自作手打ち蕎麦(21)

2017年12月31日
【店舗数:—】【そば食:691】
岡山県某所

鴨南蛮

だしをとる

2017年の年越し蕎麦。

11月下旬の時点で母親から「鴨南蛮がいいナ」とリクエストされていたので、作る料理について悩むことはなかった。

僕としては、けんちん蕎麦がいいと思っていた。つゆや蕎麦の出来の悪さを、野菜と鶏肉から出るうまみで誤魔化しちゃえ!という発想だ。しかし、「鴨南蛮」という具体的なリクエストがあった以上、今年は鴨南蛮で決定だ。そもそも、我が家の丼だと、具だくさんのけんちん蕎麦を盛り付けるには底が浅い。

12月の1カ月間で3回も蕎麦店で鴨南蛮を食べ、年越し蕎麦に向け予習をしてきた。家で、つゆの自作もした。

蕎麦打ちそのものについては、もうこれ以上のスキルアップはないと思っている。というのも、二人の姪が「粘土遊び」っぽい蕎麦打ちに興味津々だからだ。姪たちに蕎麦打ちを手伝ってもらうとなると、「美しい蕎麦」を作るのは無理だ。

ならば、姪の手が及ばないダシ作りだけでもちゃんとしたものを、と今年は思っている。

とはいえ、化学調味料やらダシの素に慣れすぎ、自炊するにしても「いい塩梅」というのがよくわからなくなっている馬鹿舌の自分にとって、ダシをひくのはむつかしい。今回も、大いに悩んだ。

そもそも、だしのレシピを見ると、書いてあることが結構バラバラなので困惑する。「かつお節は長時間茹でるとえぐみが出るからさっと引き上げろ」という説、「いや、むしろ30分くらい弱火で煮ろ」という説など様々だ。

どうやら、蕎麦つゆにおいては、むしろ長時間かつお節を煮た方が良いらしいので、30分煮ることにする。その前に、昆布を投入。昆布は、煮立たせるとネバネバしてくるので早く引き上げるのはどのレシピでも全会一致だった。

本当は昆布は使わないか、極力少なくして、かつお節中心のだしにしたかった。しかし「うまくだしがとれなかったら、やばい」と日和ってしまい、昆布も投入。

かつお節

かつお節を投入。

完全に目分量。

そもそも、だしをどれくらい作れば良いのかがイメージできていない。ええと、大人5人に子供2人、か。子供は毎年成長していき、食べる量が変わる。普段その成長や食い意地を見ていないので、適切な量がさっぱりわからない。

水の量でさえよくわからないので、ましてやかつお節の量なんて。

様子を見に来た母親が

「えっ、そんなに使うの?」

とかつお節の投入量を見て言う。

「まあ、まだあともう一袋あるから大丈夫だけど・・・」

とはいえ、その一言でかつお節を入れるのがためらわれてしまい、想定していた量の半分くらいしか入れられなかった。ただし、この「想定していた量」というのが妥当なのかどうかは、さっぱりわからないのだけど。

30分煮出す

30分後、だしがとれた。台所はおせちの準備でゴタゴタしているので、鍋のやり場に困る。ひとまずこんな大きな鍋が台所にあるのは邪魔なので、ちょっと離れたところに疎開してもらう。

食材

大晦日の午前中に、スーパーで買ってきた鴨肉。

年越し蕎麦で鴨南蛮を作る際は、毎回売り場の前で立ち尽くすことになる。肉の値段が高いだけでなく、いろいろな種類があるからだ。

昔は「国産」と「タイ産」が置かれていたけど、今年はどうやら全部国産だった。しかし、鴨肉だけでかなりの種類があり、どうしたものか悩む。

鴨ロース、鴨もも肉、鴨つくね。

基本はこの3種だ。しかし、「ロースとつくねのセット」「もも肉とロースのセット」「全部入りセット」「単品」など組み合わせがやたらと多い。

「えーと、7人いるから、一人につくね2個と肉切れ3きれ以上を割り当てるとすると・・・」

なんて計算をし始めると、どれを買うのがいいのかがわからなくなってくる。

結局、計算を諦め、「ロース」「もも」「つくね」の単品パックをそれぞれ1つずつ買った。あと、葱も1本。鴨といえば葱だ。

鴨を炒める

あらかじめ鴨をソテーしておく。火を通すとかなり縮むので困る。

鴨南蛮の具

鴨肉と葱に火が通った。

つくねは、生のままでつゆにいれ、鴨肉のうまみをつゆに移そうと思う。

今年の蕎麦粉

蕎麦粉。今年も千葉の古川製粉で調達。

1年ぶりに蕎麦道具を出してみたら、こね鉢の塗りが一部、はげていた。もう15年以上使っているものなので、そろそろ傷んできたか・・・こいつとは長い付き合いだぜ。(1年に1回だけだけど)

