すみれえ

2007年01月21日
【店舗数:217】【そば食:390】
広島県広島市南区宇品御幸

天ぷら盛あわせ、ざるそば、ビール(キリン中瓶)

宇品の住宅街

今回は広島にある一風変わった蕎麦屋さんを訪問する、というテーマで南区宇品に向かった。

美味い店とかそうでないとか、正直最近はどうでも良くなってきた。評論家じゃないわけだし、マニアになるつもりも全くない。ただ単に僕は、「蕎麦喰い人種」で居続けたいだけだ。だから、面白そうな蕎麦屋の情報を聞きつけたら、ぜひ行ってみたくなる。

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今回、その「一風変わっている」お店というのは2軒あり、その両方ともが住宅地に完全に埋没しているお店だ、ということだった。「通りすがりに発見」なんてことはあり得ない、そんな路地裏にある、普通の民家と変わらないようなお店。それが偶然か必然か、2軒も宇品、しかもそれぞれの店が徒歩数分の距離にあるというのだ。これは大変に興味を惹かれた。

広島の住宅地を歩いてみるとよく分かるが、広島の町にはお好み焼き屋さんが非常に多い。人が住むところ、お好み焼き屋は必ずある。数百メートルおきには必ずあるといって良いだろう。そんな住宅地のお店はおばちゃんが切り盛りしており、民家の一部をお店に転用していることが多い。そんなわけで、「住宅地に紛れ込んだお好み焼き屋」というのは何ら珍しいことではない。

それは、理解できる。

しかし、「住宅地に紛れた蕎麦屋」とは一体?

もちろん、出前もやります、カツ丼やカレーもメニューにありますといった庶民的な蕎麦屋さんだったらそういうシチュエーションの可能性もあろう。しかし、それなりに蕎麦の味で評価されているお店だったら話は別だ。今まで、「山奥にある隠れ家的なおいしい蕎麦屋」という場面には何度も出会ってきたが、「都会にある隠れ家的な」というのはあまり経験が無い。もちろん、先日訪れたばかりの「たつ吉」なんてのも隠れ家的とは言える外観と立地条件だったが、それよりもさらに今回のお店はディープであると聞いている。

非常に楽しみだ。

事前に地図を熟読し、位置関係を頭にたたき込んで、現地に向かった。

多分この路地だったと思うが・・・と、路面電車通りの華やかな通りから一本、二本と奥に侵入していく。「侵入」とか「分け入る」という表現がぴったりの感じだ。こんな道、当然だけど通ったこともない。今後も、この蕎麦屋に訪問する事以外通ることはないだろう。

はははっ、ごく普通の住宅地だ。お昼どきだというのに、殆ど人通りがない。しかも、車が二台すれ違えないくらいの狭めの道。こんなところに蕎麦屋なんて・・・道を間違えたかな。

すみれえの看板

あ。

「手打ちそば すみれえ 10m先」

って看板が出ている。本当にこんなところに蕎麦屋があるというのか。

地図で事前に調べていて頭では理解していたものの、やはりこの事実には衝撃を受けた。ここ、全く商売っ気がない場所なんですが。

しかも、「10m先」という超至近距離という表示が僕を混乱させた。え?え?10m先ってすぐそこだよな。どう見ても普通の民家しかないんだけど・・・。

すみれえ外観

あああ!

普通の民家なんだけど、なにやら玄関に暖簾が下がっているところがある!

しかも、エントランスの植木のところに「手打そば」という垂れ幕が下げられている。

これが目指していた蕎麦屋「すみれえ」だった。

さりげなさ過ぎる・・・。案内看板を交差点の塀に掲げたり、店先に垂れ幕を掲げているので商売する気は十分にあるのだろう。「店なのかどうかもわからない」というほど、偏屈なお店ではない。しかし、この立地条件はシビレすぎますぜ。ここまで民家民家したところにある蕎麦屋は初めてだ。

いやあ、無駄に興奮してきたぞ、僕。

すみれえ玄関

さりげないなあ。

民家の玄関としてはちょっと違和感があるサッシ状の入口。その点、ちょっと周囲の家とは異なった外観にはなっている。しかし、そうだといっても蕎麦屋の色気がある引き戸というわけでもない。

中に入ったらニャンコが玄関でお出迎えしてくれるとか、コタツで蕎麦を手繰るとか、お婆ちゃんが割烹着着て「いらっしゃーい」とお出迎えしてくれるとか、いろいろアットホームなことを想像してしまう。

すみれえ店内

やや。

意外、意外。店内は普通の民家じゃないぞ。きりり、と引き締まった飲食店になっていた。外と中では全然気配が違う。油断してお店に入ると一刀両断されそうな、そんなギャップを感じる。

