
例のごとく、東京メトロ銀座一丁目駅を利用する機会があったので、なんの前情報もなく訪れた場所。本当に駅前だし、無料だし、さほど広くないのでざっと作品鑑賞できるし、とても意欲的な作品が並んでいるし、大好きなギャラリーだ。
今回もその期待に100%応えてくれる、すばらしい展示。
展覧会タイトルからして冗談っぽいのだけど、展覧会ポスターは「ハート」のマークを壁に描いている鎧甲胄の武士の人形写真だ。
会場内には、まさにもののふワールド。精巧な鎧装束のフィギュアがたくさん並んでいる。しかし、そのどれ一つたりとも、ありがちな「精悍な顔立ちの、イケメン」ではなかった。すごく派手な装飾がカブトに付けられているのに、それをかぶっているのはだるそうな顔をした猫背のオッサンとか、明らかに西洋風の机と椅子に座り、頬杖をついてぼんやりしているオッサンとか。
戦国時代というのは、既に我々の日常生活からは乖離したファンタジーの世界になってしまっている。地続きの世界観ではない。しかし実際はもっと泥臭かったのだろうし、昔の日本人だからどんくさい顔立ちだったに違いない。現在の「美化してしまっている歴史」を引き戻す面白さが、ここにはあった。
とはいっても、これだけ気が緩みまくった顔をしている武士たちは、これはこれで逆ファンタジーではある。そういう世界観の表現のしかたも、この作家の面白いところだ。
壁にはひょうひょうとした武士を描いた油絵もあった。器用な人だ、と思ったら、もともとこの作家さんは油彩画を専攻していた方らしい。
もっとこの野口哲哉なる作家の作品を見たくなった。久々に「こいつァいい!」と無邪気に喜べる作家に出会った気がする。
(2018.07.27)
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