そば処 けやき

2009年01月15日
【店舗数:229】【そば食:406】
群馬県吾妻郡中之条町

もりそば

吾妻路

鳥追祭のため臨時休業だそうだ

所用のため群馬県の沢渡温泉に2泊山ごもりすることになった。平日だけど、所用というのはえてしてそういうもんだ。だから、単なる遊びというわけではない。とはいえ、交通手段なり食事なりは自由なので(泊まる場所も別に沢渡温泉である必然性はないのだが、個人的趣味でそう決めた)、中之条界隈の飲食店情報を収集してみた。前日夕方になってからの行き先決定だったため、大あわてだ。もう、目に付いたお店に行くしかあるまい。

失礼ながら、中之条という町の飲食店についてはあまり良いイメージがない。草津温泉に行くついでに通る場所だが、そのせいか一見さん観光客向けの「一発屋」が多そう、という印象。これはあくまでもおかでんの「印象」であり、明らかに「偏見」である事を予め言っておく。ただ、実際何度か中之条のお店で痛い目に遭ったことがあるのも事実。でも、全ての店を食べたわけではないので、総合評価なんてできる立場にはない。

そんなおかでんの印象を「ん?昔とひと味違ってきたぞ、中之条!?」と思いとどまらせるサイトに今回は出逢った。サイト、といっても中之条町の公式サイトなのだが、どうやら今中之条は蕎麦を前面に出していこうとしているらしい。「なかのじょう経済活性化プロジェクト」なる組織があり、そこが「めんくいの郷 なかのじょう」というキーワードでただいま絶賛売り出し中。「蕎麦を食べて、温泉へ」とか「つるつる食べて、つるつるお肌」などのセールストークも冴え渡る。中之条町といえば、天下の名湯四万温泉を初めとし、沢渡温泉などを有する湯の郷。それに加えて、今度は蕎麦を、というわけだ。

ご丁寧にも「中之条手打ちそばマップ」なるものも制作されており、9軒のお店が地図上にプロットされてあった。こういうのを見ると、おかでんは俄然ガッツが湧くタイプなので、「じゃあ今回は中之条で蕎麦食べ歩きを」という方針で決めた。

とはいっても、9軒全てが最高に美味いわけではあるまい。色々ネットで情報収集してみるが、情報の絶対数が少ないためあまり参考にならず、困った。ただ、中には残念そうなお店もあるようなので、そこは微妙にスルーしつつ、お店を選んだ。

目指した先は、中之条の中心地にある「吾妻路」というお店。よくわらんが、なんか美味そうだった。

いったん通り過ぎてしまい、おかしいと思いネットブックを開きその場で検索。行き過ぎた事を悟り、慌てて引き返した。ホント、ネットブックを手に入れてからというものは、情報収集が容易になったわ。革命的といえる。ただし、非常に高額なFOMA HIGH-SPEED定額プランという怖いおにいさんが後ろに控えているんだけどな。利便性以上の落とし前をつけさせられるのが哀しい。

それは兎も角、お店に着いてみてびっくり。古い倉で作られたお店で風情がありそうだが、その入口には臨時休業の張り紙が。運悪し。でも、「鳥追祭の為」って理由がよくわからん。一体なんだ、鳥追祭って。ニワトリを追いかけ回すお祭りなのか?しかも、店を休業しなくちゃならんほど準備に余念がないくらいシビアな祭りなのか?謎だ。謎すぎる。

スペインで、「牛追い祭り」という有名なお祭りがある。世界一デンジェラスと言われている祭りだ。実際のところは、「牛を追う」のではなく、「闘牛に街中追いかけ回される」祭りであり、毎年けが人、最悪は死者まででる祭りのこと。これとの関連性はあるのだろうか。

でも、少なくともブロイラーに蹴殺される心配はなさそうだ。となると、出てくるのはエミューとか、ダチョウとか?

