東京駅の八重洲側、つまり銀座・京橋・日本橋あたりは小さな画廊が密集していることで知られている。ギャラリー巡りを趣味としている僕でさえ、あまりの多さに「ふらりと立ち寄る」事をしたことがない。きりがないからだ。
なので、この界隈のギャラリーについては、これまで「美術展の告知がwebやチラシで見かけた」という場所しか行ったことがない。行こうとも思ったことがない。
というのも、僕が好む「企画展をやっているようなギャラリー」というよりも、この界隈のお店はガチの画廊・骨董品店であり、どちらかというと常連の上客相手で一見さんには敷居が高いからだ。
そんな数多くの画廊・骨董品店の一部が結集し、「どうぞ一見さんでもいらっしゃい」とばかりに門戸を広げているのが、「東京アートアンティーク」らしい。僕は全く知らなかったのだけど、アワレみ隊のばばろあからこの話を聞き、二人で行ってみることにした。
恐ろしいことに、紹介されているお店の数は95。スタンプラリーをやっているわけではないけれど、配布されているマップ上に95カ所プロットされていたら、片っ端から見たくなる。時間と体力が許す限り、見て回った。
なにせ、1つの雑居ビル内に2つ3つ画廊が入っているのは珍しくない。そして、道路を挟んで画廊同士が向かい合わせ、というのもある。画廊同士の移動時間、僅か数十秒ということが何度もあった。なんてぇ密集具合だ。
そして、一つの画廊はとても狭いところが多い。ワンルームマンション程度のスペースしかないところもざらだ。ずらりと作品を展示しているお店もあるけれど、数点程度しか並べていないお店もある。たぶん、そういうお店は客とお店が個別相談して取引をしているのだろう。
展示スペースが狭いのに、応接室を備えているお店も多い。そこで、骨董品を手に取って吟味している紳士がいたりする。たぶん、そのお店の上客なのだろう。
場所柄現代アートを展示しているお店は少なく、書も少なかったと思う。茶碗、陶磁器が多かった印象だけど、中にはエジプトのヒエログリフが売られていたり、アフリカの木製の人物像があったり、様々だ。
「暇してるので、いつでも遊びに来て下さい」と仰ってくださるご主人がいる画廊があったり、つんとすましたお店があったり、スタッフがあちこちに立って人件費をかけまくっているお店があったり、様々で面白かった。
作品の展示はされていても、値段は書かれていないというのはザラ。お店の人に値段を聞いても、一見の冷やかし客にはあんまり教えたくない、みたいな態度をとられたりもする。そういうのも含めて、面白い体験だった。
たぶんこの日見た中で一番高かったのは、5,000万円だったと思う。誰の作品だったっけ。
一番印象に残ったのは、平福百穂の作品。こういう、「これまで知らなかったけど、今回初めて学んだ」という出会いがあったのは嬉しい。
あと、東京藝大の4年生の彫刻が素晴らしく、在廊していた作家さんと会話をしたりその後Twitterでやりとりできるようになったのも、素敵な体験だった。
こういう機会があったことに感謝している。
(2019.04.27)
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