LUUP、おそるべしだ。
気がついたら、都内いたるところにLUUPの電動キックボードが置いてあるポートがある。ポート場所を示すマップを見て、のけぞってしまったくらいだ。
誰だよ、こんな電動キックボードに乗りたがるやつは。
僕自身は電動アシスト付き自転車を愛用している。もっというと、「ハローサイクリング」のブランドで運営されているシェアサイクリングを愛用している。家の近くにポートがあって、少なくとも我が家にとっては便利だからだ。
東京都でも、山手線の内側は土地のアップダウンがかなりある。電動アシスト付きの自転車がないと気軽に移動できない場所が多く、都心に住んでいる人は大変だな、と思う。
電動アシスト付き自転車はとても快適だ。今じゃ、都心部であれば山手線のちょうど反対・・・つまり、最寄り駅から電車で30分かかる場所でなければ、自転車で移動するのが我が家の当たり前だ。
しかし困ったことがある。シェアサイクルは縄張りがものすごくしっかりしている、ということだ。我が家が愛用するハローサイクリングは都心部でのポート数がとても少ない。特に千代田区港区中央区新宿区などはその傾向が顕著だ。かわりに、真っ赤な自転車であるドコモバイクシェアの縄張りになっている。
シェアサイクルというのは、利用時間に応じてチャリンチャリンと課金されていく。なので、シュッと借りてシュッと返したい。「ちょっとお店でご飯を食べよう」というときでさえ、一旦は返却したいくらいだ。うっかりカフェで小一時間くつろいでいたら、自転車代金で数百円かかっていた、というのはバカバカしいし気持ちが落ち着かない。
なので、ハローサイクリングとドコモバイクシェアの縄張りが分かれている状況にはとても困っている。相互乗り入れしてくれないかな、と利用者としては思うのだが、ハローサイクリングはソフトバンク系列の会社なので、無理だと思う。ドコモとソフトバンクが仲良くやるメリットがない。
そんな中、これまでの勢力分布図をガン無視して勢力拡大しているLUUPを見て、僕は驚愕したのだった。これだったら、都内まんべんなく網羅しているぞ!と。電動キックボードなので値段は高いけど、行く場所に応じてこれを使うことも選択肢の一つにできそうだ。
そんなわけで、LUUPの会員になってみた。
月額定額課金はないので、使った分だけ課金される。なので、とりあえず会員になるのは怖いことではない。
ただ、値段はやっぱり怖い。なんと、1分15円かかる。つまり1時間借りたら、900円。恐るべきことに、カーシェアで車を借りるのと同等の値段がかかるのだった。すごい。高等遊民の乗り物だ。
会員になるとき、道路交通法の確認テストを10問、100%正解しないといけない。1問でも不正解があると、再テストになる。
僕は電動アシスト付き自転車で満足していたので電動キックボードに懐疑的だったけど、ある日都心に用事があったので使ってみることにした。この手の乗り物が公共交通機関よりも優れているのは、目的地の眼の前まで乗り付けることができるということだ。電車に乗ったりバスに乗ったり、駅の人混みをかきわける必要がないのはずいぶんと気持ちが楽だ。
利用するにあたって、近所のポートをいくつか見て回った。そしてなるほど猛烈に普及するわけだ、と感心した。
写真はコンビニの店頭に広々としたスペースがポートになっているが、実際はもっともと狭いところがいっぱいだ。アパートの駐輪場の片隅など、クッソ狭いところをポートにしてあるのをいくつも見かけた。自転車と違ってペダルがない分、ぎゅうぎゅう詰めにすれば狭いスペースでも相当キックボードを置くことができる。つまり、効率が良いのだった。
ポート数がやたら多いこと、そして値段が高いことから、探せば近所で空き電動キックボードはすぐに見つかる。ハローサイクリングの場合、全然空き自転車が見つからず途方にくれるということが頻繁にあるけれど、LUUPはまだそこまで混んでいないようだ。
乗り方は独特だ。
最初の一歩を自分の足で蹴り出して、キックボードが前に進んだところでアクセルレバーを押すとモーターが動き始める。最初、使い方がわからず、駐輪場でアクセルレバーをカチカチやって「壊れているのか?」と困惑してしまった。
アクセルレバーはずっと押し続けないといけない。レバーから手が離れると、モーターは停止し減速する。それとは別にブレーキ、ウィンカー、クラクションが備わっている。
乗り方を学ぶのには数分もあれば十分だ。低重心の乗り物なので、バランスはとても取りやすい。
車輪の口径が子どもの三輪車並みに小さいので、段差を乗り越えるのは難しい。電動アシストではなく電動そのものなので、無理して段差を越えようとするとバランスを崩して転倒することになるだろう。あと、車輪の口径の割にホイールベースが長いので、小回りが全然きかない。車道を走る分には困らないけど、ポートに出し入れする際はちょっとだけ面倒くさい。
そういう車体特有の癖さえ理解すれば、あとはシューッと爽快に街中を走れるか?というと、そうではない。
ナンバープレートが付いている軽車両とはいえ、所詮は電動キックボードだ。2023年の夏からは免許証不要で乗れるようになるので、疾走できるわけがない。むしろ電動アシスト自転車よりもスピードは遅く、だいたい時速15キロ前後にリミッターを設定しているっぽかった。
こうなると、自転車で僕と一緒に移動しているいしの方がスピードが速い。単純に直線スピードで自転車の方が速いだけでなく、自転車の方が交差点で何かと小回りが利くからだ。
LUUPは「小型特殊自動車」という分類になるため、右折の仕方が独特だ。スクーターにおける「二段階右折」は有名だが、LUUPは2段階右折をしてはいけない。片側2車線以上の道路の交差点で右折したければ、横断歩道を歩行者と一緒に歩いて渡らないといけない。
つまり、右折しようとすると合計2回、歩いて歩道を渡ることになり、自転車とくらべてものすごくタイムロスをする。なので、目的地に向けて「できるだけ反時計回りに向かいながら進む(=左折が多い)」ルートを考えていく必要がある。うっかり時計回りルートを選んでしまうと、ほんとうにイライラするレベルで前に進まない。
ほかにも、都心の路地は一方通行が多く、「あっ、ここは入れない」という道が随所にある。僕はキックボードに乗っているとはいえ、気分はサイクリングと大差ない。なので、うっかり一方通行の道に入りかかって、慌てて道路の入り口でブレーキをかけることが何度もあった。
バッテリーの消費がとても早いのも悩ましい。充電100%の状態のものが借りられれば良いのだけど、そうでなければ道中どこかのポートで乗り換える必要が出てくる。電動アシスト付き自転車なら、バッテリーが切れても一応前に進める。しかし電動キックボードがバッテリー切れなら、ただひたすら自力で押していくしかない。実際、僕が使ったキックボードは途中でバッテリーが切れた。
結局、自転車に乗るいしに目的地へ先行してもらい、僕はバッテリー切れのLUUPを最寄りのポートまで押していき、その後乗り換えてようやく現地に到着した。彼女から遅れて僕が到着したのは15分後だった。
ということで、ポートがあちこちにあるという点において、LUUPは素晴らしいと思った。でも、それ以外で積極的に使いたいとは思わなかった。遅いし、バッテリーが切れるし、道路上での制約が厳しいし。そして値段が高い。
今後も、シェアサイクルで移動したいけど自転車が手配できなかったとき限定で、LUUPを使おうと思う。何にせよ、交通手段で選択肢が多いことは良いことだ。
(2023.04.22)
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