こだまがのぞみを追い越して行くのを見た

この日、台風14号が日本列島に直撃したことによって東海道新幹線のダイヤはずたずたになった。

最近は計画的に前もって運転を取りやめることが発表されるので、昔のように「ギリギリの時間をワンチャン狙い」するチキンレースはしなくなった。最初は計画運休について批判的だった国民も、今では肯定的な人の方が多いんじゃないか。

とはいえ、新幹線のような長距離路線の場合、台風に伴う運休計画というのはたいへんだ。東京から博多まで、1,000キロ近い距離があるからだ。東では全然平気でも、西に行くと暴風、というのはザラだ。そして、日本の大動脈として、できる限り運行を続ける社会的責務をJRは自覚している。

そんなわけで、便数を減らしたり区間運休にしながら、なんとか頑張って運転が行われる。

この日、静岡駅の新幹線改札前にホワイトボードが用意されていた。そこには、A3の紙に印刷されたさまざまな情報がずらずらと張り出されていた。

この2022年においても、未だに紙なのか!ということに驚いた。最新情報が本部司令から届く都度、プリンタでガーッと印刷して、駅員さんがしかるべきところに張り出すということをやっていたとは意外だった。てっきり、大型ディスプレイにリアルタイムで情報を表示するものだと思っていたからだ。

でも、この大量の張り紙を見て納得した。ああ、たしかにこれだったら紙の方がいいわ、と。

情報量が多いので、これを1面のディスプレイで表示するとなったら、数十秒ごとに画面を切り替えていかないといけない。そうなると、さっき見た情報を再確認しようと思っても、その情報が再表示されるまで数分待たないといけない。それだったら、最初っから紙でバーンと張り出してくれたほうがいい。

あと、ローテクながらも、フォントが赤字で表示されていたり、フォントサイズが大きかったり、という強調の仕方が人間の脳にとって理解がしやすい。

最近、スマホの便利さを実感するとともに、小さな画面の弊害として情報を俯瞰して見られないことにたいする残念さを感じていたところだった。しかしこれはどうだ、全部一度に見ることができる。ローテクでダサく見えるけど、これが良いんだろうな、と思った。

特に運休情報の場合、「現状」と「今後の見通し」を客は把握し、「じゃあどうする?前倒しで帰る?帰る便ある?」と対策を検討しなくちゃいけない。それが全部詰まっているのがこのホワイトボードだった。

とはいっても、僕は予めスマホで刻一刻と変わる運行情報を把握しており、エクスプレス予約で便の変更をしたり、駅に到着する時間を変更したりと対応済みだ。

なので、先ほどのホワイトボードはあくまでも「最終確認」という意味あいしかなかった。


さて、静岡駅の新幹線ホームに上がってみて、奇妙な光景を見た。

対面の名古屋方面ホームに、静岡駅に停車するこだま号がやってきて停車した。これは普通の光景だ。でも、そこからが変だった。

追い越し線に、後続ののぞみ号が徐行しながらやってきて、ついには停まってしまったからだ。

本来なら、のぞみ号は新横浜を通過したのち、次の停車駅は名古屋だ。静岡県内の駅は、爆速で通過される対象になっている。それでものぞみ号に乗っている乗客は、車窓の景色を眺めながら「まだ静岡県から脱出できないのか・・・静岡県、長いなぁ」と感じている。そんな不遇の地。

そののぞみ号が、追い越し線とはいえ停車している。信号待ちをしているらしい。初めて見る光景だ。

どうするのかとおもったら、ホーム側にいたこだま号が先発した。えっ、こだま号を先に行かせるためにのぞみ号は待機していたのか。そんなことって、あるのか。

こだま号が出発してしばらくして、のぞみ号はしずしずと出発していった。このあと、徐行しながらこだま号に追随していくのだろう。掛川、浜松、三河安城、名古屋、と。

貴重なものを見た。

(2022.09.19)

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