
民芸、というのは鑑賞していて楽しいとは思わない。以前、東京の日本民芸館で抱いた印象は、いまだに僕の中では変わっていない。
芸術を貴族や金持ちの道楽から解放し、庶民の日常生活の中から見出す、という民芸運動は僕にとってすごく賛同するものだ。「用の美」というのは、僕がとても良いと感じている思想だ。
とはいえ、そういう「用の美」なものをズラズラと並べてしまうと、どうしてこうもほこりっぽくなってしまうのだろう?一つ一つの作品は地味ながらもすばらしいのに。
結局、「マニアックなご主人が道楽で集めた個人の趣味の品を、一般公開」という見え方になってしまっているからだろう。陳列の法則性がよくわからないし、日本に留まらずいきなり外国のものが展示されたりして、展示した側の意図がよくわからない。また、この作品がどういう場所で、どういう使われ方をしているのかといった詳細な解説もない。
美術館に飾るようなものじゃないんだから、きれいに並べて、解説をつけるなんて必要はないんだよ・・・ということなのだろう。また、解説を付けた時点で権威主義的というか、頭でっかちなものになってしまい、それこそ民芸を楽しむスタンスからはずれてしまう、という考えもあるのだろう。

というわけで、僕が民芸に対して懐疑的なのは、おそらく僕自身が「民芸脳」になっておらず、「頭でっかちな芸術脳」のままで民芸品を見ているからなのだろう。
今回、ざっと館内を見て回り、少しはこういう展示が楽しく思えてきた。
(2018.08.16)
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