2023年の僕は、「死ぬまでに日本百名山を全部登る」という目標に向けて再起動した。寒い季節のうちは、汗をダラダラかかない程度の低い山に登り、暖かくなってくるにつれて登る山の標高を上げていくつもりだ。
そんな寒い時期用の山として考えていたのが、神奈川県の三浦半島にある「大楠山」だった。標高は241メートルしかないが、海の近くにある山なので展望が良いらしい。
しかし、実際に登ろうと思っていた日は雨の予報だったため、結局登山は中止となった。かわりに、大楠山中腹にある産後ケア施設「マームガーデン葉山」を見学させてもらった。
このマームガーデン葉山は完全に富裕層向けに作られた産後ケア施設で、最低でも1泊あたり4万円する。高い部屋を選ぶと、10万円を軽く超える。それでも産後ケアという性質もあって、利用者の平均滞在期間は2週間というのだから衝撃を受ける。
出産だけでも50万円以上かかるというのに、その直後に100万円近く支払って産後ケアを受けるのだから、並の収入の職業だと無理だ。聞くと、やはり利用者の数割は中国や東南アジアにルーツを持つ、お金持ちの方なのだそうだ。こういう話を聞くと、日本が本当にだんだん格差が広がっていて、富める人は本当に豊かなんだな、と驚く。
高いお金が必要なだけあって、サービスは至れり尽くせりだ。赤ちゃんを看護師・助産師が常駐している新生児室に24時間いつでも預けることができる。出産直後で体力回復が必要なお母さんは、子どもを安全に預けながら睡眠を取ってもいいし、岩盤浴やエステを受けることもできる。なんなら、お見舞いにやってきた人たちとカラオケもできる。なぜなら、この施設はカラオケチェーン店でおなじみのパセラが運営しているからだ。
他にもすごい点は挙げるときりがないのだが、本題とは違うのでここまでにしておく。
そんなすごい施設を見学させてもらった後、僕らは車に乗って海岸線沿いまで下りる。目指したのは、ビーカーに入ったプリンでおなじみの「マーロウ」の本店だ。
この本店はプリンなどのテイクアウトをやっているだけでなく、レストランが併設されていて食事ができる。ここでお昼ごはんを食べようと思う。
そもそも、一番最初に僕が目論んだのは、「僕は大楠山を登りたい。でも、いしや弊息子タケは山に登りたいとは思わないだろう。だったら、僕だけ山に登り、その間いしとタケは山の麓にあるマーロウで美味しいものを食べて時間を過ごしてもらおう」ということだ。つまり、自分の登山に家族を巻き込もうとしていたわけだ。
それが、肝心の登山が中止になって、そのかわりに産後ケア施設見学とマーロウ本店での食事が残った。こんなはずじゃなかったんだけどなぁ。
しかも、天気は快晴。この天気だったら、山登りができた。もったいないことをした。
マーロウの前にはお客さんが大勢いた。人気のお店だ。
ただ、そこまで待たなくても自分たちの順番が来る様子だったので、僕たちは入店を待つことにした。
店頭には大量のビーカープリンが売られている。
「自家製燻製チャーシューと平敏ひじきのガーリックライス」1,700円。
ライスの上にひじきが乗っているというのが珍しいし、にんにくの風味が強くきいていて、上品とやんちゃの両側面を持つ料理。おいしい。
ただ、値段はさすがに高い。
いしは普段外食をあまりしないので、
「高いなぁ、頼めるものがないなぁ」と言いながらランチメニューの中でも比較的安い「ミート(こだわり三元豚)ソースのスパゲティ」1,300円を頼んでいた。
これも値段なりに美味しい。美味しいんだが、量はさほど多くない。
葉山という観光地だし、昨今の物価高だし、しかたがないと思う。でも、いしはまだぼやく。
「私の認識がバージョンアップしていないだけだと思うけど、昔の相場感からすると外食が高くなりすぎだ。これだったら家に帰って自炊、またはおにぎりを持って外出した方がいい」
その通りだと思う。外食を諦めるか、それとも物価上昇に追随できるように自らの給料を上げていく努力をしないと行けない世の中になった。僕らは過去30年、デフレに慣れすぎだったんだ。それは社会人としてのビジネスマインドに悪い影響を与えていたと思う。
残念ながら、50歳近い僕は今からスキルアップと給料増を狙うのが難しい。なので、まだ30代半ばで若いいしには、今からでもスキルアップを頑張って欲しい。僕は世帯所得のベースラインを極力守る努力をし、いしはさらなる上乗せを狙う、そういうフォーメーションを組んでいきたい。
せっかく美味しい料理を食べている最中なのに、お金のことをあれこれ考えてしまった。
食後はやっぱりマーロウのプリン。
二人とも、メインの食事だけで出費にビビっていた。ここでさらに値段が結構高いプリンを追加で頼むというのは財政規律が緩みすぎなのではないか?という議論を二人でした。でも、結果的に「マーロウに来て、プリンを食べないという選択肢はありえないだろう」ということになり、プリンを食べたのだった。
うん、うまかった。
高いランチを頼むのに躊躇していたけど、結局は美味しいプリンも我慢できなかった。外食費の値上がりは現実だけど、たまには贅沢を許して、口に合うプリンを食べるのも人生のスパイスだ!
(2023.04.16)
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