原美術館コレクション展:トレース@原美術館

「限局性激痛」というソフィ・カルの作品が印象的。

文章パネルがずらっと並ぶ。

端的に言うと、3カ月の奨学金留学に行っている間に同棲している男に逃げられ失恋しショック、という強い悔しさを毎日記録として残している作品。

びっしり書かれた文字がパネルになって並べられている。 5日前失恋した、というところから展示は始まり、失恋の経緯や自分の心境が文章で綴られている。悔しくて悔しくてたまらないらしく、恨み節と後悔が延々と書いてある。

で、隣には6日前失恋した、という書き出しでほぼ同じような内容の日記パネル。

つまり、一日後に書かれたものだ。はとんど同じ内容なのだけど、よく読むと僅かに文章が違っている。

そのまま延々と10日前失恋した、という日記や30日前失恋した、という日記が続き、延々と同じ話が繰り返される。

しかしその間にだんだん心の傷が癒えてきているらしく、当初の塗炭の苦しみから、淡泊な表現に変わってくる。

50日くらい経過した時点では、失恋のことを「大した話じゃない」とまで言っている。 失恋した相手に対してのディティールも時間の経過とともに変わっていく様が手に取るようにわかり、ああこうやって人間の記憶というのは塗り替えられていくのだな、というのがよくわかってとてもリアル。

(2016.時期不明)

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