自分のテーブルにトースターを持ってきてパンを焼く店【セントル ザ・ベーカリー】

銀座の最果て、地名で言うと「銀座」と「京橋」の境目くらいにあるパン屋さんが面白い、ということを知った。

いつものことだが、僕の情報源は「SNS」ではなく「Googleマップ」だ。SNSは、X、Facebook、Instagram、TickTokなどあらゆるものをやっていない。LINEもSNSと呼ぶなら、それだけは仲間とのチャット用に使っている。

ある日Googleマップで銀座界隈を眺めていたときに、偶然見つけたお店、それが「セントル ザ ベーカリー」だった。

高級食パンのブームが沈静化して久しいが、このお店はその高級食パンを売るお店だ。

銀座まで行って高級食パンを買いたいとは思わないが、興味を惹いたのが、併設カフェのメニューだった。

このお店で扱っている3種類のパンの食べ比べができる、というのがいいし、さらには「好きなトースターを自分の卓上に持っていき、目の前でトーストを焼いて食べる」というスタイルだというのにも惹かれた。

「好きなトースターを選ぶ」って、何だそれ?トースターごとに焼き加減が異なるのだろうか。

お店に行ってみた。店頭に行列ができていたので身構えてしまったが、その列はパンを買って帰る人たちの列だった。イートインのほうは待ち時間ゼロで入店できた。

店内に入ると、なるほど、棚にたくさんのトースターが並んでいる。

とはいえ、ビンテージなトースターがあるというわけでもなく、「なんだこれは?」と微笑んでしまうような変な形をしたトースターがあるわけでもない。全部、愚直なトースターだった。

それにしてもトースターってこんなにデカいものだったんだな。

たぶん我が家にトースターがあったのは、僕が幼稚園だか小学校低学年だかの頃までだ。それ以降はオーブントースターにその立場を譲っている。単機能家電は収納に場所を取るので、多機能なオーブントースターの方が勝っていたからだ。

お好きなトースターを選んで、と言われても、僕としては特に何かwillがあるわけでもない。

「さてどうしよう」と悩む。「高カロリーで短時間でパリッと焼き上げます」とか、「蒸らしの工程を加えてふっくら焼きます」といった商品特性はなさそうだし。

結局、今はこんな色の家電って滅多に見ないよね、というクリーム色が混じった緑・・・色?のトースターを選んだ。

卓上に置いたら、やっぱりデカい。これは趣味の世界だ。

自分の席の目の前に置いたら、店員さんがやってきて右脇にトースターをセットしなおしてくれた。目の前はパンを置くので邪魔、ということらしい。ああ、なるほど。

値段はかなり高い。

独身を謳歌している人なら問題ない値段かもしれないが、家族持ちだとギョッとする。だって食パンでこんな贅沢をしてよいのか?」と家族の顔が目に浮かぶ。

お目当ては「セントル トーストセット」。食パン2切れないし3切れのセットで、ジャムで食べるか、バターで食べるか、ジャムとバターで食べるかによって値段がかわる。2024年11月時点で、1,320円~2,090円。

僕は「バターセット」の食パン3個で、1,430円のものを選んだ。

食パン3枚も食べるから割高なんでしょう?単品のメニューならば安いのでは?と思われるだろうが、シュガーバターブレッドで1,100円、チーズトーストで1,650円などと、どれも値段は容赦がない。

これにスープをつけると、2,000円近くになってしまう。「たかがトースト」と言ってはいけないが、やっぱりトーストに大きなお金を払うのには躊躇してしまう。

で、そのトーストセットだが、

国産小麦粉を使用した角食パンJP、
北米産強力粉使用、ブルマンNA、
北米産強力粉使用、イギリス食パンEB

の3種類がある。

このうち、ブルマンは「焼いても生でもおすすめ」、イギリス食パンは「しっかりカリカリに焼くのがおすすめ」なんだそうだ。

バターも3種類が用意されていて、
「フランス産エシレバター」「自社牧場 北海道"美瑛ファーム"産バター」「国産メーカーのバター」
だ。

届いたバターセット。牛乳が1杯付く。

パンはどれも美味しい。でも、食べながらメモを取っているわけではないので、今ここで文章にしたためようとしても、そんなに記憶がない。「どれもおいしかったです。まる。」という小学生並なコメントしか残せない。

でも、飽食の時代と言われる今って、もはやそういう時代なんだと思う。どれも美味い。美味いのは当然。で、そこからさらに美味さを追求して高いお金を払うよりも、「そこそこに美味いもの」を食べても十分幸せなのではないかと。

「あのお店の◯◯は美味しいらしいよ」「じゃあ行ってみよう!」というのは「行く」という動作が楽しいのであって、メシのうまさはもはやオマケなのではないか、とさえ思う。少なくとも齢50を迎えた僕は、そういう心境だ。

あっ、でもエシレバターはとても美味かった。他のバターと比べても印象に残るバターだった。さすがだ。

3つ並ぶバターのうち、2番目は「自社牧場産」の牛乳を使っているとのこと。自分のところで牧場を持っているってどういうことだ?どんな組織なんだ?と不思議に思って調べてみたら、このお店、有名なベーカリー「VIRON」の食パン専門店であるということを後で知った。なるほど。

VIRONはいいぞー。僕はバゲットを食べるなら、VIRONが一番うまいと思っているくらい、好きだ。

さてトースターの出番ですよ。

提供されたパン3枚のうち、1枚しか出番がない。なので、わざわざ卓上にトースターを置くのはオーバースペックではある。しかし、厨房で焼いたものを卓上で運んでくるうちにトーストが冷めてしまうことを考えれば、目の前で焼くというのは美味しさに最大限配慮した結果だろう。

カリカリでうまかった。うん、そういう印象。

良いお店だったし、美味しかった。しかし、トースト3切れで1,000円以上というのはそう簡単にできることことじゃない。「家族を連れてくれば罪悪感はなくなる」とも思うが、そうすると出費そのものは家族分増える。それはそれで厳しい。

(2024.11.08)

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