建築関係の展覧会はとても面白い、というのをこれまで何度となく言ってきたが、残念ながら建築をテーマとした常設の博物館・美術館は少ない。あっても床面積が小さかったりする。 おそらくニーズが少ないんだと思う。
チマチマした設計図や模型を見て喜ぶのは、男性や建築学科の学生、そして同業者というイメージがある。
実際、今回の展覧会の客層もそうだった。
ルネサンス期の美しい絵画を見ても、「へー、きれいですねー、ほー」で終わってしまう。少なくとも僕にとっては。でも、建築関係の展示だと、「うわ、こんな家は住みづらいよ」「この建物はよくできているねえ」と、自分が一人称的批評家として作品に接することができて、とても刺激的だ。その気になれば何時間でも楽しめる。
これまでも、丹下健三、黒川紀章といったレジェンドから隅健吾、ザハ・ハディドと知名度が高い建築家がいる。しかし、その作品に対しての多くが「デザイン優先で使い勝手が悪い」「金の無駄遣い」といったネガティブな評価となる。
でも一方で、ザハ・ハディドが作った、ヘルメットのような形をした国立競技場案に心躍らせた人たちも大勢いるわけで、建築に対して興味を持っている人は多い。
高度経済成長時代に作られた、「無機質な建物って近未来的でカッコイイぜ」という無茶っぷりとか、建物は時代の流れを色濃く反映する。ファッションと一緒だ。
今みるとクソださい、というのも、むしろ愛おしくなる楽しさだ。
有名建築家が作った、非現実感ある「特別な建物」がずらっと並んでいる。
設計図、模型、写真、紹介動画などいろいろなアプローチで紹介しているので、面白い。
一見の価値ある展覧会だと思う。
ただし、これを見ていてむくむくと興味が湧いたのは、「庶民の家というのがどう推移していったのか」ということだ。この展覧会は「建築と暮らし」と銘打っているけど、前述のとおり奇抜な作品ばかりが紹介されている。とても庶民的ではない。
たとえば、マンションやアパート一つとっても、建物の作りというのは戦後の間にどんどん変わっていった。今じゃLDKが当たり前だけど、昔はDKだった。玄関の段差は、昔とくらべて今はすごく低くなっている。押入れじゃなくウォークインクローゼット、下駄箱だってシューズインクローゼットが増えてきている。
間取り、建築素材、インテリア、備品・・・そういう時代の流れを俯瞰した展示ってやってくれないものだろうか。いや、常設展示してくれてもいいくらいだ。 単なるマニア的趣味なのだろうか?いや、立派な学問だし、展示する意味はあると思うのだけど。
(2017.08.04)
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