「東京備蓄ナビ」に従って備蓄をするのはかなりの難易度だった

結婚を機に、防災備蓄をするようになった。

家族を守ることが自分の責務だと考えるようになったからだ。・・・というと聞こえはいいが、一つ一つ揃える達成感とお金を使ってる背徳感が快感で、いそいそと備蓄用品を買い揃えたりしたものだ。これは散財癖の一種だろう。

それ以降、我が家に子どもがやってきてからは、年に一備蓄の見直しをかけている。

ミルクとオムツを備蓄していたものが離乳食に切り替わり、そして普通の食事へと変わっていく。備蓄の見直しの都度、備えるべきものがかわる。子どもの成長を実感し、嬉しい気持ちになる。

我が家においては、毎年年末が防災備蓄の点検時期だ。

本来、9月1日の防災の日にあわせて点検をするのがキリが良い。でも、暑い中作業をするのは嫌だ。

そして僕らは12月に結婚をし、備蓄を真面目に始めたのは12月からだ。そんな経緯で、12月が備蓄品の点検タイミングとなり、そして今年もその時期がやってきた。


今年は、「東京防災」というサイトの1コーナー、「東京備蓄ナビ」に載っている情報に基づいて備蓄品を整備した。東京都が運営しているwebサイトだ。

https://www.bichiku.metro.tokyo.lg.jp

このサイトでは、家族構成や住まい(戸建てか、マンションか)などの情報を入力すると、備蓄すべき物品の種類と数が例示される。漠然とした情報ではなく、具体的な数と種類を例示してくれるので、すごくありがたい。

・・・が、その備蓄すべき物の一覧表を見て、夫婦揃って眉を潜めてしまった。とんでもなく品数も、種類も多かったからだ。

これ、「備蓄」のレベルじゃないぞ。「買い占め」のレベルだぞ。

これまで、「災害時には3日分の食料や水を」と言われていた。我が家もその認識で備蓄をしてきた。

しかしこの東京防災は一歩踏み込んでいて、「1週間分の備蓄」を呼びかけている。そのせいで、これを真面目に捉えるととんでもない量、コスト、そして保管スペースが必要になってしまうのだった。

えええ、マジか。これ、どうするかなあ。

たとえば、我が家3人(大人が男女1名ずつ、未就学児1名)の場合、水だけでも59リットルが必要だという。2リットルペットボトルで30本・・・。

あと、アルファ米等の保存用ご飯59食は、一週間生き延びることを考えれば理解できるんだが、それとは別に無洗米8kgも用意せよ、とリストに書いてある。

それを見て困った。我が家、玄米しか買ってないんだよな。しかも最近農家さんから届いた玄米、たっぷりと30kgも倉庫に置いてある。とてもじゃないが、今更無洗米は買えない。

「無洗米は洗わずにお米を炊けるので、水不足のときに都合が良い」と東京備蓄ナビは説く。なるほどそうだと思う。玄米じゃ、災害時には炊くのに不自由だ。

あと、目を疑ったのが、「チーズ・プロテインバー等」とか「健康飲料粉末」といったものまで備蓄が推奨されていたことだ。「健康飲料粉末」ってなんのことだ?と思って調べてみたら、どうやら青汁のような飲み物を指すらしい。えー?まじで?なんで?

でも、これが最新の防災の考え方なのだろう。

能登のの地震のとき、「被災からしばらくしてお弁当の配布があったけど、ご飯と揚げ物だけで栄養の偏りがあった」という話を聞いた。大規模災害のときに、カロリーと栄養を考慮した弁当や食料の配布というのは大変だ。ましてや、衛生面の配慮をしなくちゃいけないのでなおさらだ。

なので、自宅待機が長期戦になることに備え、カロリーだけでなくビタミン・ミネラルも自分達で摂取できるようにしておけよ、という教えなのだろう。

「3日間頑張れ」の世界なら、炭水化物と水でなんとかイケる。なんなら水だけでも生きていける。しかし「一週間以上粘ってくれ」という状況なら、気合いでなんとかなる世界ではない。ビタミン、ミネラルなど考慮しなくちゃいけないわけだ。


「実際、東京に災害が起きて、一週間あればライフラインは復旧するだろうか?」と夫婦で考えてみた。

・・・無理じゃないかなぁ。だって、東京都だけで1,300万人が住んでいる。埼玉千葉神奈川という周辺自治体も同様に被災することを考えると、2,000万人を超えてくる。どこからこの人たちのための水、食料、電気、ガスなどを持ってくるんだ?

