根津の団子坂をのぼりきったところにある、森鴎外旧宅。今はその面影は残っておらず、カクカクした四角い建物になっている。昔ここにあった森鴎外の家は、「観潮楼」と呼ばれていたらしい。家から、遠くに東京湾を眺めることができたからだが、今となっては東京湾は見えない。
建物の地下一階に、森鴎外の軌跡をまとめた展示スペースがある。直筆の書は写真などが並ぶ。
森鴎外の小説は当然読んでいるのだけど、20年以上も前のことだ。「高瀬舟」という話が、どんな話だったか家に帰ってから調べて思い出したくらいだ。
こういう「ただなんとなく訪れた」客にとって、文豪の展示館というのはなんとも微妙な場所だ。はっきり言うと、大して面白くない。
しかし、森鴎外は本業が軍医だったので、その生涯をたどると「文筆家」だけではない生き様があり、それはそれで面白かった。
展示内容とは全然関係ないけれど、ここを訪れて「人間って、いくつもの『顔』を持っているべきだな」と思った。それこそが、人生の厚みだ。翻って自分はどうだろう?勤務先の会社のしがない社員、という肩書きだけで生きていて、退職したら何も残らない気がする。
(2018.09.18)
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