ペタという単位に打ちのめされる【ペヤング・ペタマックス】

まるか食品が販売しているソース焼きそば、「ペヤング」は日本を代表するカップ焼きそばだ。どこのコンビニに行っても売られている。そんなメジャーな存在がなせる技か、ときおり奇抜な商品を発売して、マニアたちの度肝を抜くことがある。

「激辛」と称して販売したペヤングは、辛いもの好きでさえ「これはマジだ」と驚いたほどの辛さで、一般の人だと食べられないレベルだった。しかし、話題性に飢えているSNS時代において、「食べられないほどの辛い料理を、あのペヤングが発売した」ということは非常に好意的に捉えられ、かなり売れた。

それに味をしめ、「一体こんなの、誰が食べられるんだ?」というひたすら辛い「獄激辛」「激辛MAX END」なんていう焼きそばも発売している。

僕はカップ焼きそばとはほぼ無縁の日々を送っている。ビールを愛していたときは、自宅飲みの際に「シメでなにか炭水化物がほしいな。」と思った時に焼きそばを食べることもあった。でも、お酒を止めて以降、食べる機会なんてほとんどなかった。

でも、そんな僕でも食指が動いた新製品があった。

「ペヤング 超超超超超超大盛ペタマックス」だ。

もう既にあちこちのネットメディアなどで面白おかしくレポートされていて、今更僕がここで紹介するまでもない。二番煎じどころの話じゃない。面白い記事が読みたければ、別のサイトで読むほうがいいと思う。ここでは、僕の私的な体験と感想をメモする。

この商品、とにかくデカいのだという。デカすぎて、ダンボールみたいな箱に入って売られているのだという。そして2020年の11月頭にコンビニで発売開始なのだという。僕が知っているのは、それだけだ。でも、その情報だけでも惹かれた。

テレワーク三昧の日々。会社に行くのは週1日だけだ。その週1日も、祝日だったりすると出勤日はない。忙しいときは、お昼をミックスナッツや柿の種だけで済ませて、家から一歩も出ないことがある。

テレワーク中心のワークスタイルになってから、会議というのはやたらと「11時スタート」ないしは「13時スタート」になった。職場のメンバーの勤怠時間がフリーダムになり、「あさイチでのミーティング」とか「夕方のミーティング」が若干やりにくくなったからだ。なにせ、早い人は朝7時前から仕事を始めちゃう。通勤時間が不要になった分、勤務開始時間を前倒しにするからだ。で、遅い人はこれまで通り10時始業だったりして、バラバラだ。

もともと勤務時間は個人である程度決めることができる職場だったのだけど、コロナによってその制度が本領発揮した。そこまでは想像がついていたけど、まさかミーティングの多くがお昼に集中するとは思わなかった。

その結果なにが起きるのかというと、「ちょっと早めにお昼ごはんに出よう」とか、「お昼休み、ちょっと長引いてもいいよね」という気の緩みが許されないスケジュールになる、ということだ。テレワークだからといって、グダグダの仕事っぷりにはならず、むしろお昼休みが厳格になった感じがある。

で、その結果、「外出してお昼ごはんを食べに行くのは面倒だから、ナッツで済ませる」なんてことになる。そして、太る。

かなり大きなパッケージだと聞いていたので、近所のコンビニで売っているのだろうか?と疑問だった。なにしろコンビニは限られたスペースであらゆる商品を並べなければならない、商品の見本市だ。デカいと、その分他の商品の売り場面積を圧迫する。我が家の近所の小さなコンビニでは、売られていないのではなかろうか。

実際、そうだった。別に買う気がなくてもそれとなく数軒のコンビニを見て回ったが、どこも売っていなかった。「なんだ、やっぱりないんだな」と思っていた・・・ら、発見してしまった。

完全に油断していた。この日はベーカリーに行ってパンでも買って、家でお昼ごはんを済ませるつもりだった。そのついでに、念の為にコンビニに寄っただけだったからだ。

ちまちまとカップ麺が並んでいる中で異彩を放つ外観。明らかに他社製品を圧倒し、営業妨害となっているサイズ感。これはすごい。とっさに、買ってしまった。迷うことなんて、なかった。まさか、売っていると思っていなかったので、びっくりして動揺したからだ。

なんの躊躇もなく買ってしまったのだけど、お会計をしてみてびっくりした。

えっ、980円(税抜)もするのか!

値札、全く見ていなかった。しまった、ペヤングだから量が多いといっても安いものだとばかり、思い込んでいた。まさか税込だと1,000円オーバーになるとは・・・。

所詮は「量が多いだけのペヤング」だぞ?量が多くてお得、かもしれないけれど、そこまでたくさん食べたいわけじゃないし。この値段だったら買わなかったのになぁ。

ペヤングの名誉のために言っておくが、これはペヤングが悪いんじゃない。僕のチェックミスだ。僕における「ペヤングってだいたいこれくらいの値段だよね」という価値観とすり合わせができていなかった、という話だ。

それにしても、どさくさに紛れてアイスクリーム買ってるんじゃねーよ。お前ペヤングなめてんのか。激しく後悔する。

だって、カロリーが4,184kcalあるんだもの。逆ライザップの完成だ。

「絶対に1人で食べないでください」という注意書きがパッケージに記載されている。こんなの、単なる話題作りの冗談っぽい脅しだと思ったけど、実物を手にすると案外しゃれにならん。ずっしりと重いからだ。それよりもなによりも、カロリーの表示が僕にとっては重たすぎる。これはやばい。10代・20代の人が食べるものだ。