謎は深まるばかり。しかし、後で「そば処けやき」のおねーさんに聞いてみたら、長寿を祝うお祭りで、毎年1月14日に開かれているものらしい。もともとは田んぼや畑を荒らす鳥を追い払う、ということで豊作祈願のお祭りだったらしいのだが、今ではみかんを家からばらまいて外の人に配ったり、巨大な太鼓をお神輿のように担いで町を練り歩き、厄除けをするお祭りになったらしい。しらんかった、そんな祭り。

こういうお祭りって、観光客目当てに「毎年○月の第○土曜日」などと暦にあわせて日付が変化するものだが、ここ中之条の「鳥追祭」はかたくなに「毎年1月14日」と決まっているらしい。頑固一徹で大変によろしい。客に媚びていないのが、またイイカンジでございます。

とはいえ、1月14日といえば昨日の話。おい、翌日になっても店をしめていやがりますか。後片付けが大変なのか、打ち上げで飲み過ぎてご主人潰れたのか。いずれにせよ、年に一度のお祭りということでタイミングが悪かったと諦めるしかない。別のお店に行くことにした。

凍結した道

目指した先は「そば処けやき」というお店。そばマップに掲載されていたとはいえ、特にこれといって惹かれる点があったわけではない。ネットでの情報量も非常に限られていて、正直よく分からない。しかし、「地元産の十割蕎麦を出す」事、「町営である」というおもしろさ、そして「道の駅併設なので道が分かりやすい」ことからここを選んだ。道の駅なので、数キロ手前から案内表示が出ている。それに従って行けば大丈夫。いちいち、ネットブックを片手にうろうろしなくて済む。

で、いざ現地に突撃してみたのだが、中之条市街から山中に潜っていった先に目指す地があったため、みるみるうちに周囲には雪が。しまいには、地面が全く見えない雪道に変わり果ててしまった。おい、今乗っている車はノーマルタイヤだぞ。むちゃすんな。

これ以上はチェーンを出すしかない、でもチェーン出してまで蕎麦食うのは面倒なので却下、という気持ちでいたら、目指す目的地に到着。

巨大なケヤキの木

目指す蕎麦店の前には、巨大なケヤキの木がそびえていた。いや、正確に言うと途中でぽっきり折れているので「そびえているような、そびえていないような」中途半端な状態だが。

説明書きによると、これは「親都(ちかと)神社の大ケヤキ」と呼ばれているそうで、県第二位の巨木なのだという。ご神木としていろいろ由来が書かれていたが、びっくりする内容では内容ではないので割愛。

なるほど、「そば処けやき」という名前は、このケヤキから由来しているのだなとようやく気付いた。

古民家を移築した建物
道の駅って、本来都市間交通の要である道路脇にあるものだと思っていたが、ここの道の駅はあんまりそういう気配がない。特に冬になってしまうと、雪が積もるためにおかでんのような大都市圏・へたれノーマルタイヤ車には縁遠い場所だ。なぜこんなところに道の駅を、と思う。中にはいると、売られているのは地元の野菜など。特にこれといって特徴はない。独特な野菜を売っているわけでもない。冬という季節柄しょうがないのだが。
ただ、蕎麦店を併設しているという点では特徴的だ。お店は道の駅の本施設から独立して存在し、古い民家を移築した立派なもの。立派な茅葺き屋根だ。

けやき店内

中にはいると、たたきの客席と、お座敷の客席。結構広い。

たたきは寒いので、お座敷にあがる。でも、やっぱり寒い。そりゃそうだ、外は気温2度。こういう時、和風建築は寒さに滅法弱い。

天井が高い分、寒い

建物は重厚感のある梁があったりして、良い雰囲気。

民芸調の蕎麦店は嫌いだが、民芸「調」ではなく本当に民芸の領域の蕎麦店は好きだ。

ただし、天井が高いのでこれ、相当冬場は暖房効率悪いだろうなあ。

かといって、天井に扇風機つけるわけにもいかんし。

でも、夏はとても心地良さそうだ。

地粉を使っているとのこと

写真に書いてある通り。特に説明不要。

なるほど、そうですか。ではその素朴なそばとやらを食べさせていただきます。

お店のお品書き

お店のお品書き。

取り立てて珍しい品物はないが、とりあえず記録用に撮影。

もりそばが600円なのに対し、かけそばが650円なのがちょっと気になった。もりとかけは同値段というのが一般的だと思ったが、違うらしい。50円高いのは何か理由があるのだろうか。

