はるか昔から、「俺の会」という飲み会を続けている。
昔は「定期開催」だったが、コロナ禍とテレワーク中心の生活を経て、いまは不定期開催が定着した。
年を重ねるごとに、人は自然と交友範囲が狭まっていく。男性なら特にそうだ。地域活動や趣味の集まりに参加しない限り、びっくりするほど友人関係は先細っていく。
喧嘩別れしたわけではない。ただ、みんな子育てや仕事に追われ、時間が合わなくなっていくだけだ。
だからこそ、まだ30代くらいの若い人たちには声を大にして伝えたい。
「今の仲間を大事にしろ」と。
幹事役に任せきりにせず、持ち回りで役割を回すなど、グループが持続可能になる工夫をしておいたほうがいい。友情も組織運営も、意識しなければ自然消滅していく。
僕ら昭和世代と違い、今の若い世代はSNSで常に誰かとつながっている。それでも、友達づきあいは「意識して維持するもの」だと知っておくべきだ。
「俺の会」がここまで続いているのは、「会」という形を与え、名前をつけたからだと思う。
人の集まりにフレームを与えると、不思議と関係が長持ちする。なんとなくの集まりでは、やがてフェードアウトする運命にある。
もうひとつの理由は、明確な「会のテーマ」があったこと。
それが、「俺の●●」シリーズの店を巡ることだった。東京を中心に展開するこのレストラン群を順に訪ね歩くーーこれが「俺の会」のおきてだ。人と場所の枠が決まっているので、あとは日程調整さえできれば次回が自然に決まる。

今回訪れたのは、新宿歌舞伎町の「俺の炉ばた」。比較的新しい店舗だ。
正直なところ、そろそろ「俺の●●」巡りは卒業でいいかな、という空気もある。悪い店ではないが、久しぶりに会う仲間とゆっくり話すには、あまりに騒がしい。
「俺の●●」はもともと、立食でフレンチやイタリアンを出すスタイルだった。ぎゅうぎゅう詰めの客席、高回転率重視のビジネスモデル。その名残なのか、今も席間は狭く、がやがやと騒がしい。同じテーブルの仲間の声が聞き取れないこともあるくらいだ。
さらにミュージックチャージを取ってジャズの生演奏をする店まである。うるさいからやめてほしい、と思ってしまうのだが、滞在時間が長くなった分の収入を補いたいのだろう。
コロナ禍の頃、ある店舗のマネージャーに「生演奏がなくなったんですね?」と聞いたことがある。「はい、やはり静かな方がいいというお客様も多くて…」という答えにうなずいたが、コロナ明けにはしっかり復活していた。
さて、「俺の炉ばた」はどんな店なのか。フォアグラやロブスターといった“俺の”らしい豪華食材が並ぶのだろうか。興味津々で予約を入れた。
思えば昔、「俺の●●」全盛期には予約が本当に取れなかった。4名以上で入れる店は少なく、幹事泣かせだった。
二つの予約を入れて電話で「隣同士にしてもらえますか?」と交渉するのも日常茶飯事だった。
いまは、そんな苦労もない。予約も取りやすく、人数制限も緩い。時代は変わった。

今回、「俺の炉ばた」を予約する際にもっとも驚いたのは、「飲み放題付きコースメニュー」が存在したことだった。
えっ、アラカルト中心じゃなかったのか?と二度見したうえに、「飲み放題」という文字にさらに目を疑った。
というのも、「俺の●●」シリーズの店は、これまで飲み物の値付けがやや高めだった印象がある。
料理はフォアグラなど高級食材を使っているので納得できるが、ドリンクは正直“割高設定”だと思っていた。
それが今回は飲み放題にできるという。お酒好きには、まさに極楽だろう。
ちなみに、8品のコース+飲み放題で6,000円。価格としてはかなり良心的だと思う。
店に入ると、案内されたのはまさかの個室。今回は5名だったので、ちょうどいい広さだった。
まるで居酒屋じゃないか、というのが第一印象。「俺の●●」らしさはまったくない。
とはいえ、結果的にはそれが大正解だった。
静かな個室で仲間とざっくばらんに話ができ、久々の再会を心から楽しめた。
やはり、ワイワイとした大箱の店は、久しぶりに会うメンバーには向かない。
日常的に飲む相手とはそれでもいいが、久しぶりの顔ぶれには、やっぱり落ち着いた空間が一番だ。
ただ、個室であるがゆえに「炉ばた」感は皆無だった。
暖簾には「俺の炉ばた」とあるが、実態は完全に居酒屋。
これでは「俺の●●」を名乗る意味が少々薄い気もする。
かつての「俺の●●」は、超一流店からシェフをヘッドハンティングし、その顔ぶれを店頭で大々的にPRしていた。
「この人が厨房にいます!」という誇らしげな演出が売りだった。
しかし、この店にはそうした“看板シェフ感”は一切なかった。
飲み放題メニューにはスパークリングワインが含まれており、そのあたりはさすが。
ただ、「俺の泡」などブランドを冠した特別なドリンクはなかった。
他の飲み物はハイボールや焼酎など、いたって普通。
お酒を飲まない僕としては、ノンアルコールビールが選べなかったのが唯一の残念ポイントだ。
以下は料理の写真。これとは別にデザートも出てきた。






どれも間違いなく美味しい。
ただ、見てのとおり、多くの料理が「炉ばた」でもなければ「俺の●●」らしくもない。
味もサービスも悪くないし、価格も立地を考えれば良心的。
何ひとつ不満はないのに、どこか「どうしちゃったんだろう?」と思わせる業態だった。
とはいえ、気になるのは次の展開。
すぐ近くに「俺のステーキ」が新しくオープンしたらしい。
次はそこへ行ってみようと思う。
事前情報はあえて仕入れず、まっさらな気持ちで店の“今”を確かめに行きたい。
(2025.10.01)

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