饕餮庵

2007年02月05日
【店舗数:222】【そば食:395】
広島県呉市広本町

ちょい飲みセット、冷酒1合、そばがき、木の子天ぷら、釜あげそば(田舎生粉)

なんて読むんだこの店は。

よくわからん店名のお店がなんでも、美味いらしいという話を聞いた。場所は、広島市からちょっと離れたところ、呉市の広にあるんだという。

広ねえ・・・。なんやかやで、JRに乗っていくと1時間はかかってしまう場所だ。おいそれといくようなところではない。しかし、なんだか絶賛されている口コミを耳にし、目にするにつけ「これは少々遠くても行ってみるべきではないか」という気にさせられた。店名もよくわからんし。

店名については、「とうてつあん」と読むらしい。なんという難しい読み方だ。そもそも見たことすらない漢字だ。こんな漢字、存在してるんか。漢字検定やってるわけじゃないんだから、こうもお客さんに理解できないような店名をつけなくっても、と思うのだが、お店としては拘りがあってこのことだろう。まあ、お蕎麦がうまければいいや。

で、そのとうてつ庵、広駅から1.6kmほど歩いていかなければならない。どこまでもストイックなんである。「よーし」と、蕎麦屋にいくにしては平均以上の気合いを入れつつ、JRに乗り込む。

広島駅の立ち食い

広島駅で山陽本線から呉線に乗り換え。まだ先は長い。乗り換え時間が20分ほどあるので、せっかくなので駅の立ち食いでも立ち寄ってみることにした。以前、1番線ホームの立ち食い蕎麦は食べた事があるが、7番線ホームのお店には入ったことがない。違う経営者かもしれないし、ここはコレクター的意味合いも込めてそばを食べてみることにする。

(後で気づいたが、在来線ホームにある立ち食いうどん・そば屋は全部同じ経営母体だった)

立ち食いうどん屋の自動食券機

ええと・・・。

関東近辺で見かける押しボタンの配列とは違うので、戸惑う。関東だと、1つのボタンで「そば・うどん」を兼ねていることが多い。しかし、このお店の場合、そばとうどんが別々のボタンに配列されている。しかも、さすが関西圏だけあって、「うどん」の方が上に位置している。そばはボタン中段に配列。

天ぷらそば・うどんが320円というのはお安い。転じて、一番高いメニューがスペシャルそば・うどん。これが580円。肉、天ぷら、きつね、玉子入りなんだそうで。そりゃあスペシャルだが、そこまでごちゃごちゃ入ったのはいらんなあ。その値段だったら駅の改札を出てお好み焼きを食べたくなる。

それはともかく、やはりここは王道である天ぷらそばを注文しようではないか。お財布から小銭をじゃらじゃらと取り出して、ジャストな金額を自販機に入れて、天ぷらそばのボタンをぽちっと。

天ぷらうどん

店内に入って、食券をおばちゃんに渡してできあがりを待つ。

あれ、ちょっと待ておばちゃん、ボクの目にはアナタが調理しているのは真っ白なウドンちゃんに見えるんですが。あれれ。ボク、蕎麦を頼んだはずだったのに。

しばらく動揺しながらその様子を見ていて、思い出した。ああ!食券機の左上のボタンって、天ぷらうどんだったんだ。注文すべき天ぷらそばは、左上から3列目。

いつもの「関東風」の癖が抜けきらなかったぁぁぁ。配列が違うって事を把握しておきながら、うっかりしてしまったぁぁぁぁ。

激しくがっくりしてしまった。とほほ、ここでウドンは食べたいと思っていなかったのに。 別に腹が減ったから注文したんじゃなくて、蕎麦の食べ歩きコレクションのレパードリーを増やす程度の意味あいだったのに。ウドンじゃ意味ないじゃん。

人気ランキング

なんだかわびしい気分になりながら壁を見たら、人気ランキングが張り出されてあった。

天ぷらうどん・そばが一位なのは分かるが、2位がラーメンというのは意外でござんしたな。てっきり、僅差で天玉うどん・そばがくると思ったのだが。

天ぷらうどん・そばの回数券

面白いのは、回数券が売られているということ。かけうどん・そばの回数券ではなく、天ぷらうどん・そばの回数券というのも面白い。11枚つづりで3200円。1杯分=320円お得。頻繁に利用する人にとっては必携アイテムといえよう。

以上宣伝おしまい。

新広駅

ごとんごとんと電車に揺られて幾千里、到着したのは新広駅。今回目指す「とうてつ庵」は、新広駅と広駅のちょうど中間くらいに位置するので、新広駅から歩いて行くことにする。ここから約1.6km。

郊外の道路を延々歩く

いやぁ、歩くねぇ。

こういう郊外型の道路と店舗の中に、そげに絶賛される蕎麦屋があるんかいな、と不思議な気持ちになる。ドライブスルー完備!なんていう蕎麦屋だったらどうしよう。そういえば、ついさっき、ドライブスルーのモスバーガーもあったし。

