2011年06月04日
【店舗数:281】【そば食:482】
群馬県伊勢崎市太田町
大もりそば
世にあまたある蕎麦屋の中から、訪れるお店を選ぶ際の基準はいろいろある。近所だから、とか、ガイド本に載っていたから、とか。そんな中、一ジャンルとして確実に存在しうるのは、「店の外観が気になるから」というのがある。
禅の心に通じるのか、蕎麦屋というのはシンプルな外観であることが多々ある。中には、お店の看板すら地味で、お店の存在をPRする気があるのかどうか心配になるくらいだ。でも、面白いもので、そんなシンプルな中でも色気を放っているお店というのが一定数存在する。
「そんなもの、建築士のデザイン次第じゃないか」と言われそうだ。実際おかでんもそう思う。でも、外観に色気があるお店は蕎麦が美味いことが多い、という法則性にうすうす気がついた。ごちゃごちゃした店よりも、凜とした外観の店の方が美味い傾向があるぞ、と。もちろん思い込みによるところがおおいのは承知の上。でも思い込みだっていいじゃないか。結果的にうそでも本当でも「美味い」と思えれば良いのだから。
そんなわけで、目に留まったのが伊勢崎市にある「楓」というお店だった。外観を見ると、なんだか現代美術館の入口じゃあるまいか、とかちょっと小しゃれた公衆トイレ?という外観。白い暖簾が下がっているところだけで「うちは蕎麦屋だ」ということを宣言している。
伊勢崎駅からそれほど遠くないところにあるお店なのだが、くねくね住宅地と畑の間を抜けていったところに位置するゆえにちょっとナビテクがいる。カーナビが壊れているおかでんカーだと、運転していて心配になってしまった。でも、このあたりには畑があって視界が開けた空間だったのが良かった。
・・・プロパンガス4本?あれは普通の民家じゃないだろ?・・・
お店発見のきっかけは、店舗裏のプロパンガス。民家が使うには量が多すぎるので、怪しいと遠方からでも察知できた。いざ、突撃してみたら、その通り「楓」だった。皆さんもお越しの際はプロパンガスを目印にどうぞ。って、そんな人はいないと思うけど。ああ、ナビが壊れていると本当に不自由するよ。
実はこのお店を訪れる前、もう一軒別のお店を訪問していた。「風の庭」という店だったのだが、地図とGoogleMapを写真撮影したものと比較しながら苦労してお店の近辺まで到着。しかし、お店が全く見つからず、結局捜索を断念したのだった。帰宅後調べてみたら、数年前に廃業していた。わっ、びっくりした。人気店だと聞いていたけど、廃業するってことがあるもんだねえ。
おかでんの場合、蕎麦を食べ歩く際には事前に「食べログ」などは見ないようにしている。先入観にとらわれてしまうからだ。その結果、最新情報も手に入らなくなってしまい、今回のような事態になってしまう。
お店を一軒、発見できなかった直後の訪問なので、今回もお店探しはヒヤヒヤもんだった。しかし見つける事ができてありがとうプロパンガス。
店の建屋自体、それほど大きくはないのだが、その半分くらいは白い玉砂利を敷いたスペースになっていて、実際の客席は狭い。二人がけ2テーブル、4人がけ3テーブル。合計5組しか同時に対応できない。
そういえば、店の玄関に「何かと時間がかかるお店ですのでご容赦ください」という張り紙がしてあった。このお店は、調理はご主人一人、接客は奥さん一人できりもりしている。その体制だとこのキャパシティが限界、ということを想定済で店をこしらえたのだろう。
また、「客席が狭いから」という理由で全席禁煙であり、なおかつ10歳以下の子供の入店はNGだった。確かに、この客席の広さで子供が嬌声を上げたらちょっとうっとおしい。ナイス。
このお店は立地条件が相当悪い。意図的に狙ったものなのか、それとも予算の都合なのかは分からないが、最初は客がやってくるかどうかも不安だっただろう。そんな中で、「禁煙です」「子供は駄目です」というのは相当勇気がいったと思うが、よくやったもんだ。それで、今じゃお客さんがほぼ満席状態ときたもんだ。
もうこうなると、蕎麦屋っていう稼業は立地はどうでもよくって、美味ささえあればどうでもいいのか?美味けりゃ、山ん中でも畑の中でも住宅地の奥深くでも良いのか?訳がわからん。
おかでんの場合、ガイド本やネット口コミなどを参考にして蕎麦屋を訪れる「後追い」なので、どんなに辺鄙なところにお店があっても、訪れることはできる。先達の人達が地図や営業時間を残してくれているからだ。でも、最初に自力でお店を発見した人はホント偉いと思う。