つい最近も食べ放題のお店で「ひゃー、食べ過ぎた!」なんて年甲斐もなくはしゃいできたばかりだ。そういうのは罪悪感を感じないけれど、さすがにペヤング1個食べて4,184kcalは罪悪感が半端ない。

しかも僕は妻帯者だ。後でご指導を受ける前に、チャットで「ごめん、すげえサイズとカロリーとお値段のペヤング買っちゃった」と謝っておいた。妻のいしが帰宅する前に。

いしはストレス発散になるなら、僕が少々お高いものを食べても、量が多くて健康に良くなくても、文句は言わない。でも、こればっかりは僕の方から「なんか、ごめん。」と先に謝っておきたい気分にさせられた。

ペヤングといえば、ペラいプラの蓋というイメージだけど、これは日清やきそばUFOと同じ、紙製の蓋になっている。

ベリベリと本体容器から蓋となる紙の一部を剥がし、中を覗き込む。

なるほど、4玉か。

通常の4倍のサイズのペヤング、ということらしい。

※あとになって、この認識は間違っていることに気がつく。そもそもこの「1玉」のサイズがデカい。

中から具とソース、ふりかけを取り出す。2袋ずつ。

2袋ずつあるから、通常量の2倍なんだな、というわけではない。うっかり誤解しそうだけど、1袋がデカい。

わざわざ2袋にわける意味はない。だって、麺そのものは一度に茹でるのだから。でも、わざわざ2袋に分かれているのは、単に製造ラインで「これ以上大きな袋は作れない」などという制約があるからだろう。

お湯を注いだところ。2.2リットルのお湯が必要となる。

このため、ティファールでお湯を沸かすのは諦めた。1リットルしかお湯が沸かせないからだ。

やかんでお湯を沸かす。

お湯を注ぐ際に気をつけないといけないのが、ペヤングのポジショニングだ。一度お湯を注いだら、それ以降場所を動かすことが大変に難しい。なので、湯切りができるようにちゃんとキッチンシンクの脇に場所を確保し、頭の中で入念にシミュレーションしておく必要がある。

シミュレーション結果通り、3分経ったところで湯切り。

これ、単なるプラの蓋だったら、湯を切ろうとした瞬間に蓋が外れて中身がドドド、とシンクに落ちる。容器にシーリングされた紙の蓋だからこそ、安心して湯切りができる。

とはいっても、2キロ以上の熱湯が入った容器だ。手元が狂うとやけどが待っているので、結構緊張感が伴う。小さなお子様がうろちょろしているご家庭では到底おすすめできない。湯切りの際に気が散ったらアウト。

それにしても、これだけ大量のお湯を流してもシンクが「ベコン」という音がしないのには今更ながら感心した。我が家のシンクは分厚いステンレス製なのかもしれない。

湯切り完了した状態のペヤング。

なるほど、お湯を猛烈に吸い上げて麺が膨張している。

湯切りをしたけれど、麺がお湯を含んでいるのでかなり重たい。

ここにソースをかけて、ひたすらグリグリと混ぜ続けて、ふりかけをかけて完成。

どうだい、テンションが上ってきたかい?・・・いやあ、あんまり。

わかっちゃいたけど、やっぱり量が多い。あと、ペヤングに限った話じゃないけれど、カップ焼きそばは具が少ないのでひたすら麺、麺、麺。これではテンションがなかなか上がらない。

とはいえ、食べきれない量ではなさそうだ。カロリーのことは気にせず、ガッといこうぜ。

あ、その前に、アイスクリームが溶けちゃうから食べておこう。

・・・やっぱりアイスクリーム、食べるのか。

全部食べられるぜ!というつもりで食べ始めたんだけど、この段階でやめにした。2/5食べたかどうか・・・。思ったよりも減らなかったな。

やっぱり、食べているうちに「虚無」という言葉が頭をちらつくのだった。なにせひたすら麺だ。

そして食べれば食べた分だけカロリーがガツンガツンと腹に蓄積されていくことを考えると、箸が進まなくなってしまった。そうこうしているうちに、麺がどんどんパサついてきて、うーん、もういいかな・・・という気分に。

ただ、捨てるのはもったいないので、残った分はジップロックに入れて冷蔵保存にした。なに、時間が解決してくれる。

と、思ったのだけど、あとになってジップロックからボソボソした麺を引っ張り出して食べる、というのはさほど美味しいものでも楽しいものでもなかった。

やっぱりこれは、3~4名がかりでわーっと盛り上がって、その場の勢いとノリで一気に食べきっちゃう、というスタイルがいい。「食べきれなかったら残して、後で食べればいいじゃない」という発想ではキツいと思う。

でも、良い体験になった。加齢とともに、「食べること」に対する情熱とか喜怒哀楽が減ってきたことを実感しているからだ。良くも悪くも、経験値が積み上がってしまい驚きや興奮が少ない。今回、ペヤングと対峙して、久々に「食えるのか、これを!?」とか「食べるってどういう意味があるのだろう」とかあれこれ考えることができて、その先にある「生きることとはなにか」みたいなことまで考えてしまった。

人生を見つめ直したい方。食べ物を粗末にしない、という約束のうえで、ぜひこのペタマックスのペヤングをお試しください。

(2020.11.06)

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