とうてつ庵

と、思ったらあったぁ。こ、これがとうてつ庵ですか。

どこにもフリガナが書いていない。あくまでも男らしく、この難しい漢字を読め!理解しろ!と主張する潔さ。店名の時点ですでにお店の営業戦略上損しているような気がするが、そこが男ってもんですな。

横に「手打ちそば・うどん」という小さな看板があるからまだ理解できるが、もしこれが無かったら一体何屋だかさっぱりわからない。盆栽屋です、なんて適当なうそついても納得されちゃうかもしれない。

「営業中」の札

入口には、ちゃんとアサヒビールから提供されたと思われる「営業中」の札が。

ここが飲食店であるということがよく分かる。

店内は曇りガラスになっていて、どのようになっているのかまでは伺い知れない。怪しい。

とうてつ庵店内

店内に入ると、比較的長細い客席が広がっていた。あまり蕎麦屋といった漢字ではなく、なんだか一般家庭のダイニングキッチンが広くなりました、といった感じ。

お品書き1

ああ、白木の家具がいくつも並んでいるからそういう印象を抱いたのかもしれない。

お品書き2

ただ、お品書きを見ると生半可なモンじゃないぞ、ということがわかる。「当店は、そばの麺を選べます」と書かれているのだった。すなわち、うどん、中華麺、きしめん、そうめんの中から好きな麺を選ぶことができるというわけだ。これは画期的だ。中華麺で蕎麦を、といってもそりゃ単なるラーメンじゃん、という何がなんだかわからない発想の転換だ。

というのはうそで、要するに、蕎麦は蕎麦でも「二八」「生粉そば」「田舎二八」「田舎生粉」「変りそば」がほぼ全メニューで選べるということだ。ということで、せいろそばだけでも5種類存在するし、同様にニシンそばも5種類ある。一部、「このメニューは生粉そばは駄目よん」というのが存在するが、ほぼ「メニュー数x5種類の麺」が選べるという、一体何十種類細かいメニューが存在するのよ一体、といった品そろえを実現しているのであった。

唯一、カレー南蛮だけは生粉打ちそばの適用は禁止にされていた。せっかくの風味を殺すカレーに入れるのはまかりならん、ふざけんなコラ、ということなんだろう。そりゃごもっともだ。

各種そばについて解説が書かれていて、大変に参考になるので以下に転載させてもらう。
■生粉そば(きこそば)(おすすめ)
外皮を取り除いた、丸抜きそば粉100%の細打ちのそば
冷たいそばではコシがあり、熱いそばではとても軟らかくなります。
熱いそばでは延びるのが早い。出された順に召し上がってください。

■二八そば
丸抜きそば粉八割と、小麦粉二割の普通の太さのそば。
どのメニューにも合います。小麦粉が二割はいると食感が変わります。
他のそばとの食感を、食べくらべてください。
■田舎生粉そば(田舎きこそば)(おすすめ)
黒い外皮も挽込んだ挽きぐるみの細打ちのそば。そば粉100%です。
細打ちの為のどごしも風味も良く、少しザラついた舌触りが心地よい。
■田舎二八そば
黒い外皮も挽き込んだそば粉と、小麦粉の二八の太打ち。
セイロでは硬すぎる程のコシだが、熱いともちもちした軟らかさになる。
噛みこんでいくと、そばの甘みが感じられます。
■変わりそば(更科のそば)
更科粉と小麦粉に抹茶等の色物を練り込んだそば。少量打っています。
粋な、のど越しの良いコシのあるそばで、セイロがおすすめです。
■うどん
中細の手もみ機械切り。熱いのでは軟らかく、ザルではこしが強い。
ゆがくのに時間がかかるので出てくる順番が遅くなることもあります。

さすがにうどんは機械で作ったか。そうだとしても、毎日これだけの種類の麺を打っているのだからご主人の苦労たるや相当なものだ。「いろいろ打った方が楽しいじゃないですかハハハ」なんて笑ってインタビューに答えられるような次元ではないぞ、これ。しかも、毎日廃棄ロスがどうしても発生してしまうわけだし。ご主人のこだわりは鬼気迫るものがある。

面白いのは、

そばの大盛りプラス300円 二枚目(麺のお代わり)はそば100円引き

なんて書かれている事だ。2枚、3枚とぜひ食べていってくださいねーという事だろうか。うん、確かにこれだけの麺の種類が用意されていたら、あれこれ食べ比べてみたいものだ。複数名でこのお店を訪れて、あれこれ注文してみるというのが楽しそうだ。厨房殺しなオーダーになってしまうけど。

ヱビスビール小瓶+温泉玉子

お昼しか営業していないお店であるし、ロードサイド店ということもあって酒肴メニューが置かれていないのではないかと心配していた。だが、店内に「車で来た人にはお酒はだせませんぜ」的な注意書きが張られているのを見て、「あ、これは大丈夫」と安心。

