海鮮バイキングのお店が、物価高の苦肉の策でフライだらけになった話

上野と御徒町の間にある海鮮居酒屋が、ランチバイキングをやっていることは以前から知っていた。お昼どきになると店頭に行列ができているのを何度も見かけたことがある。人気店らしい。

いつか行こうと思っていたけどタイミングを逃し、ようやく今回訪れることができた。

ランチバイキング、45分で1,200円。

バイキングで45分というのは短いのではないか?という心配はいらない。なにしろ平日のお昼ごはんだ。前後に仕事があるのだから、45分でちょうどいい。もし「30分1,000円」という選択肢があるなら、僕はそっちを選ぶだろう。

なお、飲み放題が30分で450円という追加料金で設定できる。この界隈は昼から飲めるお店が多いが、昼から飲み放題をやっているお店というのは貴重だ。しかも、飲み放題メニューの中には生ビールも含まれている。

「生ビールを1杯飲んだら、もう450円の元が取れたも同然」と思う。でも、時間というのはあらゆる人に平等に与えられたものだ。ビールをぐびぐび飲んでいたら、食事がはかどらない。つまり、飲み物で元をとっても、食べ物で元が取れず、プラマイゼロということになる。

お店は大変だ。海産物の仕入れ価格が上がってしまい、これまでやってきたような刺身の提供が困難になってしまったそうだ。そのため、値段を下げ、揚げ物中心のメニューにしてランチバイキングを続行している。

お店はすごくすごく真面目にやっているのだけど、このランチバイキングを告げる看板は、「ギャグなのか?」と思ってしまう絵面になっている。なにしろ、揚げ物だらけで、茶色い料理だらけになっているからだ。

店名から鮮度の良い魚介類を提供するお店を想起させるだけに、この看板とのギャップがすごい。

でも、それはこのお店が良心的な経営をしている証だろう。昔の、刺身をはじめとする海鮮料理があった頃の料理写真を使い続け、実際の食べ放題は揚げ物中心だったら「看板に騙された」とお客さんは怒るだろうから。提供する料理の実態に合わせて看板を変更したのは、すばらしい。

ただし、その結果、揚げ物だらけの茶色い看板になってしまったけど。

安く料理を提供しよう、というお店の意気込みのあまり、客席はびっくりするくらい狭い。テーブル席を飛沫飛散防止用パーティションで区切っていて、肩幅よりちょっと広いくらいのスペースしかない。

身動きがしづらい。壁際に座り、自分の背後にはお茶のディスペンサーが設置されている僕のポジションだと、おかわりのために体の向きを変えて立ち上がるのが大変なレベルだった。

取皿、調味料、箸などは自分の眼の前に全て揃っている。

料理をほぼ一通り取ってきたところで撮影した写真。

右上に、刺身の小鉢がある。お店としては、せめて1皿でも・・・と努力をしていて、一人1皿1回限り、おかわりNGということで刺身がすでに盛られている状態の小皿を提供している。載っているのは、カツオのたたき、サーモン、ねぎとろ。

大皿には、イカのマリネやしめ鯖といった「加工された魚料理」、エビフライやアジフライ、白身魚フライといった「揚げた魚介」を盛った。そしてそれだけでなく、海とは全く関係のない、唐揚げや春巻きも。

お店の大変さを感じながら、料理を噛み締めた。無責任な立場である客としては、とても楽しめるお店だった。

それにしても、店のところどころで、平日のお昼なのにスーツ姿でお酒を飲んでいるお客さんがいるのには驚いた。今日はもうお仕事、終わりなのだろうか?

そういうお客さんは、食べ放題だからと料理を食べるのに必死にならず、優雅にお酒を飲み、ゆっくりと酒のつまみとなる料理を食べていた。ああ、なんだか勝ち組っていう印象を僕はその人たちに感じた。

(2023.06.22)

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