店内は靴を脱いで上がる。板張りの床、壁など全部木材を使っていて、もちろん机も木だ。四方八方を木目調に囲まれる。壁や床はダークな色をしていて、シックとも言えるが、気分が沈んでいる時はますます落ち込むかもしれない。「蕎麦食べるよ!」という気分が晴れやかな時にこのお店を訪問しましょう。
お品書きはシンプル。そりゃそうだ、調理はご主人一人なのだから、ここで酒肴が充実しています、とか蕎麦も温冷あわせて10種類以上・・・なんてわけがない。
蕎麦はもりそば600円とかけそば600円。これにもりそばの場合汁無し(おかわりのこと)と大盛りがある。
そばのグラム数が明記されているのは非常に親切。それによると、ノーマルもりそばは130グラム、大盛りだと190グラムだそうだ。こうやって並記されると、なんだか130グラムが非常に少なく感じる。普段食べている蕎麦のグラム数なんて知らないので、130グラムが少ないとする根拠などはどこにもないのだけど。ええと、大盛りそばください。190グラム。
なお、周囲のお客さんはほとんど「もりそば(600円)」と「綿実油で揚げる野菜天ぷら(700円)」を頼んでいた。おかげで客席内は油の臭いが芳香剤となっていた。最初、厨房の換気扇が弱くて、厨房の臭いが客席まで流れ込んでいるのかと思ったが、周囲を見ると何のことはない、みんな天ぷら食べてやんの。
おかでんは頼まないのかい貧乏人?となるが、この後もお店を巡る予定があるので、あれこれ頼んでいられんのですよ。何かピカッと光る一品があれば頼むけど。というわけで天ぷらはパス。
ちなみにこのお店、酒肴になるのはこの天ぷらとあとは玉子焼きだけ。玉子焼きは1,000円もする。原価を考えたらえらく値付けが高いが、これは「手間がかかって面倒だからあんまり頼んで欲しくない」という店側の無言のプレッシャーなのかな?
のんびりと待っていたら、頼んでいた蕎麦がやってきた。大盛りそば190g(800円)。
それなりに待ったが、自分の席からすべてのお客さんが見渡せるので、「あ、今あそこのテーブルのお客さんに料理が出たな。じゃあ次はあっちで・・・その次こっちだ」と分かるので、全くイライラさせられない。狭い客席ってこういうときいいな。
麺は細めで堅い。ずずずぅと手繰ると蕎麦の香りはやや薄い。でも、甘みが結構出てくるので結果オーライ。よく噛みしめたい蕎麦だ。とはいえ、この堅さは結構癖がある。何に似てるのかな・・・と思いを馳せていたら、「いったんゆでたスパゲティに油を塗ってしばらく放置していたら、ちょっと堅くなっちゃった」というものだった。お店の人、すんません。たとえがすごく失礼ッス。では、この麺を噛んだらぱつんと歯切れよいのかというとそうではない。ぐいぐいと弾力がある。細いくせに中身みっちり、といった感じ。
そのせいもあってか、190グラム食べたら相当おなかいっぱいになった。みっちり麺のせいだと思う。130グラムで普通の人は十分だと思う。
・・・あれれ?グラム数は明示されているんだよな。もし「麺にみっちり中身が詰まっている」のが真実なら、その分重たくなっているはずだよな。「ふわふわ麺」の130グラムと「みっちり麺」の130グラムって、結果的に満腹感は一緒じゃないか?
んー、それは次回までの課題にさせてくれ。わからん。
つゆはやや醤油が立った味。蕎麦が予想以上につゆとよく絡むため、あっという間につゆが減ってくる。つゆの使い方は気をつけないといけない。ザブンと麺をつゆにつける食べ方をやっていると、ノーマル盛りのそばでもつゆが足りなくなるかもしれない。
さて、この蕎麦にはご丁寧にも小鉢が一品ついている親切設計。もりそばなんで600円と非常に廉価なんだから、わざわざサービスしなくてもいいのに、とお店の懐事情を心配してしまうくらいだ。
その小鉢は、今日はキャベツと人参を蒸し焼きにしたものに塩胡椒を振りかけたもの。シンプルだけど箸休めとしておいしい。ありがたい配慮だ。でも、「日高屋の『野菜たっぷりタンメン』に塩胡椒をかけた味」を思わず連想してしまったおかでんは恩知らずだと思う。
通ぶった雰囲気さえ漂うお店だけど、600円で蕎麦を出したりしている、廉価で居心地の良いお店。伊勢崎市に訪れた際にはお勧めしたいお店。
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