2015年01月27日
【店舗数:381】【そば食:636】
群馬県吾妻郡中之条町
舞茸天丼と豚汁せいろ
群馬県吾妻郡にある四万温泉は、山奥であるにもかかわらず都心から交通の便が良いところだ。東京駅八重洲口から直行バスが出ているし、中之条までJRの特急列車で行って、そこからバスに乗ってもいい。もちろん、車で訪れるのも、適度なドライブ気分が味わえて手頃な距離感だ。
しかし、するするするっと四万温泉まで到着しちゃって、はたと気がつく。「あっ、お昼ご飯食べてないじゃん」。
温泉地といっても日本には大小様々なところがあり、温泉街が形成されていて飲食店に不自由しないところ、宿は多くても温泉街が形成されていないところ、一軒宿のところ。いや、「飲食店に不自由しない温泉街」がある温泉地なんて、日本では実はそんなにない。夜だけ、スナックやラーメン屋などの営業があっても、昼間は閑散としている温泉街は案外多い。
四万温泉の場合は、幸い温泉街が結構な距離で伸びているし、飲食店も選択の余地があるくらいは存在している。さほど多くはないけど。なので、お昼ご飯は四万温泉で食べることにした。
四万グランドホテルの裏手には細い道があり、そこが少し風情のある温泉街となっている。スマートボール屋などが今でも現役で存在している。今となっては四万温泉の裏道的な場所だが、昔はこちらが街道として機能していたという。そんな通りの中に、蕎麦屋が二軒仲良く並んでいる。
片方が定休日だったので、必然的にもう片方の蕎麦屋に入ることにした。店名を「小松屋」という。
それにしてもなんで、よりによって同業者が横並びになっているのだろう。「そっちが蕎麦ならこっちはうどん」とか棲み分けしなかったのには何か理由があるのかもしれない。「お互いつぶし合いをやって、どっちかが廃業するまでガチで勝負しようぜ」みたいな意地の張り合いがあったりして。
店内は昔ながらの蕎麦屋といった感じ。たたきの席と、小上がりの席。店内は、どっかの団体旅行とおぼしきご年配の方々が大爆笑しながらビールを飲んでいた。うん、温泉地って感じがしていいね。
そんな温泉地なので、もちろん食事の味なんて期待しちゃいけない。ましてや、素材も技術も大事な蕎麦なんて旨いのが食べられるわけが・・・と思ってしまう。しかし、最近は蕎麦業界もすごいね、このお店なんて、地元中之条産の蕎麦粉を使って、自家製粉の手打ちだもの。
「どうせ一見の観光客なんだから」という投げやり感が全然ない。
今や、観光客は事前に食べログなどで情報収集する時代。観光地だから、といって妥協は許されなくなってきている。へたな料理を出していたら、すぐにお客さんは来なくなってしまう。
いい温泉に浸かって、うまい蕎麦を食べる。そんなことが労せず楽しめるって、最高な時代になったものだな。
料理が出来るまでの間、何気なく卓上を眺めていたら「おや?」と気がついた。このお店、七味唐辛子を置いていなかったからだ。温かい蕎麦を食べるなら、定番中の定番である七味。これは誰も疑念を差し挟まない鉄板なんだが、このお店にはない。そのかわりに、一味、柚子、胡麻がそれぞれ用意されているのだった。自分のお好みにあわせて、「三味」を作ってね、というわけだ。面白いなあ。
辛味を強調したい人、香りを強調したい人。お好みで調整ができる。
この日宿泊する「積善館 本館」は、食事のボリュームが少ないという前評判があった。宿の予約サイトでも、「ボリュームが欲しい人は・・・」と、料理のランクアップや追加料理をおすすめしている。夜、ひもじい思いをしたらどうしよう?と今から心配だ。
というわけで、昼はちょっと多めに食べることにした。頼んだのは、「舞茸天丼と豚汁せいろ」。
鴨汁せいろにしなかったのは、ぜいたくにたいする戒め。豚汁の方が安い。そして、舞茸天丼は、群馬名産の舞茸に経緯を表して。
蕎麦だが、なるほどこれはなかなか良い。自家製粉などとこだわっているだけある。あらためて、観光地でこういうのが気軽に食べられるようになったことを喜んだ。喜んだついでに危なく豚汁を飲み干してしまいそうになった。
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