岡山県のカツ丼といえばドミグラスソース、らしい。

岡山には何十回訪れたか知れない。いや、ひょっとすると100回を越えているかもしれない。

でも、じゃあ岡山の外食事情に詳しいかというと、全然詳しくない。むしろ知らないくらいだ。こっちに来ると、家でメシを食べることが多くて食べ歩きをしないからだ。

いしと結婚して以降、岡山を訪れる際はどこかで外食するようになった。今回もそう。お店選びはいしに任せている。

静岡出身のいしにとって、岡山はまだ馴染みのない土地だからだ。「これはなんだろう?」というフレッシュな好奇心でお店や料理を発見してもらえれば、僕もまた楽しい。

そんないしが「るるぶ」を手に行きの新幹線車内で語る。

「岡山のカツ丼って、玉子とじじゃなくてデミグラスソースらしいですよ。知ってました?」

うん、知ってた。でも、そういう文化がある、という知識はあったけど、見たことも食べたこともなかった。今回、よい機会なので食べてみよう。

訪れたのは、岡山駅からしばらく歩いたところにあるお店。ガイドブックにも載っているほどの有名店らしい。お店には次々とお客さんがやってきて、外に行列ができるくらいだ。この並んでいる人たちは地元民なのかそれとも観光客なのか?

地元民でこれだけ列を作るんだとすると、すげーな。愛されているんだなカツ丼。

聞くと、このお店が岡山名物となったデミカツ丼の元祖なんだそうだ。

「ほほう」

メニューを手にして、思わず唸る。なるほど、「ドミグラスソースカツ丼」と「玉子とじカツ丼」の2パターンが用意されているんだな。

この世の中には、カツをウスターソースなどのソースに浸して丼飯の上にのっけた「ソースカツ丼」を愛する地域がある。日本国内でポツポツと点在しているのが興味深い。しかし、ドミグラスソースのカツ丼というのはおそらく岡山だけだと思う。ありそうでない、独特の文化だ。

文化、といっても自然発生的に生まれたものではない。1931年に考案された、ということも記録として残っている。でも、そこからじわじわと広がっていくのが面白い。今じゃ、岡山市内のラーメン店でもデミカツ丼が食べられるらしい。

名古屋における「台湾ラーメン」とか、広島における「汁なし担々麺」と同じ展開を感じる。元祖と呼べるお店があって、それがあまりに素晴らしいので周囲に波及していき、気がつけばご当地名物になっていた、という流れ。

カツ丼はロースとヒレが選べる。僕はロースを選ぶ。いしはヒレを選ぶ。

男性はロースを好み、女性はヒレを好む傾向があると僕は思っているのだけれど、我が家でもまさにそうだった。

出てきたドミグラスソースカツ丼は、こってり・ぼってりしたソースがカツにたっぷりかかった重厚感ある丼だった。食べごたえ十分だ。塩分多そう?いや、見た目ほどは味が濃くない。「こりゃあ大盛りを頼んだら途中で味に飽きるんじゃないか?」と思ったけど、多分大盛りでもイケる。むしろドミグラスソースに引っ張られて、大盛りを食べたくなるかもしれない。

面白い料理だった。東京ではなかなか食べられない、「ありそうでない」味を楽しめた。

(2022.08.11)

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