放送作家の倉本美津留プロデュース、現代アート60名による展覧会。
日本語のお題がアーティスト一人につき一つ提示され、その言葉に従って作品を作り、それが展示販売されている。
「つまらないものですが」
「おちゃめ」
「マジで」
といったお題が設定されている。
作品とお題を見比べて、
「ええ?なんでこのお題がこういう作品になるの?」
と首をひねったり、
「おう、そう来たか!」
と感心したりする。まさにアートを使った大喜利だ。
ただ、これはかなり難しい。アーティストのセンスが問われる。
言葉のイメージ通りのテーマで作品を作ると安直すぎるし、かといって面白くしてしまうと、安っぽくなる。
お題が非常にわかりやすい日本語で設定されている分、作品を見る人にシビアに評価されてしまう。抽象的な作風であっても、具体的な作風であっても、どっちにしろ作る側は冷や汗ものだ。
作品は全部値段が書かれていて、実際に購入することができる。そもそも、「これやん」というのは、現代アート作品を作家から直接購入できるサイトらしい。(僕はその存在を知らなかったけど)
「えっ、この作品でこの値段?」「ああ、これなら手ごろ」
と、値段と作品を見比べるのも、楽しい。
「実際にほしいと思うか・家に飾りたいと思えるかどうか」という観点で作品を見るのは、とてもワクワクすることだ。
それにしても驚きだったのが、会場の場所だ。
汐留にあるパークホテル34階だ、とは聞いていたが、実際に行ってみるとギャラリーなんてスペースは存在しない。客室が並ぶ廊下の壁に作品が展示されていてびびった。まじか。
しかも、34階というのはこのビルの最上階だ。おそらく、VIPルームが並んでいるのだと思う。パークホテル自体、外国人観光客が多く泊まる場所だし。そんなところに作品が並んでいることに驚くし、僕らみたいな一般人が入り込んでいい、というのにも驚かされる。
監視カメラが設置されているとはいえ、ホテルの廊下なのでスタッフや警備員はいない。そして、コロナウィルス騒動の影響があってか、客は僕らしかいなかった。昼過ぎの訪問ということもあってか、宿泊客とさえすれ違うことはなく、まったく静かな美術鑑賞となった。
「これはほしい!」
と思える作品は、僕の趣味嗜好の範囲ではなかったのだけど、とても惹きつけられる企画だった。意味不明な現代アートに意味不明なタイトル、というのはよく見かける。だからこそ、明確な言葉が提示されている作品というのは面白い。
もっとも、言葉というのは解釈の仕方がいくらでもある。深読みすると違う意味になったりもするし、人によって言葉から想起するニュアンスというのは異なる。それを実感することができるのも、この展覧会の面白さだった。
(2020.03.14)
コメント