さらに、天もり700円に対し、天かけ800円。今度は100円差だ。この差は一体何?天もりの方が、器の数が一枚増える分面倒だと思うんだが、そうではないということか。かけつゆにコストがかかっているのか?

いろいろ気になるところだが、既にこのお店を訪れる前に、「日本一のもつ煮定食」を食べてきたばかり。食欲はあまりない。無難にもりそばをオーダー。本当は「そばがき500円」が気になったのだが、そばがきはおなかが必要以上にふくれるから却下。車運転しているからお酒飲めないし。

みそだれ700円

壁には、「冬季限定!味噌をベースにゴマの香りとおろし添え。みそだれ700円」という張り紙があった。

これは、「味噌のたれ」だけが700円なのか、それとも「味噌だれで頂くもりそば」が700円なのか、一瞬分かりかねる表現だ。頼んでみたら、タレだけ出てきてびっくり、なんていうのは悲しい。しかし、「大盛り800円」と小さく書かれているところをみると、みそだれ+蕎麦、なのだろう。

冬季限定、などと「限定」ものには心動かされる性分ではある。とはいえ、味噌と胡麻、そりゃ美味かろうが、蕎麦の風味を殺しかねないコンビだ。馴染みの店なら兎も角、一見のお店でこれを食らう必要はなかろう。ここは静観。

もりそば

もりそばアップ
やってきましたもりそば600円。
柔らかそうな食感と、挽きぐるみからくる灰色の麺が特徴。

早速手繰ってみる。

うん、美味い。「素朴な風味の蕎麦粉」と張り紙では表現していたが、まさにその言葉がぴったり。蕎麦がもつ鈍くさい、イケてない風味が前面に出ている。こういう素直な蕎麦、結構好きです。最近、一部の洗練された蕎麦店の味を目指し、でもうまくいかず、中途半端な蕎麦が増えたという印象がある蕎麦の世界。でも、ここの蕎麦は「田舎には田舎の良い点があるでしょうが」と堂々と構えていて、開き直っていて好感。

食べていてざらざらした粉っぽい食感があるのはなぜだろう。そば殻の繊維質だろうか?正体不明。あと、人によってはコシが足りないと思うかもしれない。でもおかでんはこれでも良いと思った。

つゆは特別美味いわけでもないが、欠点が無い「良いつゆ」。結局このお店は取り立てて凄い蕎麦ではないが、平均点以上のものを結果として残しているという良い事例だと思う。

ただ、惜しいのはわさび。せっかくだから本わさび使った方が良いと思うんだがなあ。画竜点睛を欠く、という感じ。ただし、僕はもりそばを食べる際にわさびは使わないので、どうでも良いけど。

奥の席では、なにやら団体がわいわいがやがや食事を始めた。「予約席」なるところに座り、何を始めるのかと思ったら「蕎麦の太さが」だの「練りが」といろいろ細かい。バスをチャーターして訪れているようだし、蕎麦通たちの集いなのかと最初は思ったのだが、話を聞いているとどうも内容が浅い。不思議に思っていたら、しばらくしてようやく分かった。この道の駅は、蕎麦打ち体験道場を併設していて、その道場で打った自分の蕎麦を今まさに食べている、というわけだ。ご苦労様です。きっと、一生の思い出に残る蕎麦になったと思う。で、この団体のうち何名かは、蕎麦打ち道具を買おうかどうしようか悩み始める、というお決まりのパターンだ。数年後に期待したい。