蕎麦屋・・・というより、むしろお寿司屋さんといった風情。テーブル2卓に、カウンター5席。カウンター席の向かいには、カウンター越しに厨房がある。

さすがにラーメン屋のように、カウンター席越しにキッチン、というわけにはいかないか。蕎麦屋で調理場をお客さんに丸見えにしているお店というのは、なぜか非常に少ない。

いや、それは兎も角。

驚きつつも、なんだか恐縮しちゃってカウンター席の一番端、隅っこの方に座った。ニャンコが「にゃー」といってお出迎えしてくれるなんていうアホな妄想をたくましくしていたので、このインテリアに動揺してしまったのだった。ええと、さて、僕どうしよう。

酔心が飾られてある

自分の座った席の正面には、お酒が何本か飾られていた。

「横山大観終生愛飲の酒 酔心」

なんて箱が置いてある。

その他にも、広島護国神社の御神酒なんてのも飾ってあった。売り物なのかと、お品書きを確認してみたが、さすがにこれは売り物ではなかった。

お店はまだ新しく、清々しい雰囲気だ。お客の数も控えめで、静かに一時を過ごすにはとても良さそうだ。えーと、どうしようかなあ。

昨晩、お酒を飲み過ぎてしまいちょっと今日はお疲れ気味。だから本日はお酒を止めておこうと思ったんだけど・・・ここで蕎麦をずるずるッと手繰ってそのまま退出する、というのは勿体ない気がしてならん。

ビールを飲む

というわけで、ビールを頂くことにした。銘柄はキリンラガー、中瓶。

付きだしで千枚漬けが出てきた。千枚漬けを頂きながら、ビールを飲む。

ちょっとまだお店が新しすぎるため、ちょっと堅苦しい雰囲気が店内に漂う。もう少しアンニュイな感じにこなれてくるまではもう少し時間の経過が必要かもしれない。

さて、酒肴はどうしたものか。

このお店、住宅地の中にあるという立地条件から「飲み助向け」の料理は少ないのではないか、と想定していた。しかし、実際は決して多くはないものの、ちゃんと酒肴は用意されていた。

焼き味噌、出汁巻き玉子、にしん棒煮、天ぷら盛り合わせ、鴨焼。

なんだか天ぷらを食べたい気分になったので、天ぷらを注文してみた。

天ぷら盛り合わせ

待つことしばし。一本目のビールを空けたころになって天ぷらがやってきた。

さすがに常時オーダーが入るわけではないためか、天ぷら油のスタンバイがまだできていなかったようだ。ちょっと時間を要した。

「あらー。ビール空になっちゃった。飲むテンポが合わなかったなあ。じゃあモウ一本ビールをこちらに」

2本目を注文してしまった。あー。

天ぷら盛あわせ、800円。海老、ねぎ、パプリカ、ごぼう、椎茸、玉ねぎがきれいに盛りつけられている。キャンプファイヤーでも始めたくなってきた盛りつけだ。彩りもよく、おいしそう。

ただ、天つゆが無い。ええと、一体どうやって食べれば良いのやら。店員さんに「ええと、これってどうやって食べれば良いんですか?そのまま頂いちゃって良いんですか?」と聞いてみたところ、「お塩が盛られてますので、そちらを使ってください」と言われた。よく見ると、パプリカの前に確かに塩が盛られていた。白い紙が敷いてある上に載せられた塩だったので、全く気づかなかった。

食べてみると、さくさくとした歯ごたえがおいしい。ああ、ビールもう一本頼んで幸せでございます。ごぼうの香り、椎茸のうま味なんかがよく表現できていて、結構至福の一時。

ざるそば

さて、いつまでもダラダラと飲んでいられない。客席はお昼時だったけど混み合うことはなかったが、すっと蕎麦を食べて退席しないと見苦しい。

お品書きには「本日限定 ねぶかそば(根深ねぎと生あげの温かいそば)」という記載もあり、おおいに食指が動いた。しかし、ここはまずデフォルトのざるそばを注文した。

ざるそば、700円。

比較的たっぷりのうれしいボリューム。ただしつゆは非常に少ない。薬味は長ねぎとわさび。

蕎麦アップ

翁系の蕎麦だなーと思ったら、過去に高橋名人の指導を仰いだことがあるそうだ。

店のインテリアを見た時点で、「あ、このお店の蕎麦はきっとうまいだろうな」という直感があったが、確かにおいしかった。つゆも、香り高くて、まろやか。住宅地の中にある蕎麦屋とは思えない、熟成されたうまさがあった。ちょっと香りが高すぎる気もしたが、隠れ家的蕎麦屋なんだからそれくらいインパクトがあった方が良いかも。

これだけの技術を持っているなら、もう少し値段を上げて、さらに良い蕎麦粉を使うというのも良いのではないかと思うが、そうするとさすがにお客さんが来なくなってしまうか。難しいところだ。

こういう「草の根」的な立地条件でも美味い蕎麦屋ができている、というのは広島の蕎麦がそれだけ底上げされ、立ち上がってきているということだ。こりゃ、今後広島の蕎麦から目が離せないかもしれないぞ。

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