2009年11月12日
【店舗数:248】【そば食:436】
広島県広島市庚午北
ざるそば、じゃこ天、天ぷら盛りあわせ、にしん棒煮、ビール、熱燗
広島に滞在している間、蕎麦店にでも行ってみようと思い立ち、調べてみた。
そうしたら、この「そば吉」というお店を発見した。・・・ああ、そういえばあったなあ、そんなお店。よく、広島の実家に帰省している時はこの近くのディスカウント酒屋でビールをケース買いしていたので、記憶にある。
逆に言うと、それだけ馴染みのある場所のはずなのに、一度も行ってみようと思った事がないお店でもあった。そりゃいかんな、蕎麦屋に貴賤なし。「今まで一度も行こうと思った事がないお店」だからこそ、今回は逆に興味を持った。行ってみよう。幸い、通し営業をやっているお店だったので、早い時間に所用を済ませ、午後からお店へ。
今までこの店を空気のようにスルーしていたのは、おかでんが嗜好する蕎麦店とはジャンルが違うと思っていたからだ。「心が奇麗な人にしか妖精は見えない」「馬鹿には王様の服は見えない」というのと一緒で、このお店の事をおかでんは全く気がついていなかった。
それじゃいかんね、いろいろなお店に行ってみたいね、と思い立ち、手探り状態ながらもこのお店に行ってみることにした。中休み無しだから、昼下がりにお酒飲んじゃえ、という思惑もある。
事前に口コミを調べてみたが、さすが広島の蕎麦店だけあって、東京界隈の蕎麦店評価とベクトルが違う。違いすぎる。「丼ものがいろいろある」とか、「味噌煮込みうどんが美味い」など、蕎麦とおおよそ関係ない話が多い。
広島という場所柄、やはり「蕎麦だけでごちそうさま」というわけにはいかず、かといって蕎麦屋で酒、というのも馴染んでおらず、結局は「そばかうどん+ごはんもの」というのが好まれる。そんなわけで、このお店もそういうメニューが多いようだ。
調べてみると、もともとこの「そば吉」は愛媛県を本拠地にしているチェーン店らしい。知らなかった。香川県のうどん文化が岡山の方にも結構伝播しているが、愛媛県の蕎麦が広島にも上陸か。面白いね。
さすが広島物価、というか蕎麦がお安い。
かけそばが470円、ざるそばは570円。麺の大盛りが50円って、今日日ラーメン店でも大盛りは100円増しくらいするだろうから、随分良心的だ。
もちろん、ざるそばにご飯をつけてセットにする人が多いので、客単価としてはもっと高くなるわけだが。案外、蕎麦店の客単価は、東京よりもむしろ高いかもしれない。
入店すると、センサーが感知して「ぴんぽーん」とチャイムが鳴る。
まるでクリーニング屋みたいだ、と思った。蕎麦店でこういう細工がされているの初めて見た。
客席はお座席無しで、店の真ん中に囲炉裏があり、それを取り囲むカウンター席12席。
囲炉裏端に座り、お品書きを見る。
最初のページがお酒と、酒肴のページ。ちょっと珍しい。それをめくると、写真入りでいろいろな料理が紹介されている。ページ数が多いし、メニューも多いし、ファミレス並だ。何でこんなにページ数が多いの、と思ったら、
「蕎麦のページ」「丼物のページ」「蕎麦と丼、ハーフ&ハーフのページ」「蕎麦+ハーフ丼のページ」「蕎麦フルサイズ+蕎麦フルサイズのページ」などといろいろな組合せがあるからだった。
蕎麦の種類×丼の種類、というだけでも結構な数になるのに、ハーフだのフルだのを組み合わせると、とんでもないメニュー数に化けるのだった。しかも、「麺はきしめんに変更可能」というユーザーフレンドリーっぷりで、お品書きの全貌を把握するのが難しい。よって、このお店に入る前には、自分の腹具合と趣味嗜好を棚卸ししておいて、清らかな心でお品書きを開かないといかんな。優柔不断な人は延々悩み続けることになる。
ふと思った。「天ぷらそばと、天丼という組合せは可能か?」と。天ぷらだらけセット。調べてみたら、本当にできた。何でもありだ。
また、独特なのが「そば弁当」というジャンルがある、ということだ。すわ、お持ち帰りなのか?と思ったらさにあらず。蕎麦に、ご飯またはかやく飯と、小鉢、漬物がつくという組合せだった。これまた、蕎麦の種類だけメニューがある。
