現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展 ヤゲオ財団コレクションより@東京国立近代美術館

東京国立近代美術館

台湾にある「ヤゲオ財団」の理事長だかなんだかがコレクションしたものを一挙公開!という展示。

そんな1個人のコレクションをわざわざ国立の美術館で展示する意味がわからない。どうせ悪趣味なんだろう。

現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展

告知のwebサイトなどに表示されている収蔵作品は、どうもださかった。金色の、スゲー難易度のヨガのポーズを取ってる女性の彫刻とか。 しかも、告知文には「どん引きするくらい高額な保険評価額の作品が揃うため、作品の価値を考える場にもなるだろう」なんて書いてある。 成金の悪趣味に決まってる。

そういうのを生暖かく観賞しに、悪趣味な観点から行ってきた。

現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展

しかしこれはすごい!はっきり言って、今年見た100以上の展示会の中で一番良かった。なんなの、これ!?

すごすぎて、途中で寒気がしたくらいだ。

冒頭は、アンディ・ウォーホルの作品などで来場者を油断させる。ほらほら、成金っぽいよね、ポップアートを買って通ぶってるよね、って。 でもそこからがすごかった。

はっきりいって、知らない人の作品ばかりだ。それもそのはず、20世紀に入ってからの作家で構成されており、中国や台湾出身の人の作品も多い。 でも、日本ではあまり知られていないだけで、世界的な評価は相当高いものばかりらしい。

作品のインパクトがどれも強い。 この展覧会の面白いところは、作品横にある解説文だ。 解説文の前半には、普通の作品解説があるのだが、後半は「この作品はサザビーズで10億円で取引された」などと、金目の話になっているということ。 「えっ、この作品ってそんなに市場評価があるの!?知らない作家なのに!」 みたいな驚きがいっぱいだ。

しかも、その解説文を書いている人は挑発的で、 「同じ美人画を描く藤田嗣治の絵は2億円弱だけど、この人の絵は8億円で取引された」とか、 「奈良美智の作品よりも高い価値がある」などと、下世話な話をあえてしてくる。 もちろん、「作品の価値は値段だけで決まるものではないが」と前置きはしてあるが。

従来の美術館って、お高くとまっているというか、そういう銭勘定ってのとは距離を置いている感があるけど、ここは金勘定の話をむき出しにしている。それが面白いし刺激的だ。

実際、ヤゲオ財団のようなコレクターがいるからこそ、アーティストは生計が成り立つわけで、どんどん高値で取引されるべきだ。 ましてや、死人の作品ではなく、存命の作家ならなおさらだ。

どの作品も、「もし広い家があったら、こんな作品を飾ってみたいな」と思わせるものだ。 この観点はまさに僕の趣味嗜好と合致するもので、良かった。

解説によると、ヤゲオがコレクションしているのは、あくまでも「蒐集したいから」ではなく、「アートの中で生活したいから」という動機だそうだ。 だから、作品の合間合間に、ヤゲオのオフィスの写真などが頻繁に出てくる。ほら、こんな感じで日常的にアートとふれあっているんですよ、ということだ。 これがセンスがよく、驚かされる。 展示されている作家はばらばらだけど、だからこそ面白い。見ていて全然飽きない。

この手の展示といえば、時々「若手作家の入賞作品展示」みたいな展覧会で見かけるが、あちらは玉石混合だ。大量の「趣味に合わない作品」の中に「気に入った作品」が混じっている程度。 でも今回の展示は、どれもすごく自分の趣味と合い、わくわくさせられるものばかりだった。 これがたった一人の趣味嗜好で集められたのだから、驚くしかない。

改めてもう一度訪れても良い、と思った展示。

解説文は言う。 「美術館とコレクターというのは役割が違う」 と。 全くその通りだと思った。

(2014.06.27)

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