有元伸也 写真展「Tokyo Debugger」@ZEN FOTO GALLERY

「アート」の扱いとなる写真は、まだ僕にとってしっくりきていないジャンルの一つだ。

もちろん納得がいかない、というわけではない。ただ、ザラッと雑に作品を見ると「日常の一風景」とか、「キャプチャ画像」のように見えてしまう写真を、じっくり見て、その背景にある作品性をぼんやりと把握していくプロセスが得意ではない。

たぶん、SNSやネットサーフィン、テレビ番組のザッピングのように情報を雑に扱うことに慣れすぎてしまったんだろう。写真作品も、同じく雑に見てしまう。すると、何も印象に残らないし、「なんでこれがアートなんだろう?」と思ってしまうこともある。

ソール・ライターやロバート・キャパのような作風だと、見た瞬間にギョッとする。だから、この作品がアートであると言われればすごく納得がいく。(キャパの場合、アートというより報道という要素が強いが)

自分が写真をアートとしてようやく腑に落ちるようになったのは、何度も作品を見続けたからだけど、一眼レフカメラで写真を撮るようになったことが大きい。絞りをどうする、とかシャッタースピードが、といったことを意識するようになったら、世のプロカメラマンの方々の作品の凄さが改めてわかってきた気がする。

たぶん、スマホでシャッターボタンを押すだけでバキバキにきれいな写真が撮れ、AIが自動的に人物の背景をボカしてくれるようなご時世だと、この僕が感じた「腑に落ちた感」というのはもっと難しい体験かもしれない。

パートナーのいしを写真展に連れて行ったのはたぶん初めてだ。

モノクロの、東京に棲息する昆虫たちの写真がモノクロで撮影されている。アップで撮影された、カマキリがギョロッとこっちを見ているのが迫力ある。

小さなギャラリーで、展示スペースは狭い。作品数は20点程度。

いしには、「無料で見られるのだし、真剣に作品一つ一つを見なくてもいいからね」と伝えておいた。高いお金を払って入場する美術館・博物館のように、「元を取ろう」的感覚でじっくり鑑賞する必要はない。

作家に対しては失礼かもしれないけれど、こういう体験が積み重なっていくことで、「ああ、写真作品というのも素晴らしいな」と思える土壌を頭のなかに作れると思っている。最初っから、「どうだ、写真ってすごいだろ?ほら、じっくり見よう」と押し付けるのは酷だ。

このギャラリーは、作品を売っているコマーシャルギャラリーだ。僕らは少なくとも今回は全く購入する気はないので、「冷やかし」といえる。でも、作品を見る体験をさせてもらうことで、将来的な客になるかもしれない。

(2021.02.13)

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