ふふふ、わざわざここまで1時間かけて電車で来て、さらに20分近く歩いてきたんですぜ。ふう、疲れた。現在の僕は体調がすこぶる悪く、電車に乗ったり人混みの中にいること自体が大変な苦痛な日々を送っているのだが、それを押しての来訪だ。十分にくつろがせてもらおうじゃないか。

というこちらの気持ちを察してか、おやあ?お品書きの下に「ちょい飲みセット」なるメニューを発見。何なんだ、この居酒屋みたいなネーミングは。

見ると、「ヱビスビール(小瓶)+温泉玉子500円」「熱燗ミニグラス+温泉玉子500円」なんだそうで。面白い組み合わせだ。そりゃぜひともちょい飲みさせてもらおうじゃあございませんか。

ヱビスビール小瓶+温泉玉子の500円セットを注文。

うーむ、なんだか蕎麦屋っぽくないな。「ちょい飲みセット、ください。ビールの方で」なんて店員さんにオーダーする。しかも、真っ昼間から。照れるな。

温泉玉子

出てきた温泉玉子。

ビールをちびちび飲みつつ、「さあいつ黄身を割ってやろうか」という悪魔のささやきとスプーンを使った微妙な物理的脅迫はサドっ気をくすぐるものである。いいからさっさと食べなさい、アンタ。

そばがき

ここに到着するまでに体力を使いすぎてしまったせいか、あまり食欲は無かった。とはいっても、「平日のみ」と書かれたそばがきを発見したので、そりゃもう頼まざるをえないでしょう、ということで注文してみた。520円。平日昼間に、このお店に訪問できるなんてことは今後二度とないだろうから。

で、出てきたそばがきは、なんとも不思議な色合いだった。かきっぱなしではなく、蒸したタイプのそばがき。そば湯に浮かぶ形で、木の葉風に葉脈的な筋が入れられているのだが、その表面がなにやら茶色い。遠目で見て、まさかチョコレートが乗っているのでは、とドキリとしたが、近くで見るとこれはどうやらバーナーで炙ったものらしい。初めてみたぞ、あぶりそばがき。

早速そのあぶった部分を食べてみた。なるほど、香ばしさがやや増して、これはおいしい工夫であった。すげー美味いので他の蕎麦屋もぜひマネせよ!というほどのものではないけど、一工夫がとても好ましい。好きですこれ。

冷酒

しまったなあ。

ちょい飲みセットは、あくまでも「ちょい飲み」なんだった。小瓶でビールが出て来ちゃっても、僕にとっては物足りないんだよなあ。

そばがきが出て来ちゃったので、ここは冷酒一合520円を注文してみた。

ここで冷酒を頼んじゃうと、想定されるシチュエーションとしては「お酒を飲んでいるうちにそばがきが足りなくなってくる」→次の酒肴を注文するという悪魔の展開になるんだよなあ。

木の子天ぷら

で、悪魔だか天国だかしらんが、まあ想像通りの展開ってやつで。

木の子天ぷら350円。

これが出色のでき。おいしかったなあ。できたてでサクサク、パリパリしているというのは当然として、いろんなきのこ類の風味と歯ごたえが玉手箱のように楽しめるんであった。えりんぎ、しめじ、しいたけなど。キノコ類のつなぎとして使っている細長いものはじゃがいもだろうか?これは、スナック感覚でとてもおいしかった。ビールがまた欲しくなってしまったくらいだ。

田舎生粉の釜あげ

おっといかん、蕎麦を食べに来たんだった。

先日、安庵で釜あげそばの美味っぷりを体験したので、今回も釜あげで蕎麦の風味を独り占めしてやろうと手ぐすねをひいて待っていた。注文したのは、田舎生粉の釜あげ。これだったら、怒濤の蕎麦が楽しめそうだ。

注文したら、店員さんから「蕎麦が軟らかくなっちゃいますけど、いいですか?」と、やや「その注文はやめといた方が良いぞ」的な反応があったのが気がかりだったが、構わずオーダー。

出てきたのが、こちら。

あー、なるほど。お品書きにそういえば、「細打ち」であるって書いてあったな。生粉打ちなので、ぼそぼそしないように麺を意識的に細くしてるんだ。いかん、確かにこれは早く食べてしまわないと麺がずるずるになって、ぷちぷち切れてしまうぞ。

さっきまでのリラックスムードはどこへやら、あわてて蕎麦をかっくらう。

んー。美味い。美味いんだけど、これはオーダーミスだったなあ。びしっと冷水で締めた蕎麦のほうが、この細打ちの田舎生粉打ちそばには向いていたわ。食べた瞬間は風味をふわっと感じるんだけど、細いせいもあって、熱で軟らかいせいも相まって、なんだか頼りない味になってしまっているのであった。惜しい。惜しすぎる。

「あー」

と思いながら蕎麦を食らったが、さてもう一杯お代わりをしようというほど胃袋に余裕もなく、ちょっと長っ尻すぎる迷惑客になりそうな気もしたのでここでやめにしておいた。うーん、このお店の蕎麦、美味いかマズイかは態度保留。きっとおいしいんだと思うけど、よくわかりませんでした。また機会があったら訪問してみたい。

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