
complex665、という建物の中にあるギャラリー。
六本木ヒルズのすぐ脇の、路地を入ったところにある。
比較的新しい建物で、まだできて1年ちょっとなのだという。

建物はアートギャラリー向けに作られたとでも言えるもので、入居オフィスはずらりとギャラリーの名前が並ぶ。清澄あたりにあったギャラリーが引越してきたそうだ。
それにしても、六本木という超一等地、でも路地裏で普通の人は存在すら気づかない場所、という背反した立地条件というのが不思議な世界観だ。「わかる人だけ来てくれれば良い」という割り切りをしているからだろう。
こういうアートの場合、「通りすがりに立ち寄ったら、気に入ったので購入しました」なんてことはほぼ無いはずだ。そんな衝動買いができる額ではないし、宝石や衣服以上に個人の嗜好が影響するものだからだ。 展覧会情報を得て、わざわざギャラリーを探し当てて訪れるような客以外には用はない、ということだろう。
さてこの「シュウゴアーツショー」は、ギャラリー「シュウゴアーツ」と提携しているアーティストの作品を見本市状態で並べている展覧会になっている。個展ではないので、いろいろなセンスの作品が並んでいる。
その中でも、僕は一枚の絵の前でしばらく立ち止まってしまった。変な絵だからだ。 その作家の名前は千葉正也。絵のタイトルは「Pork Park#5」。タイトルも変だ。
絵は、机の上に女性?が寝そべっていて、その全身を覆うように青い布が被さっていて、手足だけが見えている、というもの。 意味不明な構図の絵だけど、フェルメールの絵を思わせるような、はっとする美しい青に見とれてしまう。綺麗な絵だと思う。
しかし、よく見ていると、なんだか絵の構図がおかしい。人物の周囲に描かれているサーキュレーターが、遠近法通りに描かれておらず若干歪んだ形になっている。また、それ以外のものも、描いている人の目の位置が定まっていないようで、形や大きさが変だ。 この作家さん、遠近法の基礎がわかっていないんじゃないか?と不安になってくる。
でも、それにしては絵がうますぎる。こりゃあわざと絵を歪ませているな、でもどうしてそんなことをするのかね・・・と思い出すと、ひたすら絵を眺め続けている自分がいた。
ギャラリーのスタッフさんが話しかけてくれたので、これを機会にと自分が感じた違和感を話してみた。すると、いろいろとこの絵の背景、そして千葉正也のバックボーンなどを教えてくれた。なるほど、裏話的なことを知ると、この絵も面白くなってくる。納得はしていないけど。まさか、作家さんの祖父の体験談までこの絵の要素に入っているとはね。長くなるのでこのあたりの話は省略。
ちなみにお値段は数百万円だったと思う。当たり前だけど、到底買えない。スタッフさんにお時間を取らせてしまい申し訳なかったけど、大変勉強になりました。
(2018.03.16)
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