アクセルとブレーキを同時に踏むサラダバー(ただし食べ放題ではない)【遊猿】

最近、夫婦または家族で外食をする際のお店選びは、ほとんどパートナーのいしに任せている。

いしのほうが働き方の自由度が狭く、「今日は仕事の出先で外食」などと食事の裁量がないからだ。いつも家から手作りおにぎりなどを持参し、それを慌ただしく頬張ってすぐに仕事に戻る、といった日々らしい。だったら、せっかくの外食のときにはいしの行きたいお店をチョイスしたほうがいい。

で、彼女が唐突に選んだのが、「遊猿」というお店だった。四谷三丁目または曙橋から歩いてしばらくの距離にある、お店。中華料理店だ。

ランチメニューは9品+デザートの杏仁豆腐。

杏仁豆腐を除く料理はオール1,400円。

東京都心の物価とはいえ、やや高いな?と思う。それには理由がある。

このお店は料理が美味しいこともさることながら、サラダバーがあるからだ。

サラダバーがあってこの値段なら、納得だ。

ただ、このサラダバーが独特だ。

自分で平皿を手に取り、セルフでサラダ類を取るのは毎度お馴染みの光景。しかし、料理が並ぶテーブルの前に黒板が掲げられており、「食べ放題ではありません」と書いてある。ほほう、これは面白い。

せっかくなので、書いてあることを転記する。

  • サラダのおかわりは1回までです。
  • 一つの物を大量に取るのはやめて下さい。
  • バランス良く取りましょう。
  • ニラ玉はお1人さまレードル1回にして下さい。
  • ランチは40分制です。取りすぎないようにして下さい。
  • 食べ残し、取り過ぎは絶対にやめて下さい。
  • ご飯を残さないで下さい。
  • 以上のルールを守れない方は追加料金をいただきます。

ここまでお店側から注文があるサラダバーは初めて見た。

でもこれを見て、「うるせー」とか「気難しい店主だな」といったネガティブな感情は一切起きてこない。ここまで書くくらいだから、これまでよっぽど困ったことがあったのだろう。それでもなんとか、このセルフサービスを続けているのだろう。

そういう過去が想像つくので、むしろお店に同情と感謝の気持ちが湧いてくる。

お店によっては、お客さんを性悪説で捉えている感満載の注意書きを張り出しているところもある。それはそれでお店に同情するけど、やや反発したい気持ちにもなる。

それがどうだ、このお店の長文警告は、まったく反発する気にならなかった。だって、注意書きが細かすぎるから。

「ニラ玉はレードル1回」とか「バランス良く取れ」とか、お母さんから注意されたみたいな内容だ。だから、「はーい、わかりましたー」と素直な気持ちになれるのだった。

きっと、ニラ玉をごっそり持っていった客とか、困った事例が過去に何度もあったんだろうなー、と想像がつく。

「食べ切れる量だけ盛ってください、食べ残さないでください」という警告表示を出すお店は多いが、漠然としていて、客全員を疑ってかかっている印象を与えてしまう。しかし、「頼む!ニラ玉は!ニラ玉はたくさん取らないでくれ!」みたいな具体性があるお願い文だと、そんな悪い印象がない。

ちなみにここまで書かれているニラ玉だが、ふわふわの玉子の状態で提供したいというお店の意向があってか、作り置きをほとんどしていなかった。在庫がなくなる都度、少量ずつ追加していた。確かにこのこだわりようだと、ニラ玉大量略奪が起きるとお店もお客も困る。

このお店の名物は油淋鶏だそうだが、実際とてもおいしかった。肉は柔らかく、衣はパリパリ。甘酢をかけているのにこの衣の食感の楽しさはなんでだ?と思えるほど、良い食べ応えだった。

そしてサラダバー。お店の迷惑にならないように盛った。こういう警告が出るだけあって、どの料理も美味しい。サラダバーといっても、ステーキレストランにあるような「キャベツ、レタス、ブロッコリー、コーン・・・そしてドレッシング」というタイプのものではなく、野菜をメインにしたいろいろな料理が並んでいるものだった。これだけでも食事として成立するくらいだ。

なお、注意書きの黒板には「サラダのおかわりは1回まで」と書いてあった。これは、最初1回目を食べたあと、1回おかわりできますよ・・・という解釈でいいよね?最初1回の盛り切りで終わり、ということじゃないよね?だって、「おかわりは1回」と書いてあるから。ドキドキしてしまった。

世の中には性善説に立った客商売をやっているサービス業がたくさんある。その性善説を裏切らないように、僕ら消費者は謙虚な気持ちでそういったサービスを利用したいものだ。

(2025.05.23)

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