そもそも、日本の人口が東京に一極集中してしまったせいで、災害救助に出動する地方在住の人が足りなすぎる。だって、国全体の1/6くらいの人口が首都圏に住んでいるんだから。

そうなると、「階段を使って水を汲みに行かなくちゃいけないから、タワマン住民は大変」なんて考えること自体が呑気だ。それ以前に、給水車が近所までやってきてくれるのかどうかも怪しい。

場合によっては、暴徒化した人に給水車が強奪されるようなことも起きるんじゃあるまいか。「マッドマックス 怒りのデスロード」みたいな世界になるかもしれない。


「やっぱり1週間分のストックは必要だよねえ」と諦めて、我々は備蓄をすることにした。ただし、「東京備蓄ナビ」のとおりに完璧に揃えるのはさすがに無理で、「これは省略!」というのがいくつもでてきた。これはしょうがない。

最近、巷ではローリングストックという言葉をよく耳にする。我が家はこれまで完全に備蓄用品は備蓄用品として分けて管理していたのだが、今回はこのローリングストック方式に切り替えた。あまりに備蓄するものが多すぎて、備蓄専用として保管するのがもったいなかったからだ。

そうなると、これまで日常的な食べ物を保管していた棚の食料をはじめとし、ビニールぶくろやら電池やら軍手やら、あらゆるものを統合在庫として一元管理するようになる。

やるからには徹底するしかあるまい、ということでこの日は朝から家中をひっくり返し、いろいろなものを整理し、並べ替えた。

今回この大整理のために、ずいぶんと「ローリングストック用食料」などを買い足した。レトルト食品は基本的に無印良品のもので統一し、「賞味期限切れの備蓄品をしぶしぶ在庫処分で食べる」という残念な気分にならず、常に率先してローリングしたくなるようなラインナップにした。

普段遣いでどんどん食べて、減ったら都度買い足していくつもりだ。

長期保存を前提とした防災備蓄食料と比べて、値段は安いし種類は豊富なので良いことづくめだ。ただし、ローリングがうまくいけば、の話だけれど。

最大の弱点は、あれっ!?というほど賞味期限が短いものがあることだ。

僕の登山用行動食も兼ねて、プロテインバーをあれこれ買った。「東京備蓄ナビ」でも必要だと書いてあるから。

僕が主力製品として最近の山歩きで重用している、「1本満足バー プロテイン」は、短いものだと5ヶ月程度で賞味期限切れだった。

今回買ったものの中では、最短で2025年3月に賞味期限切れ。おい、すぐじゃないか。36本入りの箱を買ったのに。

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他のプロテインバーも軒並み賞味期限が短い。半年は持つけれど1年はもたない、という感じ。

いや、もともと食べ物って概ねそんな感じなのだろう。無印良品のレトルトだって、半年強しかもたない。

「備蓄用食料」と銘打っていない食べ物を備蓄した場合、かなり高速にローリングさせないとどんどん賞味期限切れの山を作り上げてしまうことを今更知った。

プロテインバーは軒並みカロリーが高い。そりゃそうだ、僕が山歩きの際の行動食として選んだものなので、どれも1本あたり200kcal弱ある強者だらけだ。なので、「小腹が空いたのでおやつに1本食べよう」という気にはなかなかなれない。

かといって、ご飯代わりにこれを食べるのも、ちょっと違う気がする。

ならばどんどん山に登って、どんどん食べていかないと。。。

プロテインバー、食べた後の登山は体がシャキシャキ動いてくれるのでありがたいんだけれど、やっぱり「1本満足」じゃないんだよな。しばらくするとお腹が空く。


ひとまず現段階で備蓄品の整理を終え、「これは近日中に買い揃えていこう」というリストも作り、一旦この日は作業を終了した。

つくづく思ったのだが、1週間分の備蓄って、多くの家庭では出来ないんじゃないか?と。

最初の1回目はできても、期限切れが次々訪れる水や食料を前に、ローリングがうまくいかなくなって結局やめちゃう家庭も多いのではないか?と。

そもそも、備蓄なんて面倒だからやらないよ、という家庭が東京にはかなりいるはずだ。

そんな中、首都直下型地震をはじめとする災害が起きたらどうなるんだろう?

行政が備蓄している食料や水はすぐに底を尽き、遠方からの支援物資はなかなか手元に届かない状況が起きそうだ。

そうなったとき、水と食料が足りない人たちが暴徒と化したりしないだろうか?

なので、我が家はまだまだ備蓄道半ばだけれど、いずれ完璧に備蓄ができたとしても口外しないようにしよう、と夫婦で話し合った。「あの家は水と食料があるらしいぞ!」と噂され、自宅を襲撃されたらたまらないからだ。

もし、友達や同僚と「災害時の備蓄、どうしてる?」という話題になったとしても、「やらなくちゃ、と思っているんだけど、まだまだだねぇ・・・」と言ってお茶を濁すことにした。

防災グッズの他に、「敵から身を守る」ための武器も用意しておかないといけないのか・・・?などと考えだしたら、本当にきりがない。

(2024.12.22)

コメント

コメント一覧 (2件)

  • 全世界に発信しといて今さら何を言う。
    遅ればせながら、あけましておめでとうございます。実り多き1年でありますように。

  • zennさん>
    おめでとうございます!
    「備蓄していることは内緒にしよう」と言っているくらいなので、まだまだ我が家は備蓄が不十分なのです。
    生きるために最も大事な水の備蓄でさえ、ぜんぶ用意するのを諦めたくらいです。
    風呂の水を抜かないで保存しておくと良い、なんて昔っから言われていますが、そんなことをやったらお風呂がヌメヌメしそうなので我が家ではやっていないです。

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