
台北にある、國立故宮博物院の秘宝が日本公開。
中国の歴史を物語る、文化芸術の品々。 清の乾隆帝時代に多く集められた宝で、当時の皇帝において中国古来のものを集めるということは王朝の正統性を主張する重要なものだった。 台北にその秘宝があるのは、戦禍を逃れて北京の紫禁城にあったお宝の一部が疎開したため。
蒋介石率いる国民党が、台湾政府が中国の正統である、と主張するよりどころとして使われた。

そんな歴史があるのだが、今回日本公開にあたってひと悶着あったのは記憶に新しい。
展覧会の開催を告げるポスターの一部に、「國立」の文字が入っていなかった、ということで台湾側が猛烈に反発した、というものだ。 台湾は、一つの独立国家だとこれまで主張してきている。しかし、中華人民共和国と国交がある日本は、台湾(中華民国)という国を公式には認めていない。 そのあたりを配慮した誰かが、「國立」という表現を一部はずしてしまったらしい。この表現を入れれば、台湾という国を認めた、と間接的に受け取れるから・・・ということなのだろう。
結局この件は、台湾側の抗議を踏まえ、「國立」という表現を入れることで妥結したはずだ。 日本側のスタンスは、「『國立故宮博物院』という固有名詞だから」ということになった。つまり、台湾が国かどうかは感知しない、あくまでも固有名詞をそのまんま使った、というわけだ。
なお、この台湾側の抗議において、台湾人においても「抗議するのはおかしい」という声が上がっていることは無視できない。 馬政権のPRではないか、というものだ。 台湾総統に国民党の馬英九が就いて以降、中国大陸との結びつきをさらに加速させている。 もちろん馬総統は台湾が大陸側に併合することは一言も言っていないが、昔から台湾に住んでいる人たちは不信感を募らせている。

彼らは言う。
「中国から高官が訪れた時、掲揚すべき台湾国旗を引っ込めて中国高官に配慮をした。一方で日本に対しては『國立』の文字がないだけで叩く。ダブルスタンダードだ」
しかし、馬総統は独裁者ではなく、ちゃんと選挙で選ばれている。 民進党ではなく、親中である国民党が支持されている以上、この流れは今後しばらく続くのかもしれない。
(2014.07.07)
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