くろい家

アーティスト大巻伸嗣による、古い民家を丸ごと使った作品。

北千住の南にある、ごちゃっとした住宅地の路地裏にある家を舞台にしている。その名のとおり家の外観が黒い。焼けた跡か?と思わず触ってしまったくらいだ。

中に入ると、「少人数ずつご案内していますので、しばらくお待ちください」とちゃぶ台とブラウン管テレビがある畳の間で待つ。 その後、2階に案内されるのだけど、事前に「閉所恐怖症・高所恐怖症といったことはありませんか?」とスタッフさんに念押しされる。一体何が始まるというのか。

この大巻伸嗣という人は、シャボン玉を使ったパフォーマンスなどで知られているという。古民家再生プロジェクトとして、今回は「古い建物をバックに、楽しげな音楽が流れるなかシャボン玉がいっぱい宙を舞うよ!ウワア楽しいな!」という展開を予想していたが、なにやら風向きが違う。 しかもその後、暗い部屋の真っ黒な壁に向かって立たされ、「暗さに目を慣らしていただく必要がありますので、ここで2-3分じっとしていていてください」と言われる。ますます怪しい。

お化け屋敷か? そこまでしてさらに奥に入ったのだが、まだ目が慣れておらず全く手探り状態だった。手すりに掴まらないと何も見えない。足元がどうなっているかさえ、何一つ見えない。

そうやってあちこちにぶつかりながら、通路突き当たりに行ってしばらく目を慣らしてみると・・・ そこには、薄明かりのもと、作品がぼんやりと見えた。 どういうものが展示されていたかは書かないが、魅入ってしまい10分以上はそこで鑑賞していたと思う。1階に下りたら、今度は同じ作品を低い位置から見る、という展示方法になっていたが、ここでも10分以上は見ていた。

あとから別の客がやってこないのであれば、20分でも30分でも見ていられるものだった。

基本的には、静寂と、漆黒。「無」を見る、というのがとても良かった。温泉療養でギスギスした心とざらざらした五感センサーを癒す、ということをやっている僕だが、「何も情報を得ない時間」というのが染み入った。

(2016.02.14)

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