台東区の鷲(おおとり)神社の酉の市に行くのが、我が家の恒例になっている。
縁起物の熊手を買うことはないのだけど、賑やかな雰囲気を見るのが楽しいので、毎年訪れることにしている。
ちなみに鷲神社は参拝しようにも、ものすごい長蛇の列だ。お金を払いたい(お賽銭)人が大行列を作って数十分待ち、って日本は景気が良いんだな、と感心する。いや違うか、景気がいまいちだから神頼みをするのか。
僕らは、鷲神社の数軒となりにある、長国寺というお寺にお参りする。鷲神社と境内が(ほぼ)繋がっていて、こちらにも熊手を売る屋台が数多く並んでいて、酉の市の雰囲気が楽しめるからだ。どっちの方がご利益があるとか、関係ないだろうからお寺に参拝で僕らは満足だ。
で、本当はこの神社・お寺周辺の路地中に展開されている屋台を見て回り、食べたいものを食べるということをやりたい。しかし、どうも「買いたい、食べたい」と思える料理、お店がない。諦めて、ごった返すお祭りエリアを脱出した。
屋台の料理は物価高の影響を受け、かなり高くなってしまった。「食べ歩きしたいな」と考えている、僕ら来場者のニーズと合致しない価格帯になってしまった。ちょっとした料理を買っただけで700円、800円というのはザラだ。これが一人客ならまだしも、僕らみたいな家族となると、お腹いっぱい食べ歩こうとするとかなりの出費になる。
あと、店の数が多すぎる。たとえばベビーカステラを食べたいな、と思ったとして、あっちにもこっちにも似たようなお店があるので、「もう少し様子を見よう・・・」と考えているうちに、結局決めきれず、面倒になって買う気が失せる。
よっぽど、「祭り」ではなく「イベント」に出品しているフードトラックの料理の方が買う気になる。オリジナリティがあって、「ここで買っておかないと!」という気になるからだ。
で、屋台飯は諦め、どこでお昼ごはんを食べようかと悩んだ結果訪れたのが近所のここ。とんかつ屋の「河金」。
なんでも、元祖かつカレーの店らしい。大正7年創業。
以前からお店の存在は知っていたのだけど、一度も訪れたことはなかった。
この手の「元祖◎◎の店」は、気をつけなければならない。
元祖だからといって、その料理が美味しいというわけではないからだ。むしろ、その料理を伝承するなりパクるなりしたお店のほうが、改良を加えてクオリティが高い可能性がある。
それでも今回敢えて「元祖かつカレーのお店」に行ってみたのは、「元祖、という料理を食べたい」というスケベ心があったからに他ならない。.
よくある、「一回食べたらもういいや。食べた、という実績が自分にできればそれで満足」というパターン。
このお店のかつカレーは、お重に入ってでてくる特徴がある。「河金丼」という名前で提供される。
「並」「ヒレかつ」「ロースかつ」の3種類があり、「並」というのはもも肉が使われているとのこと。ブタのもも肉はあまりメジャーな部位ではない。
河金丼ロースかつ重、1,200円。
カツに使う肉を下ごしらえする際に出た端切れ肉であろう肉がたっくさん入ったカレーで、嬉しい。
カレーは、「今どきこんなカレー、久しぶりだ!」と驚くレベルの、ドロっと・・・というよりボテッとしたとろみのカレー。むしろ新鮮に感じて、これはこれで良かった。
お重にはご飯、千切りキャベツ、カツ、そしてカレー。福神漬が少々添えられている。
元祖かつカレーの店、といっても、最初っから今目の前にあるスタイルでかつカレーが提供されたとは書いていない。当然、年月の経過とともに少しずつ改良が加えられているだろう。このお店は、「元祖かつカレーを出すお店」なのではなく、「かつカレー元祖のお店」なのだから。
じゃあ僕はこのかつカレーをどういう心境で食べればよいのだろうか。神妙な気分になるでもなく、かといって雑にかきこむわけでもなく。ひたすらもくもくと食べ進め、ごちそうさまをした。
(2024.11.17)
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