萎縮する食べ放題

とても評価の高いパン屋が営むレストランが八重洲にあって、そこでは自前のパンが食べ放題なのだというネット記事を読んだ。

美味いパンというのは、僕らが日常的に食べているパンと似て非なるものだ。そんなパンが食べ放題というのは嬉しい。腹いっぱいパンを食べたい、というよりも、いろいろなパンをちょっとずつ食べられるというのが楽しみだ。早速お店を訪れてみた。

店頭のメニューを見て、思わずたじろぐ。

「銘柄鶏 骨付鶏もも肉のグリル(1本)」2,800円。

ほかにも、メニューによっては4,800円なんてものもある。

間違えてディナーメニューが掲示されているのかな?と思ってもう一度よく読んだが、ちゃんとランチメニューだった。

しかもメニューの中には、「自家製粉パン食べ放題」が含まれていないものもある。安いメニューに飛びついたら、肝心のパンが食べられないこともあるので注意が必要だ。

結局、おっかなびっくり、このお店のランチメニューで一番安い「本日のメインサラダ」を選んだ。これでも、1,980円。

自家製粉パン食べ放題、スープ付き。

「食べ放題」と言われても、そもそもかなり高級なのでお得感はない。

でも、このお店は繁盛店らしい。入店時点で「RESERVED」の札が置いてある机が多かったが、12時になったらそれ含めてすべてのテーブルが埋まってしまった。お昼ご飯に最低でも1,900円を払って平然としている民族がここにいるぞー。

注文したサラダがでてくる前に、食べ放題のパンがでてきた。6種類のパンが盛り合わせになって、ちょっとずつ。

うん、美味しい。とても美味しいのだけど、これがなんのパンなのかがよくわからない。パンのショーケースに行って、カットする前の実物を見てみたい。

「本日のメインサラダ」。

バジルチキンが散りばめられているサラダで、みずみずしくて美味しい。とはいえ、これがメインディッシュですよ、これでお腹いっぱいになってください、というのは厳しい。僕が今熱心にダイエットに取り組んでいるならともかく、そうではないので物足りなさがあった。健康に留意している女性なら、これでも満足行く質と量だと思う。

せっかくなのでパンのおかわりをお願いする。

すると、バスケットにちょこんとパンが4枚、のせられてやってきた。

僕はこのお店のパン食べ放題の全貌がわからない。何種類あって、今何を食べていて何を食べていないのか。そしてどれが一番自分の好みにあうのか。よくわからないまま、頼めばパンがでてくるというスタイルにはちょっと困惑した。

できれば、自分でパンを取りに行くビュッフェスタイルがいいなぁ。

でもこのお店がパンをケチっているからこういうオペレーションになっているわけではない、というのは間違いない。提供されたパンはどれもほんのりと温められており、ふんわりと食べやすい状態に仕上げてあった。また、カットしっぱなしのせいで乾燥してパサついていることもない。とても美味しくパンが食べられたのは間違いない。

とはいえ、「お高い値段を払って、美味しいパンを食べるぞ!」という思惑は外れた。もう一回、あともう二回とおかわりをしても良かったのだけど、それはしなかった。というのも、「もうこれでいいや」という気になってしまったからだ。

面白いもので、こういう食べ放題というのは下世話な雰囲気のお店ほど、どんどんおかわりしたくなる。たとえば料理がカウンターに山積みになっていたり、お店が雑然としていると、食欲が増す。一方で、高級感ただよう雰囲気のお店だと、食欲が減衰する。「お行儀よくしなければ」という理性が、食べ放題へのモチベーションを削ぎ落とすらしい。

(2024.07.02)

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