スモークガラスの壁は圧迫感がある

オフィスリノベーションを考える上で、「開放感、視界の交錯」をどう演出するかは大事。そう僕は思っている。

昔のように、縦横ぴったりと机と椅子が並び、お誕生日席には管理職が座る、という席次の時代じゃない。縦横斜めに席は配置され、場合によってはひな壇が設けられたり、ゴロンと横になることができるスペースができたりもする。

コロナ以降テレワークに慣れちゃった僕らは、もう今さら机をぎゅうぎゅうに並べて仕事をしたくない。会社の偉い人がどう考えているかはともかく、僕はそうだ。あと、せっかく出社するからには若干のワクワク感が欲しい。そういうレイアウトであってほしい。

現在、様々な時間貸しコワーキングスペースのサービスが世の中に存在している。有名どころでいえば、wework、WORKSTYLING、H1T、ZXYなどがある。

無機質&効率重視のH1Tはおいといて、三井不動産がやっているWORKSTYLINGは店舗ごとにレイアウトが異なっていて、しかもワクワク感を演出していてビビる。そもそも、立地条件が超絶素晴らしく、東京駅の新幹線ホームをすぐ目の前で見下ろしながら仕事ができたり、霞が関ビルの最上階で国会議事堂を見下ろしながら仕事が出来たり、シチュエーションがすごい。あるオフィスでは打ち合わせ卓にブランコが設置されていたのには驚きを超えて震えた。

あと、絶妙な配置で観葉植物を置いたり、敷地内にいろいろなエリアわけをしていて、入り口から見ても席の全貌が見えない作りになっている。通路をスルスルと歩いていき、「おっ、こっちに人がいるぞ」「あ、会議室には人がいるな」などと見えてくるのは、探検をしている気分だ。

ショッピングモールの通路が緩やかにカーブしていることが多いのは、来場客に遠くを見せないための工夫だ。歩いて行くにつれてだんだん先の景色が見えてくるので、つられて客はどんどん奥に向かう。我がオフィスもそういうのがいい。

なので、オフィスのあちこちに「微妙に視界を妨げるなにか」がありつつ、椅子や机はあっちこっちを向いていて人々の視線はいろいろ、というのが理想だ。ジロジロ見られないけど、人の気配は感じられる、誰がどこにいるのかはなんとなくわかる、そういう空間。

最近の流行りとして、会議室はガラス張りのハイパーティションにし、密談をするときはカーテンを閉める、というやり方がある。ややこしい話でないときは、中が丸見えの状態で打ち合わせをする。こういう細工で、「よその組織が何をやっているのかまったくわからない」というタコツボ化現象を防ぐ。僕も、ガラス張りの会議室は大好きだ。

ただ、「いや、会議の様子を見られるのはまずいんだ」と主張する勢力は結構多く、僕が思っている以上に密談というのは多く行われていることがうかがえる。web会議用の一人用ブースも、ガラス張りはちょっと困る、という意見が多い。

じゃあせめて、なんとなく人の姿がぼんやり見えるくもりガラスはどうか?という代案が出てきているのだが、ある日立ち寄ったコワーキングスペースがまさにそういう作りになっていた。参考として写真を撮らせてもらった。

ずらっと並ぶ会議室、そして手前にweb会議用お一人様ブース。全部くもりガラスで、満員御礼。

・・・これ、もう単なるハイパーティションでよくないか?と思えてくる。

はるか遠くから会議室などの様子が見える構図ならいいけれど、このオフィスのようなレイアウトだと、くもりガラスの会議室は「単に白い壁」があるだけに見える。全然開放感はない。

あと、透明なガラスを会議室壁面に導入しているオフィスも見る機会があったが、密談用のカーテンとしてバーチカルブラインドが導入されていた。バーチカルブラインドの場合、閉めるとまったく普通の壁のように見えて開放感が皆無だ。そして、大抵の場合、バーチカルブラインドを一旦閉めたら、閉めっぱなしになる。積極的にブラインドを開けて、会議の模様を外に見せたい!というインセンティブを持っている人はほとんどいないからだ。じゃあ、ガラスの意味ないじゃん、となる。

やっぱりガラスで、遮蔽したいときはふわっとしたごく普通のカーテンのほうが見栄えが良いと思う。シャッと閉めても、ユラユラしたシルエットなのでシャットアウト感が和らぐ。

そんなことを考えながら、あれこれオフィスを見て回っている。

(2022.11.10)

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください