
20世紀前半に活躍したデザイナー、杉浦非水の展覧会。
百貨店・三越の嘱託デザイナーだったこともあり、三越関係のイラストやポスター、東京地下鉄道(現在の東京メトロ銀座線)の絵を多数残している。
僕でも知っている彼のイラストといえば、カルピスのポスターだ。白いシルクハットをかぶった真っ黒な人が、嬉しそうな顔をしてカルピスをストローで飲んでいる絵だ。今じゃ全く見かけなくなったのは、「ちびくろサンボ」同様に有色人種に対する配慮があるからだろうか?
それはともかく、彼の描く絵の色の選び方や絵の構図、どれを見てもワクワクさせられる。昭和レトロモダン、という表現をすると非常に安直だと思うけど、今の時代にはない雰囲気がガツンと存在する。
パステルカラーではないのだけど、いい意味で原色が薄まった、ぼんやりした色を使いつつ、時にはドキッとするような黒とか赤の色が使われる。
ポスター絵というのは、やっぱり面白い。僕はミュシャ、ロートレックといったポスター絵出身の作家さんの作品がとても好きだ。ポスターならではの独特の構図とか美学、というのがそこにはあって、見ているものを引き込む何かがある。
たぶん、精緻に絵を描きすぎると、ポスター本来の趣旨である広告効果が薄れてしまうので、適度に簡略化された漫画的な描き方になっているのだろう。それが僕にはグッとくるのだと思う。
なんとなく、川瀬巴水の新版画に通じるものを感じた。技術的には全く違うものなのだけど、色合いが似ていると思ったのだろうか?なぜそう感じたのかはよくわからない。
いずれにせよ、規模が小さい展覧会だったものの、とても楽しかった。いずれ、大規模な回顧展をやってもらえないだろうか?
(2019.02.27)
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