大根一本、まるっと食べきり鍋コース

コーツトカフェ

最近すっかり贔屓にしている、谷中のカフェ「コーツトカフェ+ショップ」。

23時まで営業していて、会社帰りにも使い勝手が良いし、雰囲気がいい。パソコンを広げても全然平気なお店だけど、駅前チェーン店カフェのようなざわつきもない。ゆっくりと、めいめい好きな時間が過ごせて、とても居心地が良いお店だ。

最近はカフェで時間を過ごすことが多い。でも、その目的は「このサイトの記事を書いたり、メンテナンスをするためにパソコンを広げる」ことだ。なので、パソコンが広げられてナンボとなる。

チェーン店以外で、パソコンを広げてよさそうな雰囲気のお店というのは決して多くはない。少なくもないけれど、多くもない。適当にGoogleマップなんぞで近所のカフェを見つけて、適当に訪れてみたら当てが外れた、ということは結構あることだ。

昔ながらの喫茶店だと、テーブルは狭いしグラグラしているときがあるし、たばこOKで煙い。そもそも、雰囲気がパソコンOK!っていう感じではない。別にWi-Fiとか電源はなくて構わないのだけど、お店の邪魔にならないTPOはわきまえたい。

コーツトはその点の居心地の良さは最高だ。住宅地の中にひっそりとあるお店だけど、適度な広さと客席数だ。そして珈琲も食べ物もおいしい。お酒の取り扱いもある(生ビールもある!)ので、飲みたいときには飲めばいい。オールマイティにくつろげるお店。

そんなお店には掲示板があるのだけど、そこに「『大根一本、まるっと食べきり鍋コース』をやる」という告知が張り出されていた。昨年もやった人気企画で、2人以上4人以下が集まって、予約すれば開催するのだという。

掲示板には、バンドメンバー募集よろしく、「誰か一緒に食べる人いませんか?」という提案と日程が貼ってあった。自分の仲間を集めて、内輪で宴会をやるのではなく、不特定多数の客に対して「同じ鍋をつつく」仲間を募る、というのがおもしろい。

僕は店員さんに「おかでんさんもどうですか?」と水を向けられたので、じゃあこれも何かのご縁ですね、と参加させてもらうことにした。

テーブル

平日の19時からスタートだったので、急いで仕事を終わらせてお店に向かう。

到着すると、この日ご一緒する3名の方はすでに到着していた。4人掛けのテーブルに着席する。男性2名、女性2名。僕にとって「はじめまして」の方も、当然いる。

大きな正方形のテーブルは、いつものカフェの雰囲気とはちょっと違う。箸がすでにおいてあり、お品書きが短冊に書かれている。

このお店に「箸置き」があるというのは知らなかった。カフェって、いろいろな食器類を取り揃えていないといけないんだな。いざ、新しい料理をふるまおうと思っても、皿やらカトラリーがないと、それもできない。ホームパーティーみたいに、「ありもののお皿で、ちぐはぐだけどオッケー」というわけにはいかないし。

メニュー

この日のお品書き。かわいいスタンプが押してある。これを記念に持って帰ったら、楽しいだろう。

大根の食前茶
ふろふき大根~ブルーチーズ添え~
大根と干し柿のマリネ
みぞれ鍋(豚肉、なめこ、豆苗、揚げ里芋、大根)
玄米餅のお雑煮 または 玄米ご飯の雑炊

という全5品。お値段は2,500円+飲み物代。

大根一本まるごとコース

僕はお酒を飲まないので、ハーブティーをいただく。

できることなら、ここで白ワインとあわせながら大根をいただくのがよさそうだ。

大根一本まるごとコース

大根の食前茶。

茶、といってもお茶っ葉が入っているわけではない。大根おろしをお湯で溶いたもの、だ。重湯のような感じの飲み物。

これが予想外にうまい。熱が加わった大根なので、自然な甘みがじんわりと染み出ている。これだけでも、思わず目を見開いて「うまい!」と声を上げてしまう。

なるほど、道理でわざわざ「大根一本、まるっと」なんていう企画を立てるわけだ。それだけ、お店としても自信のある、自慢の大根なのだろう。

その証拠?か、本当は「2月一か月間の企画」だったのだけど、途中で大根切れということで募集が打ち切りになっていた。そこらへんの八百屋で買ってきた大根じゃ、こういううまさにはならないらしい。

