Y1000。
一時、一斉を風靡した、ヤクルトの乳酸菌飲料だ。
ヤクルトレディが宅配しているのは「ヤクルト1000」という名前で、店頭販売されるものは「Y1000」と名前が違う。でも中身は同じ。なんで流通経路で名前を変えないといけないのか、事情を僕は知らない。
これを飲むとヤクルト秘伝の乳酸菌・シロタ株1000億個が腸内に届き、その効果で睡眠の質が上がるのだという。
「本当に睡眠の質が上がった!」という人、「ンなアホな」という人、「寝る前に甘いジュースを飲んでいるんだから、血糖値が上がって眠たくなるのは当然」という人、様々な意見や感想が出回った。その結果、信じる人信じない人入り乱れ、この商品は飛ぶように売れた。
売れすぎて、どこを探しても売っていない状態になった。
昔っから乳酸菌飲料は存在するが、こんな事態に発展したのは初めてのことだろう。
「テレビのワイドショーで『体に良い』と報じていたので、それを見た人が買い占めた」というなら、すぐに飽きられて在庫がダブつくはずだ。でも、この商品の人気は根強く、話題になってから数ヶ月が経ってもスーパーの商品棚はカラ、という状態が続いていた。
おそらく、一部でも効果を実感した人は、それ以降リピーターになって買い続ける。そのため、なかなか生産が追いつかなかったのだろう。
スーパーなどの小売店では品薄、というか入荷なしの状況が続いている時でも、街を自転車で疾走するヤクルトレディの元にはヤクルト1000の在庫がある、という噂があった。Y1000は品薄でも、ヤクルト1000ならあったらしい。
ヤクルトレディを呼び止めたとき、「ヤク・・・あります?」とニヤリとして声をかけると、レディも「ありますよ」とニヤリと笑みで返す、なんて話を聞いたことがある。「ヤク」で通じるヤクルト1000。そりゃそうだ、普段お買い上げしていない人が急に町中で呼び止めるんだから、今巷で噂のヤクルト1000がほしいに決まってる、とレディはすぐに察する。
そんな逸話があるヤクルト1000、およびY1000だが、2024年12月1日時点ではJR駅のホーム上の自販機でも売っていた。しかも2列も使った、堂々たる売りっぷり。ようやく需要と供給のバランスが取れてきたらしい。
「へえー」と感心して眺めたが、敢えて買うことはしなかった。だって今は朝。これから新幹線に乗って旅に出るというのに、ぐっすり寝るわけにはいかない。
良くも悪くも、「Y1000」はサプリのグリシンのように「睡眠サポート」の印象が強くついている。だから、朝買う人はあんまりいないんじゃないかと思う。
(2024.12.01)
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