ショーメ 時空を超える宝飾芸術の世界@三菱一号館美術館

ショーメ 時空を超える宝飾芸術の世界@三菱一号館美術館

会社帰りに立ち寄った三菱一号館美術館。金曜日夜、美術館を20時や21時まで開館しているところはサラリーマンにとって貴重な場所。仕事を終えて、帰りの電車の中で、とっさに思いついて美術鑑賞を決める。

というわけで、何が展示されているのか知らないまま現地に到着したのだけど、美術館入り口に掲げられていたポスターを見て「あー・・・」と足が止まってしまった。Uターンして家に帰ろうかなあ、とも思った。

そのポスターは、キラキラの宝飾品の写真だった。僕がもっとも面白くないと思うジャンルだ。

そりゃあ、無料で見られますよ、どうぞどうぞ、というならば全然遠慮はしない。しかし、それなりにお金を払って鑑賞するとなると、そこまでして好きでもないものを見ることはないのではないか?と自問自答してしまう。

ちょっと前までは、美術館とアートギャラリーを気が狂ったように巡り、数だけでなくあらゆるジャンルを鑑賞しているということに自己満足していた。そういう時ならば、「大して好きでも無い宝飾品を鑑賞する」というのも楽しかった。宝飾品を見ることが楽しいのではなく、「好きでも無いものを見ているオレ」が楽しかった、という言い方が正しい。

しかし今や、昔ほど美術館を訪れる頻度が高くない。自分が見たいものだけ見れば良いのではないか、と思うようになってきている。もう、「理解できないものを理解する努力」はいい加減疲れたからだ。

というわけで、かなーりこの展覧会を見るのには覚悟が必要だった。メシ1回分じゃ済まないくらいの入館料がかかるわけだし。

とか悩みつつも、今更引き下がるわけにもいかず、入館。

館内は、あれっと思うくらい客が多い。その大半が女性だ。男性もいることはいるのだけど、女性の連れだったりするパターンが多いように見えた。大抵女性は熱心に、展示ケースに顔をくっつけるようにして作品を見ているが、男性はやや引き気味だ。

僕もそう。遠巻きで雰囲気だけ鑑賞できればいいや、という気持ちで見て回った。なにしろ、女性の皆様は本当に熱心だ。写真撮影オッケーのコーナーでは、「うおおおお」という声が聞こえてきそうなくらい写真をバシバシ撮っている。

「宝石?所詮石ころじゃないか」みたいな無粋なことを言いたくはないが、人混みをおしのけてまで鑑賞したり、順番待ちの列を作ってまで作品を見ようという気にはなれなかった。なぜ女性はここまで熱心に鑑賞できるのだろう?

あ、いや、違うか。「女性だから熱心」というのは偏見だ。こういう宝石が見たいからこそ、会場にいるお客さんは来訪しているんだ。熱心でない僕の方が、おかしい。

展示内容は、ナポレオン一世の妃にも愛されたショーメの宝飾をずらりと並べたもの。

ショーメ、というブランドはこれっぽっちも聞いたこともない。展示を見ている途中まで、「シャレー」だと勘違いしていたくらいだ。

「おかしいな、シャレーって『山小屋』っていう意味なのに」

なんて勘違いしていたくらいだ。

しかも、「ショーメ」をフランス語で書くと「CHAUMET」なのだが、僕はここでも

「え?ブランデーの会社じゃないの?」

と大間違いをした。違う、それを言うなら「CAMUS(カミュ)」だ。

展示内容は、ひたすら華美。どかんどかんと大きな宝石を並べれば平民はひれ伏すだろ?というものはむしろ少なく、小さなダイヤをびっしりと並べたものとか、素人目でも手間暇がものすごくかかっていて精緻なものばかり。やっぱりヨーロッパの貴族階級はしゃれにならんな。絵や建物もすごいのを作るけど、宝飾品だって容赦ない。

美術工芸品としてすごいとは思うんだけど、こういうのを身につけるためにどれだけの重税で一般市民は搾取されてきたのだろう?日本だと、歴史の授業でいかに農民が年貢で苦労したかというのを学ぶけど、西洋の事情というのは全く伝わってきていない。ただただ、貴族たちの道楽という「上澄みの部分」だけだ。しかし、平民が霞を食って生きているわけではないので、相当つらい思いをしたのだろう、とは思う。

(2018.08.10)

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