「20世紀最後の巨匠」とピカソが絶賛したというバルテュスの大回顧展。
そんなスゲー人なのに、名前すら聞いたことがない。
パンフレットや看板には、パンチラ・・・というよりパンモロ状態でうたた寝している女の子の絵。
エロくはないが、かといって看過できない、なんだか微妙なお年頃の絵。 「どうだい、見てみないかい?」と扇動しているようで、ついつい見に行ってしまった。
この人の作品は、微妙なものが多い。 特定の派閥に属したり、師匠と仰ぐ人がいなかったせいか、画風がころころ変わる。あれこれ意欲的に取り組んでいるのだろうが、見ている側からすると「同一人物が描いたもの?」と混乱してしまう。
で、パンモロ女の子の絵(「夢見るテレーズ」)のような写実的な絵というのは実は少なく、多くの人物絵は頭でっかちで不格好だったり目がうつろだったり、癖が強い物が多い。
はっきり言って、これを見ただけでは「巨匠」と言われてもぴんとこない。
バルテュスが描く人物画は、瞬間を切り取ったものが多いようだ。動きがあるものを絵にしている。
しかしそういう絵って、漫画チックに見えるものだということに今更気がついた。 そうか、漫画ってのは躍動感あふれる芸術なんだな、と感じた。
この展覧会はバルテュス11歳の作品から、没する手前まで横断的に作品が展示されており、住む場所や付き合ってた彼女の影響で画風がぐんぐん変わるのが見られてとてもとても楽しかった。
一つの作品だけ見てもいまいちだけど、回顧展だからこそ実現できた、非常に良い空間だった。
今年見た中では一番満足度が高い展示かもしれない。
(2014.06.06)
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