気の毒な食べ放題で、食べ残った話

しゃぶしゃぶ食べ放題を謳う某チェーン店に行った。都内ターミナル駅の近くだ。

写真に写っている鍋の形を見れば、「ああ、あそこか」とわかってしまうような有名チェーン店だ。

卓上にタブレットがあって、タッチパネルで注文する形式になっていた。

セルフで食材をカウンターから取ってくるスタイルのお店もあるが、ここは店員さんが卓上まで運んできてくれる。

タッチパネルであれこれ注文を開始した。料理は、鍋の具以外にもおつまみ類も食べ放題だ。

しかし、待っても料理がやってこない。店員さんを呼び止めて「どうなってます?」と確認しても、店員さんも状況がわからない有様。タッチパネルで注文したと思われる料理が、まだ準備中なのか、忘れられたのか、それともシステム上オーダーが通っていないのかさえわからない。

ややこしいのが、全てのオーダーが通らないわけではなく、時々注文したものがやってくるということだ。

ひもじくならない程度にオーダーは通っているので特に不満はなかったが、それにしてもオーダー漏れが多すぎる。もう一度タブレットからオーダーし直しても、やっぱり僕らのところに料理が届かないものがある。どうも、肉はオーダーが通るけれどおつまみ類は全滅だ。

隣のお客さんは、「オーダーしたのに鍋さえ届かない」という有様で、みんなしょぼい顔をしてビールをちびちび飲んでいた。で、鍋より先に野菜が届いたものだから、「これは鍋が・・・忘れられている?」という疑惑になった。ようやく「鍋そのものが届いていないんですけれど」と店員さんに申告したのは、オーダーをしてから10分以上が経過した頃で、そこから鍋が来るまでさらに5分以上。時間制限ありの食べ放題なのでこれは気の毒だった。

でも、店内の客、誰も文句を言わない。一番気の毒なのが店員さんだとみんなわかっているからだ。

店員さんが殺気立っている気配はないのだけれど、常に忙しそうにしているのは見えている。そして、周囲のどのテーブルもオーダーのロストが大量に発生しているのはなんとなくわかる。

「ああ、お店が全然回っていないんだな」と察してしまい、「どうなっているんだ、早くしろ」と怒る気にさえなれないのだった。客から哀れみを買うお店。しかも大きなチェーン店。これが日本の現状。

ただでさえ人手不足の昨今なのに、飲食業は特に人手が足りていない。コロナによる休業・営業時間短縮によって職を離れた人・追われた人は現場に戻ってきていないようだ。

今後これが改善するとは思えない。コロナが明けようが、関係ない。なにせ、バイト戦力となる学生が一昔前とくらべて少なくなってしまった。

タブレットでのオーダーだけでなく、客にある程度セルフサービスを求めたり、配膳ロボットを導入したり、場合によっては回転寿司のようなレーンで料理を運んだり下膳したりする仕組みを導入しないと、店を運営していけなくなるだろう。

特に食べ放題のお店なんてじゃんじゃん追加注文が飛び交うんだから、テーブルオーダー・店員さんの配膳は厳しい時代になってくると思う。だいたいこのお店の場合、食べ残しを恐れてかなんなのかわからないけれど、肉も野菜も1人前が少ししかない。お陰で注文・注文・注文と注文を繰り返してしまい、その結果店員さんがフル稼働する羽目になる。

頼んだ品の1/3くらいが結局届かなかったけど、「もういいや・・・」と諦めて席を立った。

退店する際、空いている席を見渡してみたら、既に客が帰ったあとだけど片付けられておらず乱雑になっている席だらけだった。厨房の入り口には配膳ロボットが1台停まっていたが、電源そのものが落ちていて稼働していなかった。壊れたのか、まだ設定が終わっていないのか。

(2022.10.09)

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