そばをこねる

中途半端にチビどもに蕎麦打ちを手伝ってもらうのはむしろ手間が増える。なので、僕としては姪二人に蕎麦打ちを完全伝授し、あとは彼女たちに年越し蕎麦を任せてしまおうと考えている。その暁には僕は年越し蕎麦打ちからは引退だ。数年がかりのスパンを要する野望だけど。

でも、今でこそ「やりたいやりたい!」とピョンピョン跳びはねながら蕎麦打ちをせがむ姪だけど、あと数年してJCにでもなりゃ、「えー、面倒。おじさんやっといて」って言ってそうだ。頼むからこのまま素直に育っていって欲しい。

そんなわけで、「ちょっと触らせる」程度ではなく、かなりしっかりと触らせた。「蕎麦打ち教室」レベルで。蕎麦打ちの楽しさを今のうちから教え込むために。

ただし、「ありゃ!?」と思ったのが、捏ねの段階だった。やたらと生地が暖かい。というのも、子供の手のひらというのは湯気が立つんじゃないか、というくらい体温が高いからだ。捏ねれば捏ねるほど、生地に熱が加わっていく。

これでは蕎麦の風味が飛んでしまいそうだ。

さすがに心配になって、適当なところで僕が捏ね工程は引き取った。

姪にやらせる

姪たちがもっともウッキウキだったのが、伸ばしの工程だった。

水回しは手がベタベタになって気持ち悪いやら、蕎麦打ち独特の作法があって面倒くさい。捏ねるのは重たくて硬い。その点、生地をのばしていくのは少し自由度がある。達成感もある。

まだ4歳の下の姪は、手が届かないので「ちょっと触る程度」で満足させ、あとは上の姪に頑張ってもらった。

身長がない上に力もないので、なかなか生地が広がっていかない。なので、結局僕が面倒を見ることになるのだけど、人の蕎麦打ちを傍らから見ていると、勉強になるものだ。

「もっとこっちに力を入れて」
「向きはこう」

などと指示をしていくが、このときばかりは騒がしい姪は神妙な顔だ。

姪が切る

上の姪に生地を折りたたんでもらい、切りの工程に入る。

テンポ良く切るように指示する。

蕎麦は太さがまちまち

2回にわけて蕎麦打ちを行い、合計1.5キロの蕎麦ができあがった。さすがに麺の幅も太さもまちまち。

左端に、麺の切れ端がある。上の姪は「おじさん、これ私が食べる!」と目をキラキラさせている。すると、姉に対抗意欲満々の下の姪も「わたしも!」と叫ぶ。

あんまり美味しくはない場所だけど、それを喜んで選ぶとはさすが子供。でも僕が子供だったら、やっぱり同じことを要求するだろう。

だしをかえしとあわせる

食事時間が近づいてきたので、だしとかえしをあわせる。

かえしは、前日のうちに作ってある。醤油と、砂糖と、みりん。これも、どれくらいの分量が妥当なのかがよくわからず困惑した。

「いい加減なかえし」と「いい加減なだし」をあわせていく。

例年、麺の湯切りがあまく、想定しているよりもつゆが薄く感じられる。「つゆ単体で飲んだら、『あー、辛いな』と思えるくらいのつゆの濃さ」を目指した。

でもこれも、どれくらいが妥当なのか、できあがってみないとわからない。いい加減だ。

鴨南蛮

いい加減といえば、蕎麦の茹で方も昔と比べてずいぶんと雑になった。

昔は、神妙な顔をして「蕎麦はゆでたてが一番だから」と言い、一人前ずつ丁寧に茹でていた。しかし今じゃ、3人前くらいを一気に茹でている。そうでもしないと、食卓でご歓談中の家族たちが、「蕎麦待ち」でそわそわしてくるからだ。品質よりもスピードを重視だ。

しかし、そのスピード重視がよくなかった。さすがに3人前もの生麺を鍋のお湯に投入すると、一気に湯温が下がってしまう。再沸騰するまで時間がかかってしまうため、そのせいで麺が伸びてしまった。ああ、やっぱり。

しかも、麺の幅も太さもまちまちで、茹で加減がバラバラ。今日は「麺」としてではなく、「蕎麦すいとん」として食べてもらうしかなかった。年越し蕎麦は縁起物なのに、これでいいのか?という気はするけど。

とはいえ、チビたちが打った蕎麦だ。出来はともかく、悪く言う人など誰もいない。こうしておかでん家の2017年は暮れていった。

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