大根一本まるごとコース

大根茶は何も味付けがされていないので、塩や醤油が用意されていた。

が、そんなものは全く必要がないくらい、良かった。大根というのは塩気とセットで食べる食材、というこれまでの認識は間違いだったんやー。

大根一本まるごとコース

この日一番のびっくりどっきり料理が、この「ふろふき大根~ブルーチーズ添え~」だった。大根にチーズ、しかも癖の強いブルーチーズとあわせるなんて!と、その発想にびびる。でも、いざ食べてみると「これだ!」感が半端ない。

むしろ、大根の甘みとうまみをじっくりと味わうためには、ちょっとツンとした味わいもあるブルーチーズでこそふさわしい。大根でふわーんと味が広がり、チーズでぎゅっと引き締める感じ。

ブルーチーズと喧嘩をしないように、大根に染みている醤油味は控えめだ。だしの風味も抑えてあって、それがいいバランス。にくい塩梅だ。

これは激しくうまいし、驚きと興奮がある。そして、「たかが大根」だけど高級感すら感じる。家でも真似したいけど、その日の食卓のTPOをよくわきまえないと場違いになりそうな気がする。きんぴらごぼうとか煮つけの傍らにこれが置いてあると、「王道の和食に変なアレンジをした料理」になってしまう。

大根一本まるごとコース

大根と干し柿のマリネ。

こういう組み合わせもあるのか!

大根一本まるごとコース

みぞれ鍋(豚肉、なめこ、豆苗、揚げ里芋、大根)。

揚げ里芋がすげーうまい。里芋をそのまま煮込んで芋煮にするのではなく、いったん揚げることでこうもうまくなるものなのか。たまらんな。でも家庭ではなかなか真似ができないひと手間だ。

みぞれ鍋なのでスープのすみずみまでが甘みとうまみが広がる。いいなあ、これ、いいなあ。

鍋の上に乗っかっている青菜が、春菊でも水菜でもなく、豆苗というのも面白い。シャキシャキした歯ごたえが、みぞれ鍋のまったりした食感との良い対比になって、最後まで楽しめた。

それにしてもこのお店、釜めしの釜みたいな鍋を普段何に使っているのだろう?カフェとしては使わなさそうな食器だ。

大根一本まるごとコース

自家製の辛味も、もれなくうまいのです。

大根一本まるごとコース

「玄米餅のお雑煮 または 玄米ご飯の雑炊」ということだったので、多数決で雑炊になった。なので、先ほどの鍋のスープは全部飲まないように、という厳命が事前にあった。しっかり残しておかないと、雑炊が作れない。

そういう注意がなければ、スープを全部飲み干していたと思う。

そんなスープで作った雑炊だ、まずかろうはずがない。ああ、至福の時よ。

以前からみぞれ鍋は相当うまいと思っていたが、作るのが面倒なのと「食べたいな」と思ったときに限って大根がやたらと高いので疎遠になっていた。

今回を機に、またみぞれ鍋を作ってみようと思う。このお店ほどおいしくは作れないけど、なあに大丈夫だ、大根おろしを加熱してまずくなりようがない。

チョコレート

食後、食卓を一緒に囲んだ方がチョコレートを追加注文していた。食後のデザート、というわけだ。そのチョコレートを皿の上でいじりながら、

「誰が一番面白い盛り付けができるか、競いましょう」

なんて言う。面白い人たちと、面白い時間が過ごせて、ほっこりした2月の夜だった。

(2019.02.19)

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