僕にとってのミイラは、幼少期の記憶が残っていて印象があまり良くない。
子供の頃、NHKスペシャル「シルクロード」が放送されていて、そこで「楼蘭の美女」と呼ばれるミイラをブラウン管越しに見たからだ。
この先何百キロ先に遺跡があるのを見た、などという漠然とした遊牧民や地元民の話を頼りに、タクラマカン砂漠をジープで走破する取材班。そして時には何も発見できず、時には廃墟となった寺院が見つかったりする。そして発掘調査をしてみると、そこからミイラが出てくる・・・そんな内容だった。
子供の頃、黄土色の砂漠をひたすら車で走る映像はただただつまらなく、大地と同化しかかった遺跡にもなんにも興味はわかなかった。そして、大げさに掘った挙げ句に出てきたのは、人間の死体。そりゃあ、キライになるわ。
でも、この番組の面白さを再評価したのは僕が大学生になってからで、それからは大学の図書館でビデオを一通り見たり書籍化されたものを読んだりもした。
とはいっても、日常生活でミイラなんて見る機会はないし、美術館博物館に行ってもそう簡単に見られるものじゃない。だから今回のミイラ展はとても興味深かった。
ミイラと言えばエジプトのイメージが強いけど、ヨーロッパにも南米にも存在するし、日本にだって即身仏がいらっしゃる。そういうものがエリアを区切って展示されていて、丁寧な動画解説がついていて、わかりやすい展示内容にしてあった。
袋に入れられた状態のミイラ、包帯を巻かれたミイラなど、「実際の人体を見ることができない」ミイラはたくさんある。しかし今だと、CTスキャンを使って身体がどうなっているのか、調べることができる。そして、DNA鑑定や放射線検査で性別や年代まで調べることができる。科学の進化によって、これまで未知とされてきたものが見えるというのはワクワクさせられる。
エジプト考古学関係は本来とても面白いジャンルのはずなんだけど、これまでテレビでさんざん「世界最大のミステリー」ともてはやされ紹介されすぎたので、なんだか商業主義的な印象を僕は持っている。なので、むしろエジプト以外のものが興味深かった。
21世紀の今、人間の死というのはどういう存在なのだろう。僕なんて、鳥葬でも海上散骨でもどうにでもしてくれ、と思っている。葬式という儀式はどんどん簡略化されてきているが、その果てには何が待っているのだろうか。
(2020.01.18)
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