肝心の、蕎麦単品が紹介されているページが無い、と思ったら最後のページにあった。お店としてはあまりお勧めしていないのだろうか。でも、酒肴を先頭ページに持ってくるというのも、居酒屋でもあまりない話だよな・・・あれれ。これ、ページが左右逆だ。普通、和食のジャンルである蕎麦は、お品書きは右から左へと読んでいく。小説や漫画と一緒。しかし、このお店のお品書きは、大学ノートやファミレスメニューのように左から右へと読んでいくスタイルなのだった。これは初めてのパターンだ。
まずは麦酒を頼んでみる。
酒肴の種類はあまりないが、数種類あったので、「八幡浜のじゃこ天」を頼んでみた。じゃこ天というところが、いかにも愛媛県っぽい。こういう「地物」の酒肴って、何だかうれしくなる。蕎麦屋の酒肴ってこうあるべき、みたいな堅苦しさなんて、いらない。
ところでこのじゃこ天だが、値段を見てびっくり。200円。ホントですか。普通、蕎麦店で焼き海苔なり蕎麦味噌頼んでも、300円はしますぜ。200円って何。ここは「さくら水産」ですか。
やっすいなあ、と感心していたら、実物が届けられたのだが、じゃこ天3きれ。全く過不足無く、これで問題ない。素敵。
もっと気になる酒肴があった。「天ぷら盛りあわせ350円」だ。何かの間違いではないか、と思った。スーパーのお総菜売り場じゃないんだから、こんな価格はありえんだろ。縦書きで記載されていたため、値段は「三五〇円」と記載されていたのだが、「これはきっと『一二五〇円』に違いない」と思ったくらいだ。ただ、それだとするとちょっと高すぎるのだが。
ものは試し、と頼んでみて、出てきたのがこちら。ありゃ、確かにボリューム感は若干落ちるが、それはこの値段だから当然。むしろ、350円でこれだけのものが出てきた事に驚愕だ。ちゃんとお海老様が一匹ふんぞり返っているし、他にも数品(内容は忘れた。ピーマン、茄子、南瓜、揚げ蕎麦だったかな?)も入っている。これで十分、十二分だ。
もうこのお店、蕎麦屋やらんでいい。酒肴充実させて居酒屋始めちゃえ、と思う。しかし、この酒肴価格は「この後、蕎麦食べてくれることを前提」にして設定されたはずであり、これだけ食べて帰られたら商売あがったりだ。難しい。
天ぷら盛りあわせの中に、揚げ蕎麦が含まれているのはとても良かった。揚げ蕎麦、とってもおいしいんだよな。これだけ単品でレギュラーメニュー化しても良いと思うのだが、なぜ多くのお店ではやらないのだろう?売れ残った蕎麦を使えば良いと思うのだが、絶妙に売れ残っていないのだろうか。
天ぷら頼んじゃったので、ビールだけじゃおいつかなくなったので清酒を頼んでみた。380円とこちらも格安。ただし、お品書きには「熱燗」としか書かれていないので、冷酒は出していないようだ(頼めばやってくれるかもしれないが)。
お酒を注文するが、女性従業員さんが「お酒、ですか・・・」と、若干動揺するのはどうしたものか。先ほど、ビールを注文したときも動揺していた。昼から酒飲んでる!この人!ということなんだと思うが、そんなに露骨に動揺しなくても。何だか極悪非道な事をやっているような気分になり、こっちまで動揺してしまう。
天ぷら頼んだらお酒が足りなくなったので熱燗、熱燗頼んだら天ぷらが無くなったので・・・と変なスパイラルに入り込んでしまい、にしんを注文。値段は忘れた。
わさびとにしんが案外良い組合せで感心。ついつい杯が進み、もう一杯・・・やめとけ。あの店員さんの対応だと、今度お酒頼んだら「不審人物」として通報されるかもしれん。
そろそろお酒は切り上げて、蕎麦を頂くことにする。ざるそばを注文。ざるともりの使い分けはない。
お品がきでは、冷たい蕎麦よりも温かい蕎麦の方が優先順位高で並んでいるのが特徴。さらに、その先頭が肉そばというのが面白い。おや、「田舎そば」というのは温かい蕎麦なんだな。写真を見ると、とろろが載っているようだ。一体どこの「田舎」をイメージしているんだろう。おかでんがイメージする「田舎」とはちと違う。
愛媛の蕎麦店だが、「釜揚げそば」や「割子そば」もお品書きにあった。出雲そば、中四国地方では結構な勢力をもっているのだな。
周囲のお客さんは、多くはカツ丼などのご飯ものと蕎麦をセットで食べていた。
お店で蕎麦すすっているおっちゃんらは、全員スポーツ新聞か、大手紙のスポーツ欄かを読んでいたのがとても印象的なお店だった。禅修行のような蕎麦店で食べるのもキリッと引き締まって好きだが、こういう気軽なお店で食べるのもいいものだ、と思った。
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