
先日、都内の中国料理店へ行った。
「ガチ中華」なんて言葉を今更使うのがタルくなるくらい、2026年の東京都心は中国人による中国料理店で溢れかえっている。
かつて、現地人による外国料理店といえばインド・ネパール系が先行していたが、あちらはまだ「日本人に歩み寄ろうとするフシ」があった。
その証拠が、本国ではあまり食べないという「ナンのデフォルト化」だ。
日本人はとにかくナンが大好き。チャパティと言われてもテンションは上がらないが、チーズナンなら小躍りして喜ぶ。そういう日本人の「仕様」を、彼らはよく理解していた。
一方、昨今のガチ中華は潔い。
中国人による、中国人のための料理。そんな店がザラにある。
入店するなり中国語で声をかけられ、メニューも漢字の羅列。日本語メニューも一応あるから途方に暮れることはないが、アウェイ感はなかなかのものだ。
こうした店、とにかく「廉価」なところが多い。
特にランチ。「この立地、このボリュームで、その値段か?」と二度見するような店に遭遇し、驚きと疑いと喜びが入り混じる。
いくら同郷ネットワークがあるといっても、食材費や光熱費、家賃が日本人より安くつくわけではあるまい。
なぜこんなに安いのか。それはずっと、僕の中で小さな謎だった。
お会計で、さらに「謎」をみかけることになる。
中国系のお店なので、当然WeChat PayやAlipayが使える。そして、それらと提携しているPayPayでの決済も可能だ。
「じゃあPayPayで」
店員さんに伝え、店員さんから提示されたスマホ画面に表示されたQRコードをスキャンする。が、決済が通らない。
おっと、これはどうしたことか。
よく見ると、スマホ画面のQRコードには、個人名と個人の顔アイコンがバッチリ表示されているではないか。
・・・えっ、これ、店への支払いじゃなくて「個人への送金」なの?
僕はPayPayを経由したクレジットカード決済を試みていたのだが、この店は「友だちへの個人間送金」という形をとっていた。
クレカからの個人送金は不可。それがPayPayの仕様だ。残高チャージをしていない僕の決済が弾かれるのは、至極当然の帰結だった。
結局、財布から現り出した現金で支払いを済ませたのだが、いやあ、びっくりした。
これまで数え切れないほどQR決済をこなしてきたが、飲食店で個人アカウントに直接送金しろと言われたのは初めての経験だ。
なるほど、そういう「やり方」があるのか。
つまり、だ。
ここで相手のアカウントに飲食代を「送金」した場合、それはお店の売上として日本の税務署は捕捉できるのだろうか?
いや、おそらく不可能に近いだろう。
もちろん、この店が脱税していると断定するつもりはない。店主が極めて誠実に帳簿をつけ、確定申告を行っているかもしれない。
しかしそれは、あくまで個人の良心に委ねられた砂上の楼閣だ。その気になれば、いくらでも鉛筆をナメナメできてしまう構造がそこにある。
通常、個人商店であっても正規のキャッシュレス決済を導入すれば、アクワイアラ(加盟店管理会社)を経由してデータが残る。お上の追跡も容易だ。
ところが「中国系アプリの個人間送金」となると、話は別だ。
どうすればこれが正しく国内に納税されるのか。いや、そもそも納税させる手段があるのか?
繰り返すが、僕がお邪魔したお店がが怪しいと言いたいわけではない。
ただ、目の前にぽっかりと開いた「抜け道」の存在を感じてしまい、なんともいえない気味悪さが残った。
(2026.02.15)

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