
ふるさと納税の返礼品で「ALSOKのジビエ」セットをいただいた。
3種類の部位が入っていて、モモ、カタ、バラだった。(内容はランダムに変わるらしい。在庫確保が安定しないジビエならではだ)
これまで僕は、千葉県鋸南町に何度も足を運び、獣害について学び実際にわなや柵を作って設置してみるワークショップに参加してきた。

グルメ好きで「ジビエは好きだ」と思う人は多い。特にイノシシ肉は豚肉よりも野趣溢れていて人気がある。しかし値段が高く、なかなか手に入るものではない。
「とっとと害獣駆除して、安く大量流通させればいいのに・・・」
という意見は多いが、害獣最前線の現場ではそうはいかない実情がある。
そもそも、害獣駆除でメシは食えない。駆除をやっているのは、自分の田畑を守るために農家の方々が「仕方なく」やっている。「猟友会」があるじゃないか、といっても、彼らは趣味と実益を兼ねた職業ハンターではなく、本業の片手間でやっている人たちだ。
日本みたいに里山だらけの土地だと、うかつに猟銃を発砲するわけにはいかない。駆除方法はかなり限定されるし、いざ害獣駆除したとしても、それを食肉として活用するのはさらにハードルが高い。
というのも、ジビエを食肉として流通させるには、公設の食肉加工場に運び入れ、検査を受ける必要があるからだ。
山の中で仕留めた、100キロ超のイノシシ。どうやって運ぶ?引きずる?抱きかかえる?食肉加工場に運ぶ以前に、山から車道に引っ張り出すまでが重労働だ。
そういう悩みが尽きない害獣駆除に、企業として手を挙げたのが警備会社のALSOKだった。ALSOKは「人々の安全を守る」という考えの視野を広げ、イノシシや鹿から人を守るというところまでサポートするようになった。これはすごいことだ。
「新米警備員さんの特訓のためにイノシシと対決させるのでは?」
「特殊警棒の使い方を実践訓練するためでは?」
などと思われがちだが、「人の警備」の片手間に害獣駆除サポートをしているのではなく、大真面目に害獣駆除をサポートしている。その証拠に、自らがジビエ肉の加工場を作り、ALSOKブランドで肉を出荷している。
彼ら自らが害獣駆除をするのではない。駆除するためにはわなや猟銃の免許が必要で、それは地元の方々の役目。ALSOKは「イノシシが捕獲されたよ」と連絡を受けたら、回収しに現場に向かい、その後食肉加工して出荷するまでを担う。
ALSOKがそういうことを事業として手掛けるのは、あまり不思議なことではない。かつてSECOMが、コンピュータの安全を守るのも業務の範疇、ということでデータセンター事業を手掛けたりセキュリティ関連サービスを提供していた。それと一緒だ。
警備会社の重要な仕事の一つとして、「現金輸送」がある。電子マネーの普及により、今後現金輸送の業務はどんどん縮小が見込まれており、ALSOKとしては業務の幅出しが必要だったのだろう。
こういう取り組みがどんどん進んでいってくれると嬉しい。値段が高いのは仕方がないとしても、まずは「買いたい時に簡単にジビエが手に入る」気軽な状態になってほしい。
(2022.12.05)
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