ニッカウヰスキー宮城峡蒸留所を見学してきた

飲食工場であれ機械工場であれ、なんでも「工場見学」というのは楽しいものだ。コロナ真っ盛りの期間、各工場では一般客の見学を停止しているところが多かったが、ようやく最近は見学を再開しつつあるようだ。

弊息子タケの教育のために、という名目をつけて、僕ら夫婦も工場見学に行ってあれこれ見て回ろうと考えている。

なお、これまで見た中で一番エキサイティングだったのが、製鉄工場だ。すごい熱気と音、そして巨大な敷地。すべてが規格外だった。

今回訪れたのは、ニッカウヰスキーの宮城峡蒸留所だ。

ニッカといえば、北海道の余市蒸留所が有名だが、仙台の奥、作並温泉の近くにも蒸留所が存在する。

ニッカは、余市で作られたウイスキーと宮城峡で作られたウイスキーをブレンドし、複雑な味と香りのウイスキーを作ったりしている。

工場見学そのものの話は割愛するが、試飲含めて70分のコースでそれなりに楽しめた。

はっきりいってしまえば、サントリー白州蒸留所の工場見学ほど「おお、すごい」という驚きは感じなかったが、とにかく自然豊かなのがいい。お酒を作る場所は、蒸留酒でも醸造酒でも水が命だ。なので、環境が良い。弊息子タケは、敷地内の栗の木の下で、人生初のいがぐりと対決していた。

工場見学の最後20分は試飲時間となる。

20分間飲み放題、というわけではなく、予め用意された3種類のウイスキーを試飲する。

用意されていたのは、アップルワインというブランデーとりんごワインを混ぜたもの、スーパーニッカ、宮城峡。

ニッカといえば、ヒゲのおっさんが強烈な個性を見せつけるロゴデザインのブラックニッカのイメージが強い。というか、僕はほぼそれしか知らない。で、このブラックニッカは4,000mlのペットボトルや、1,800mlの紙パックといった商品も売られていて、そのせいで「ニッカ=安酒を作るメーカー」という印象がある。

今回の工場見学で、「いや、それは偏見だよ」ということを学んだ。やっぱり工場見学は大事。

なお、ジャパニーズウイスキーの最大ブランド、サントリーだってトリスとかレッドといった価格を抑えたお酒をラインナップで揃えている。4リットルペットボトルに詰めて売っていたりもする。角瓶に至っては5リットルの商品もあるくらいだ。

結局、業務用として使われるので大きな容器のニーズがあるのであって、アルコール依存な人たちが「コスパが良い飲み物」として自宅に常備するためのものではない。なので、デカい容器のウイスキーだからといって、安酒ではない。

でも(少なくとも僕にとっては)サントリーに安いブランドイメージがないのは、やっぱり山崎、響、ローヤル、オールド・・・といったお酒のイメージが強いからだろう。

ニッカはニッカなりに、「竹鶴」「余市」「宮城峡」といったウイスキーがある。僕はこれらのお酒を口にする前に断酒してしまったので、残念ながら良いウイスキーの味というのを知らないし、以前飲んだ良いものについても全然記憶に残っていない。

お酒が飲めない僕は、バヤリースのりんごジュースを飲む(ニッカはアサヒグループの子会社)。そのついでに3種類のお酒の匂いを嗅がせてもらったが、良し悪しがさっぱりわからないのには参った。

度数が強い蒸留酒なので、アルコールの香りが鼻にツンとくる。この香りだけだと、飲んでみて美味いのかどうか、想像力が働かせられなかった。清酒やビール、紹興酒といった蒸留酒のほうが、まだなんとなく味の想像がつく気がする。

このウイスキー飲み比べをやったいしは、せっかくだからと水割りにはせず、原液を舐めたあとチェイサーの水を飲む、ということを繰り返していた。「味はどう?」と聞いてみたら、「キツくて全然わからない」とのことだった。妊娠以降、お酒を飲む機会が殆どなくなってしまったのでお酒に対する感度が鈍くなった、ということもあるだろう。

試飲会場の片隅に合った自販機をよく見ると、ほや、牡蠣、サメといった海の珍味が売られていた。そういえばウイスキーの試飲でお口直しをするものがない。必要な人は珍味を買ってくれ、ということなのだろう。

試飲会場の隣は売店になっていて、ウイスキーが売られていた。でも、庶民的なブラックニッカは売っていない。まるで存在すらなかったかのようにされている。工場見学は、ニッカの高価格帯ウイスキーのブランドイメージを作るための場として機能しているらしい。

ブラックニッカは近くの酒屋さんで買ってくれ、ということなのかもしれない。

なお、売店は写真撮影が禁止されていた。あっちこっちに写真撮影禁止の警告表示が出ていたので、本気で写真撮影されたくないらしい。自社製品のPRになるのになぜ?と思うが、おそらくジャパニーズウイスキー人気に目をつけた転売ヤーの手に渡るのが困るからだろう。商品の品薄状態はまだ続いているようで、棚がカラになって売り切れている商品がいくつもあった。高いお酒なのにびっくりだ。

一方、売店の脇にはニッカのお酒をワンショットで楽しめるスタンディングバーがあって、ここは工場見学をしなかった人でもニッカ製品をあれこれ楽しむことができるようになっていた。

値段はとても安く、ワンショット200円から用意されている。たくさんの種類のお酒が用意されているけれど、その大半が300円、400円で飲める。量が少ないけれど、度数が40度近くあるお酒たちだ。飲み比べをやったら、1,000円もあれば酔っ払ってしまうだろう。

いしはこのお店で二番目に高いお酒を頼んで飲んだ。シングルモルト宮城峡アロマティックイースト。「二番目に高いお酒」なのはたまたま一番高いお酒をメニューから見落としていたからだ。二番目に高い、といっても900円。

こんな少量で900円だなんて、高い!・・・とは思わない。なにしろ、僕らは先程まで70分間の工場見学をしてきたからだ。ウイスキーのありがたさを教えられたばかりなので、財布の紐が緩んでいる。あと、カウンターにいたバーテンさんから「これが最後の1杯ですよ。もう入荷はありませんよ」と声をかけられたのが決め手となった。「これが最後」という言葉に、人間は弱い。

単なるその場の売り文句だろう、と思っていたのだけど、後でこの商品を調べてみたら本当に最後の一杯だったようだ。プレスリリースを見ると、2022年9月に700ml瓶で限定1万本販売だったことがわかる。販売開始からほぼ1年が経過しているので、もう在庫切れになってもおかしくない。

https://www.asahibeer.co.jp/news/2022/0830.html

値段は税込22,000円。かなりの高級酒だ。こんなの、飲食店ではとても飲めない。

ワンショット30mlだとすると、1杯900円というのは定価よりもやや安い、という値段設定になっている。100円未満端数切り捨て、ということで900円という値付けはちょうどいいかんじだ。

お酒を飲めなくても、ウイスキーの蒸留所見学は楽しかった。

(2023.09.16)

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