第五回 現代アート徹底研究講座-最新アートニュース&アーティスト・トークショー- @住友不動産六本木グランドタワー

日本人作家を中心とした現代アートをネット通販で提供している「tagboat」主催のイベント。tagboat代表の徳光氏によるトークと、tagboat一推しのアーティスト3名による作品解説の組み合わせ。

僕はこれまで、tagboatで2作品を購入したことがある。奈良美智や草間彌生といった大御所のセカンダリ作品やエディションが多くある汎用的な作品も売っているが、まだ知名度がさほど高くない作家さんの作品を手ごろな価格で買えたりもする。

なによりも、「いま」を生きる作家の作品を、ざーっとweb上で眺めることができる、というのが本当に素晴らしい。そしてそれは、単に「ガラス張りの向こう側」にあるのではなく、ぽちっと押せば実際に購入することだって、できる。

ただし、実物を見て購入するというわけではないので、tagboat自体が胡散臭いと話にならない。その点、このネットギャラリーはとても信頼ができると僕は思っている。ここに展示されているなら、間違いはないだろう、という安心感がある。

前回、第四回目の講座にも僕は参加し、そこで徳光氏による「値上がりするアートとは」という講義を聞いて大変に楽しんだ。徳光氏だって僕らだって、単なる「儲け話」をしたいんじゃない。でも、決して安くはないアート作品に手を出すときに、「いずれはこの作家さんは有名になって作品の値が上がるのではないか」という期待感と、それを後押ししたいパトロン精神がなくちゃやってられない。だから、単に金稼ぎをしたいからではなく、「正しい判断でよい作品を見極め、所有する」ということが大事だと思っている。

自分の趣味として、インテリアとしてのアート作品と、資産としてのアート作品。その区分けはちゃんとしなくちゃいけない。ごちゃまぜにしてしまうと、不必要な作品を高値掴みしてしまう。

こういう話って、もっと大真面目に、広く語られてよいと思う。日本のアートマーケットは2500億円程度と言われているが、そのうち現代アートは300億円~500億円しかない。なんとも、小さな話だ。現代アートのビッグネームの作品は1億円を下らないものもあるので、単純に考えると、そういうビッグネーム作品が数百点売買されただけ、に過ぎないというわけだ。あまりにマーケットが狭すぎる。

tagboatの徳光氏によるトークは、最近のアート市場のトピックだった。これが非常に興味深く、アートのスタートアップ企業の取り組みが紹介されていた。世界規模では、100億円以上の出資を集めて「楽天市場」的なアート売買プラットフォームを作りあげた企業があったりもする。日本でも、ブロックチェーン技術を利用して、アート作品の真贋管理をきっちりやろうとする動きがある。また、複数名で作品を共同所有するというサービスを打ち出しているところもある。個人所有ではないアートってどういう世界観なのか、謎だけど面白い。

一方、tagboatはアートのプラットフォームビジネスには手を出さない、という。日本各地にある画廊やギャラリーと提携し、消費者は一つのwebサイトで各ギャラリーの作品を一度に閲覧できるし購入だってできる。プラットフォームは、売上の一部を手数料としていただく・・・というビジネスモデルだ。メルカリとか楽天、zozoがそういうビジネスモデルで、成功すれば「仕入れ価格はほとんどかからず、手数料がチャリンチャリンと入ってくるおいしい商売」になりうる。でもなんでやらないのか?

徳光氏は、「日本のマーケットは小さすぎて、今後これが拡大するとも思えない。現在、東京はアジアでも7番目か8番目のマーケットになってしまっていて、それが今後逆転するとは思えない。特に、現代アートを買うのは若手層であり、少子高齢化と人口減が確実な日本において、マーケットが拡大する余地は乏しい。そこに力を入れるなら、まだアジアに活路を見出したほうが良いと思っている」という。

まさに現実を直視した、冷静な判断だと思う。

アートに限らず、いろんなビジネスにおいて「日本の没落と、日本からの脱出」が始まっている。日本市場を開拓するだけ時間の無駄、という認識が増えてきている。政治家はこれに対してどう考えているのか?「子供を3人産め」だの「年金は問題ない」だの「移民は受け入れない」だの、適当なことを言っていないでちゃんと痛い現実に向き合ってほしい。そして政治家を選ぶ有権者も、ちゃんと将来不安の諫言を言う政治家を選ぶべきだ。

(2019.07.11)

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