライスが白くなったのならいい。しかし、「オムライスが黄色って誰が決めた?白いオムライスを作ってやるぞ!」とばかりに、「黄色以外の色ありき」で料理を創作したのでは、オリジンである黄色オムライスに勝てる訳がない。劣化コピーを最初から目指しているからだ。

過去、「白いカレー」「白い酢豚」といったものを食したことがある。どれもまずくはないのだけど、別物料理として考えた方がよっぽど気持ちがスッキリした。やっぱりニセモノ感が強いからだ。

もちろん、全く別名の料理にしてしまったら、驚きもインパクトもないわけで、商売としては成立しない。敢えて、既成概念とは違うカラーリングの料理を出すことに、お店は奮起しているのだろう。その台所事情は理解するが、やっぱり「出オチ」感は強い。出てきた一品を見て、驚いて、写真を撮る。そこがテンションのピークで、食べている最中はどんどん下がっていくばかり。もっぱら、あら探し的な観点で食事をしてしまうので、ちょっぴりもの悲しい。

オムライスアップ

そんなわけで、この洋食店でも、「白いオムライス」は見て見ぬ振りをするつもりだった。しかし、住宅地の中の飲食店にしてはやや高いお値段設定で、大半のメニューが1,000円超え。そこまではお金を払う気がしなかったので、1,000円を下回るメニューは・・・と見渡し、あらためて目に留まったのがこの「白いオムライス」だった。

玉子の黄身は使わないで、白身を使っているんだろうなあ、とは予想がついたが、だからなんなんだ感は頼む前から漂っている。いかんな、ここで「ウワア!信じられない!あのオムライスが白いだなんて!」って喜び驚かないといけないんだろうな。すっかりそんな純真な心を失ってしまっている。

出てきた白いオムライスは、確かに白かった。若干黄色が混じっているのは、わずかながら黄身も混ぜているのだろうか?黄身の分離に失敗した、とは思えないので、風味を出すためにわざと黄身を入れた可能性がある。

努力の跡がこういうところに覗えるけど、「いや、でも黄色いオムライスでいいじゃん?」と身も蓋もない事を言ってしまいそうだ。

ホワイトソースをかける

ケチャップをかけるところを、ホワイトソースをかける。ここも白に拘っている。

中も白い

で、中身も当然、ケチャップライスではなくピラフのようなライスが入っていた。

味はというと、一言で言うとまったり。通常のオムライスは、トマトケチャップによる酸味と甘みが全面に出ているのだけど、この白いオムライスはその方向性ではない。ホワイトソースとライスの組み合わせなので、どちらかというとドリアに近い味わいだ。

あー。

「そういう料理である」と最初からインプットされていれば、これはこれでおいしいんだとは思う。しかし、オムライス!と聞いた時点で、口の中はケチャップの酸味と玉子の濃厚な甘さを想像して唾液が出ている状態。なので、拍子抜け感が強く出る。結果として、「物足りない」味だった。

どんな料理が出てくるのだろう?という期待感はあったけど、実物を見てしまったらそれまで。もし、隣のお客さんなんかが既にこの料理を頼んで、食べていたなら、僕があらためて注文することはなかっただろう。そんな料理。

つくづく惜しい。

リピート?いや、もうそれはない。

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